土佐日記『帰京』品詞分解/現代語訳/解説⑥

土佐日記『帰京』品詞分解/現代語訳/解説⑥

はじめに

こんにちは!こくご部です。

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今回は土佐日記『帰京』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説も記しておきます。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

前回の記事はこちらから⇓


見し人の松の千年に見ましかば遠く悲しき別れせましや

見     動詞    マ行上一段活用動詞「見る」の連用形                 
助動詞過去の助動詞「き」の連体形
名詞ここでの「見し人」は、京で生まれた女児のことを指す。
格助詞主格用法
名詞
格助詞比喩用法。和歌中の格助詞「の」は比喩用法の可能性を考慮して読むべし。
千年名詞「ちとせ」と読む。
格助詞
動詞マ行上一段活用動詞「見る」の未然形
ましか助動詞反実仮想の助動詞「まし」の未然形。
反実仮想は漢字の通り、事実に反することを仮定して、それをもとにした想像を述べるものである。
反実仮想の表現は、「未然形+ば・・・まし」「せば・・・まし」「ましかば・・・まし」「ませば・・・まし」の形があるため覚えておくとよい。

ここでは、松のように千年も人の寿命があれば、と言っているが、そのようなことは事実ではありえないのである。
接続助詞順接の仮定条件
遠く形容詞ク活用の形容詞「遠し」の連用形。
この「遠い」には、「遠い土佐の地で」という意味にも、「時間的距離の遠い=永遠の」という意味にも解釈することができる。
悲しき形容詞シク活用の形容詞「悲し」の連体形
別れ名詞
動詞サ行変格活用動詞「す」の未然形
まし助動詞反実仮想の助動詞「まし」の終止形
係助詞反語の係助詞

亡くなった子が、松のように千年も寿命があったならば、遠いあの地(土佐の国)で悲しい別れをしただろうか、いや、しなかっただろうに。


忘れがたく、くちをしきこと多かれど、

忘れがたく      形容詞 ク活用の形容詞「忘れがたし」の連用形                               
くちをしき形容詞シク活用の形容詞「くちをし」の連体形。
心残りだ。残念だ。という意味の重要語。
こと名詞
多かれ     形容詞        ク活用の形容詞「多し」の已然形
接続助詞逆接の確定条件。
已然形に接続する。
忘れがたく、残念なことが多いが、

え尽くさず。

え     副詞    ★重要文法 後ろに「打消」を伴って「不可能」の意味を表す。
このようにセットで用いる副詞を「呼応(陳述)の副詞」と呼ぶ。
尽くさ動詞サ行四段活用動詞「尽くす」の未然形
助動詞打消の助動詞「ず」の終止形

書きつくすことができない。

とまれかうまれ、とく破りてむ。

とまれかうまれ  副詞    何はともあれ。とにかく。もとの形は「ともあれかくもあれ」。
とく形容詞ク活用の形容詞「とし」の連用形。
漢字をあてると「疾し」であるとおり、「早く、速やかに」の意。
破り    動詞ラ行四段活用動詞「破る」の連用形。読みは「やる」。
助動詞強意の助動詞「つ」の未然形。
★重要文法
直後に「推量」や「推定」の助動詞がある場合、基本的に「完了」ではなく「強意」の意味で訳出を行う。
助動詞意志の助動詞「む」の終止形。
助動詞「む」は多くの意味をもつが、以下のように判別の手掛かりになる「ルール」があるので整理しておきたい。
※必ず文脈判断を踏まえること。この「ルール」は「この意味になることが多い」程度の認識でいること。

【原則】
助動詞「む」が文末にある場合
・主語が一人称⇒意志
・主語が二人称⇒適当/当然/命令
・主語が三人称⇒推量

助動詞「む」が文中に連体形で出てきた場合
・「む(連体形)」+「は」、「に」、「には」、体言⇒仮定
・「む(連体)」+体言⇒婉曲
※婉曲は助動詞「む」を訳出しなくても文意が通じる場合。
なにはともあれ、早く(この日記を)破ってしまおう。

今回はここまで🐸

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