土佐日記『帰京』品詞分解/現代語訳/解説④
目次
はじめに
こんにちは!こくご部です。
定期テスト対策から大学受験の過去問解説まで、「知りたい」に応えるコンテンツを発信します。
今回は土佐日記『帰京』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。
必要に応じて解説も記しておきます。
古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥
それでは行ってみましょう!
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おほかたの、みな荒れにたれば、
| おほかた | 名詞 | だいたい。 今回は名詞として用いられているが、特に注意すべきなのは副詞として用いられている場合である。 見分けるポイントは下に打消を伴うかどうか。 伴わない場合は「だいたい」として解釈し、伴わない場合は全否定となり、「全く~ない」となる。特に後者は記述問題に頻出である。 同じ用法をもつ「さらに」「ゆめゆめ」などの呼応の副詞はまとめて記憶しておきたい。 |
| の | 格助詞 | 主格用法 |
| みな | 副詞 | |
| 荒れ | 動詞 | ラ行下二段活用動詞「荒る」の連用形 |
| に | 助動詞 | 完了の助動詞「ぬ」の連用形。 同じ完了の意味で同じ連用形接続の「つ」との違いが聞かれることもあるのでまとめておく。 「ぬ」:自然的な作用を示す場合に用いられる ⇒ ex.「風立ちぬ」 「つ」:人為的、意図的な作用を示す場合に用いられる ⇒ex.「石炭をばはや積み果てつ」 【余談】 先の用例で紹介した「石炭をばはや積み果てつ」は森鴎外『舞姫』からの引用。高校の授業で『舞姫』を扱う学校は多いが、こだわりのある先生であればこの一文字で1時間の授業ができるほどの名文と言える。興味のある人は『舞姫』の中で「つ」と「ぬ」がどのように使い分けられているかチェックしてみてほしい。 |
| たれ | 助動詞 | 存続の助動詞「たり」の已然形。 助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。 意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。) |
| ば | 接続助詞 | ★重要文法 接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。 ①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない) ⇒仮定(もし~ならば) ②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている) ⇒ (ⅰ)原因・理由(~なので) (ⅱ)偶然(~したところ) (ⅲ)必然(~するといつも) ここでは原因・理由で取ると自然か。 |
だいたいが、みんな荒れてしまっているので、
「あはれ。」とぞ人々言ふ。
| あはれ | 感動詞 | 感動詞の「あはれ」は「ああ。」「なんとまあ。」と訳すと及第点であるが、ここでは直前の「みな荒れにたれば」を受けている場面である。 よって、マイナスのニュアンスが込められていることに注意。 |
| と | 格助詞 | |
| ぞ | 係助詞 | 強意の係助詞 |
| 人々 | 名詞 | |
| 言ふ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「言ふ」の連体形。 係助詞「ぞ」を受けて係り結びが成立している。 |
「ああ(ひどい)。」と人々は言う。
思ひ出でぬことなく、思ひ恋しきがうちに、
| 思ひ出で | 動詞 | ダ行下二段活用動詞「思ひ出づ」の未然形 |
| ぬ | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の連体形 |
| こと | 名詞 | |
| なく | 形容詞 | ク活用の形容詞「なし」の連用形 |
| 思ひ恋しき | 形容詞 | シク活用の形容詞「思ひ恋し」の連体形 |
| が | 格助詞 | 連体修飾格用法 |
| うち | 名詞 | |
| に | 格助詞 |
思い出さないことなく、恋しく思うことの中でも、
この家にて生まれし女子の、もろともに帰らねば、
| こ | 代名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 家 | 名詞 | |
| にて | 格助詞 | |
| 生まれ | 動詞 | ラ行下二段活用動詞「生まる」の連用形 |
| し | 助動詞 | 過去の助動詞「き」の連体形。 同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。 |
| 女子 | 名詞 | 『土佐日記』の別の章段中に見える、「国にてにはかに失せ」た子。子を失った親の悲しみが垣間見える。 |
| の | 格助詞 | 主格用法 |
| もろともに | 副詞 | 一緒に。 |
| 帰ら | 動詞 | ラ行四段活用動詞「帰る」の未然形。 土佐からもあの世からも帰って来ないのである。 |
| ね | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の已然形 |
| ば | 接続助詞 | 順接の確定条件。 ここでは原因・理由で取ると自然か。 |
この家で生まれた女の子が一緒に帰らないので、
いかがは悲しき。
| いかが | 副詞 | よく英語の「how」に例えられ、文脈に応じて疑問または反語の訳を当てる。ここでは疑問が強調され、詠嘆的な用法と言える。 |
| は | 係助詞 | 強意の係助詞 |
| 悲しき | 形容詞 | シク活用の形容詞「悲し」の連体形 |
どれほど悲しいことか。
船人もみな、子たかりてののしる。
| 船人 | 名詞 | 読みは「ふなびと」。 ここでは同じ船に乗って共に帰京した人々のことを指す。 |
| も | 係助詞 | 添加の係助詞 |
| みな | 副詞 | |
| 子 | 名詞 | この「子」は、同じ船に乗っていた子だけではなく、都を離れていた親を都で待っていた「子」も含まれるだろう。 前述の「この家にて生まれし女子」との対比が痛々しい。 |
| たかり | 動詞 | ラ行四段活用動詞「たかる」の連用形。 「群がり集まる」の意。現代語でも「蠅がたかる」などとして残っている。蛇足ではあるが、漢字で書くと「集る」となる。 |
| て | 接続助詞 | |
| ののしる | 動詞 | ラ行四段活用動詞「ののしる」の終止形。 「ののしる」の基本の意味は「大きな声を出して騒ぐ」であり、そこから派生して「評判になる、うわさになる」の意味ができた。現代語の「罵倒する」というような悪い意味合いはないため、注意が必要。 |
船に乗っている人もみんな、子どもが群がり集まって大きな声で騒ぐ。
今回はここまで🐸
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