源氏物語『桐壺 光源氏の誕生』品詞分解/現代語訳/解説⑥

源氏物語『桐壺 光源氏の誕生』品詞分解/現代語訳/解説⑥

はじめに

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今回は前回の続きで、源氏物語の『桐壺 光源氏の誕生』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

⇓前回の記事はこちら⇓

前回の記事:源氏物語『桐壺 光源氏の誕生』品詞分解/現代語訳/解説⑤

必要に応じて解説なども記しています。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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ある時には大殿籠もり過ぐして、やがてさぶらはせたまひなど、

ある                       連体詞                 
名詞
格助詞
係助詞
大殿籠もり過ぐし動詞サ行四段活用動詞「大殿籠もり過ぐす」の連用形。
「大殿籠もる」は「寝」の尊敬語で、 「大殿籠もり過ぐす」は「寝過ぐす」の尊敬語。
接続助詞
やがて副詞★重要単語
時間の経過を伴ってもある状態が続いていく様子を表し、「そのまま」「すぐに」などの訳が当てられるが、現代語訳問題以外ではどちらの訳語をあてても文意が通ることが多いため、「そのまますぐに」という形で覚えておきたい。
さぶらは動詞ハ行四段活用動詞「さぶらふ」の未然形。
「仕ふ」の謙譲語。
主人の側に臣下・家来が「さぶらふ」場合、「お仕え申し上げる」という意味になる。
この場合は帝に対して作者が敬意を表している。
助動詞使役の助動詞「す」の連用形
たまひ動詞ハ行四段活用動詞「給ふ」の連用形。
「給ふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。
など副助詞

ある時には、(ともに)寝過ごしなさって、そのまま側でお仕えさせなさるなど、

あながちに御前去らずもてなさせたまひしほどに、

あながちに     形容動詞     ナリ活用の形容動詞「あながちなり」の連用形。
「強ちなり」と漢字をあてる。「強制」「強引」などの熟語を作ることができるように、無理やりであるさまを示す。
なお、この場合のように連用形で「むやみに」という副詞的な用法もある。
御前名詞   貴人の目の前や貴人そのものを示す。
去ら動詞ラ行四段活用動詞「去る」の未然形
助動詞打消の助動詞「ず」の終止形
もてなさ動詞サ行四段活用動詞「もてなす」の未然形。
「振る舞う」「人を取り扱う・歓待する」などの意味がある。名詞にすると「もてなし」となるが、現代で主に使われているのは後者の意味。
助動詞尊敬の助動詞「す」の連用形。
「せ給ふ」で二重尊敬となり、地の文の場合は最高敬語として注意が必要。
二重尊敬は大臣以上の高位の者に対して使われるため、主語が省略されている場合でも判別に役立つ。
たまひ動詞ハ行四段活用動詞「給ふ」の連用形。
「給ふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。
助動詞過去の助動詞「き」の連体形
ほど名詞★重要単語
時間、距離、空間、物体など様々な事物の程度を示す。
この場合は直前に過去の助動詞があることから、「間」や「~のうち」などの時間に関係した訳をあてる。
格助詞
むやみにご自身の前を去らないようにお取扱いになっていらっしゃったうちに、

おのづから軽き方にも見えしを、この御子生まれたまひて後は、 いと心ことに思ほしおきてたれば、

おのづから        副詞      自然に。偶然に。
軽き形容詞ク活用の形容詞「軽し」の連体形
名詞
格助詞
係助詞ハ行四段活用動詞「給ふ」の連用形
見え動詞ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」の連用形
助動詞過去の助動詞「き」の連体形
接続助詞
代名詞
格助詞
御子名詞
生まれ動詞ラ行下二段活用「生まる」連用形
たまひ動詞ハ行四段活用動詞「給ふ」の連用形。
「給ふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。
接続助詞
名詞
係助詞
いと副詞「たいそう」、「非常に」という訳を当て、程度が甚だしいことを示す。「めっちゃ」と脳内変換してもOK。
心ことに形容動詞ナリ活用の形容動詞「心ことなり」の連用形。
「格別だ」「並々でない」などの訳をあてる。
思ほしおきて動詞タ行下二段活用動詞「思ほしおきつ」の連用形
「思ひ掟つ」の尊敬語で「心にお決めになる」「(心に決めて)~のように扱いなさる」などの訳を当てる。

たれ助動詞完了の助動詞「たり」の已然形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)
また、完了・存続の「たり」については前の動詞が「動作」であれば「完了」、「状態」であれば「存続」となることが多いので合わせて覚えておきたい。
接続助詞★重要文法
接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。
①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない)
⇒仮定(もし~ならば)
②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている)

(ⅰ)原因・理由(~なので)
(ⅱ)偶然(~したところ)
(ⅲ)必然(~するといつも)
自然と軽い身分の者のように見えたが、この皇子がお生まれになった後は、(帝は桐壺更衣を)たいそう格別にお思い定めになったので

坊にも、ようせずは、この御子の居たまふべきなめり」と、一の皇子の女御は思し疑へり。

坊       名詞     「東宮(皇太子に関する役所のこと)」の略や「東宮(皇太子)そのもの」を意味する。
格助詞
係助詞
ようせずは連語連語。「悪くすると」「ひょっとすると」などの意を持つ。

ク活用の形容詞「よし」の連用形のウ音便(=「よう」)+サ行変格活用動詞「す」の未然形+打消の助動詞「ず」の連用形+係助詞「は」。「ずは」だけの場合、「~しないで」「もし~でないなら」の意味がある。
代名詞
格助詞
御子名詞
格助詞主格用法
動詞ワ行上一段活用動詞「居る」の連用形。
上一段動詞は基本的には10語のみと数に限りがあるため、頭文字を取って「ひいきにみゐる」で確実に暗記しておくこと。
たまふ動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」の連用形。
「給ふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。
べき助動詞推量の助動詞「べし」の連体形
助動詞断定の助動詞「なり」の連体形「なる」の撥音便の無表記形。
あくまで「無表記」なだけなので、読むときは「なん」です。
めり助動詞推定の助動詞「めり」の終止形
格助詞
一の皇子名詞第一皇子。ここでは後の朱雀帝を指す。
格助詞
女御名詞天皇の妻・妃のこと。
天皇の正妻は一人(皇后)または二人(皇后・中宮)であり、それに該当しない「妾(めかけ)」を指す。
彼女らは身分(官位)により厳密に分類され、通常、親王や大臣以下の娘が「女御」になることができる。
ここでは後に「弘徽殿女御」と呼ばれる女性を指すが、彼女は「更衣」である桐壺更衣の上位にあたる。
係助詞
思し疑へ動詞ハ行四段活用動詞「思し疑ふ」の已然形
助動詞過去の助動詞「き」の終止形
皇太子にも、悪くすると、この皇子(=光源氏)がお立ちになる(おなりになる)はずのようだと第一皇子の(母である弘徽殿の)女御は疑わしくお思いになっている。

人より先に参りたまひて、やむごとなき御思ひなべてならず、

人      名詞     
より格助詞
名詞
格助詞
参り動詞★重要単語
ラ行四段活用動詞「参る」の連用形。
「参る」は「行く」「来」の謙譲語である「参上する」という意味のほか、「御」+名詞+「参る」などの形で高貴な身分の人物に対して「(何かをして)差し上げる」という「与ふ」「す」の謙譲語、さらに「食ふ」「飲む」の尊敬語である「召し上がる」の意味がある。判別には文脈判断が必要になるが、まずは最初の「参上する」を当て、不自然であれば他の訳をあてていく。
たまひ動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」の連用形。
「給ふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。
接続助詞
やむごとなき形容詞 ★重要単語
ク活用の形容詞「やむごとなし」の連体形。
「止む事無し」と漢字を当てて覚える。
「そのまま放っておくことができないほどである」という意味から、「並々ではない」、「高貴である」という意味になった。
御思ひ名詞 
なべて副詞一般に。ふつう。
なら助動詞断定の助動詞「なり」の未然形
助動詞打消の助動詞「ず」の連用形
(この方は)他人よりも先に入内なさって、(帝にとって)並々でない方というお思いは一通りではなく、

皇女たちなどもおはしませば、この御方の御諌めをのみぞ、

皇女      名詞      
たち接尾語
など副助詞
係助詞
おはしませ動詞★重要単語
サ行四段活用「おはします」の已然形。※サ変またはサ行下二段活用の説あり。
本動詞として「いらっしゃる(「あり」「来」「行く」などの尊敬語)」、尊敬の補助動詞として「~していらっしゃる」の意味を持つ。
基本的に訳出の際は「いらっしゃる」と読み替えて間違いはない。
接続助詞
代名詞
格動詞
御方名詞
格助詞
御諫め名詞忠告。戒め。諫言とも言い、目上の者に対して下の身分の者から過ちなどを指摘することを指す。漢文においては有能な臣下が王などに諫言するシーンが良く見られるので頭に入れておきたい。(その諫言を受け入れるかどうかで王の器や能力が図られてしまうが、これは現代社会においても同様のことが言える。)
格助詞
のみ副助詞限定
係助詞
(弘徽殿女御には)皇女たちもいらっしゃったので、(帝は)このお方のご意見だけは、

なほわづらはしう心苦しう思ひきこえさせたまひける。

なほ     副詞      ★重要単語
現代にも残っている「依然としてやはり(変わらず)」、「よりいっそう」のほか、「なんといってもやはり」などの意味があり、文脈に応じて適切な訳語を当てる。
わづらはしう形容詞シク活用の形容詞「わづらはし」の連用形のウ音便。
「面倒だ」「気を遣う」などの訳をあてる。
心苦しう形容詞シク活用の形容詞「心苦し」の連用形のウ音便
思ひ動詞ハ行四段活用動詞「思ふ」の連用形
きこえ動詞★重要単語
ヤ行下二段活用動詞「きこゆ」の未然形。
「聞こえる」「評判になる」「分かる」などの一般動詞としての用法と、「言ふ」の謙譲語である「申し上げる」、謙譲の補助動詞である「お~申し上げる」の用法がある。謙譲語としての「聞こゆ」は、直前に動詞があるかどうかで意味を判別する必要があり、この場合では補助動詞の用法。
させ助動詞尊敬の助動詞「さす」の連用形。
たまひ動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」の連用形。
「給ふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。
ける助動詞過去の助動詞「けり」の連体形。
係助詞「ぞ」を受けて係り結びが成立している。
やはり気遣いされつらくお思い申し上げなさるのであった。

今回はここまで🐸

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