土佐日記『帰京』品詞分解/現代語訳/解説③

土佐日記『帰京』品詞分解/現代語訳/解説③

はじめに

こんにちは!こくご部です。

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今回は土佐日記『帰京』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説も記しておきます。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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さて、池めいてくぼまり、水つける所あり。

さて      接続詞                  
池めい動詞カ行四段活用動詞「池めく」の連用形のイ音便。
「めく」は接尾語であり、名詞・形容詞・形容動詞の語幹について、「~らしくなる、~のように見える」という意味となる語。
接続助詞
くぼまり       動詞       ラ行四段活用動詞「くぼまる」の連用形
名詞
つけ動詞カ行四段活用動詞「つく」の已然形。
助動詞存続の助動詞「り」の連体形。
接続を覚えるための語呂合わせは「サ未四已(さみしい)りっちゃん」派か「サ未四已りかちゃん」派かで分かれる。
教室に「り」で始まる子がいるとその日はイジられる可能性が高い。
名詞
あり動詞ラ行変格動詞「あり」の終止形。
ラ変動詞は「あり」「をり」「はべり」「いまそが(か)り/いますが(か)り」を押さえておこう。
さて、池のように見え、くぼんで、水がたまっているところがある。

ほとりに松もありき。

ほとり    名詞    まわり。周囲。                               
格助詞
名詞
係助詞添加の係助詞
あり動詞ラ行変格活用動詞「あり」の連用形
助動詞過去の助動詞「き」の終止形。
同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。

(その)まわりに松もあった。

五年六年のうちに、千年や過ぎにけむ、

五年六年  名詞     読み方は「いつとせむとせ」。
格助詞
うち    名詞
に  格助詞
千年名詞読み方は「ちとせ」。
松は約千年の命を持つという考え方から来ている、皮肉の効いた洒脱な表現である。
係助詞疑問の係助詞
過ぎ動詞ガ行上二段活用動詞「過ぐ」の連用形
助動詞完了の助動詞「ぬ」の連用形。
同じ完了の意味で同じ連用形接続の「つ」との違いが聞かれることもあるのでまとめておく。
「ぬ」:自然的な作用を示す場合に用いられる
⇒ ex.「風立ちぬ」
「つ」:人為的、意図的な作用を示す場合に用いられる
⇒ex.「石炭をばはや積み果てつ」

【余談】
先の用例で紹介した「石炭をばはや積み果てつ」は森鴎外『舞姫』からの引用。高校の授業で『舞姫』を扱う学校は多いが、こだわりのある先生であればこの一文字で1時間の授業ができるほどの名文と言える。興味のある人は『舞姫』の中で「つ」と「ぬ」がどのように使い分けられているかチェックしてみてほしい。
けむ助動詞過去推量の助動詞「けむ」の連体形。
係助詞「や」を受けて係り結びが成立している。
(自分が留守にしていた)五年六年の間に、千年が過ぎてしまったのだろうか、

かたへはなくなりにけり。

かたへ     名詞     半分。ここでは「一部分」の意味で解釈すると自然か。
係助詞区別の係助詞
なくなり動詞ラ行四段活用動詞「なくなる」の連用形
助動詞完了の助動詞「ぬ」の連用形。
「に」は下記の八つのパターンがあるため、判別できるようになっておきたい。
①格助詞「に」 ⇒体言+「に」
②格助詞「に」 ⇒連体形+(体言)+「に」
         連体形と「に」の間に体言(「とき」「ところ」)を補うことができる
③接続助詞「に」⇒連体形+「に」
④断定の助動詞「なり」の連用形 ⇒連体形または体言+「に」
 「に」の下に「あり」「さぶらふ」「はべり」などがつくことが多い。
⑤完了の助動詞「ぬ」の連用形 ⇒連用形+「に」
⑥ナリ活用の形容動詞の連用形活用語尾 
⑦ナ行変格活用動詞の連用形活用語尾
⑧副詞の一部

この場合は、「なくなり」が連用形であるため、⑤と判断する。
けり助動詞詠嘆の助動詞「けり」の終止形
(松の)一部分はなくなってしまったのだなぁ。

今生ひたるぞ混じれる。

今     名詞                            
生ひ動詞ハ行上二段活用動詞「生ふ」の連用形
たる助動詞完了の助動詞「たり」の連体形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。
意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)
係助詞強意の係助詞
混じれ動詞ラ行四段活用動詞「混じる」の已然形
助動詞存続の助動詞「り」の連体形。「ている」と訳せる場合は「存続」で解釈するのが基本。
係助詞「ぞ」を受けて係り結びが成立している。
新しく生えているのが混じっている。

今回はここまで🐸

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