源氏物語『藤壺の入内』品詞分解/現代語訳/解説⑥
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今回は源氏物語の『藤壺の入内』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。
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必要に応じて解説なども記しています。
古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥
それでは行ってみましょう!
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目次
母御息所も、影だにおぼえたまはぬを、
母御息所 | 名詞 | ここでは光源氏の母、桐壺更衣のことを指す。 |
も | 係助詞 | |
影 | 名詞 | ここでは、心の中に思い浮かべる「顔や姿、面影」の意味で使われる。 |
だに | 副助詞 | 副助詞「だに」は類推の「だに」と最小限の希望の「だに」の二つの用法が存在するが、今回は前者。 最小限の希望を表す場合、下に意志・願望・仮定・命令表現を伴うことが多い。 せめて「だに」だけでも覚えてほしい。 |
おぼえ | 動詞 | ヤ行下二段活用動詞「おぼゆ」の連用形。 ハ行四段活用動詞「思ふ」に奈良時代の「受身」「可能」「自発」の助動詞「ゆ」(「尊敬」の意味がないことに注意)が付いて一語になった語。 |
たまは | 動詞 | ハ行四段活用動詞「たまふ」の未然形。 「たまふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。 この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。 作者から源氏の君への敬意が示される。 |
ぬ | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の連体形 |
を | 格助詞 |
母御息所のことも、(源氏の君は)面影でさえも覚えていらっしゃらないのを、
「いとよう似たまへり。」と典侍の聞こえけるを、
いと | 副詞 | 「たいそう」、「非常に」という訳を当て、程度が甚だしいことを示す。「めっちゃ」と脳内変換してもOK。 ここからは内侍のセリフである。 |
よう | 形容詞 | ク活用の形容詞「よし」の連用形のウ音便 |
似 | 動詞 | ナ行上一段活用動詞「似る」の連用形。 上一段動詞は基本的には10語のみと数に限りがあるため、頭文字を取って「ひいきにみゐる」で確実に暗記しておくこと。 |
たまへ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「たまふ」の已然形。 尊敬の補助動詞として使われ、典侍から藤壺への敬意が示される。 |
り | 助動詞 | 存続の助動詞「り」の終止形。 接続を覚えるための語呂合わせは「サ未四已(さみしい)りっちゃん」派か「サ未四已りかちゃん」派かで分かれる。 教室に「り」で始まる子がいるとその日はイジられる可能性が高い。 |
と | 格助詞 | |
典侍 | 名詞 | 「ないしのすけ」と読む。 天皇の側に仕えて、宮中の礼式や雑務などをつかさどる「内侍の司」の次官である女官のこと。 殿上人などの娘が任じられたという。 |
の | 格助詞 | 主格用法 |
聞こえ | 動詞 | ヤ行下二段活用動詞「聞こゆ」の連用形。 「聞こえる」「評判になる」「分かる」などの一般動詞としての用法と、「言ふ」の謙譲語である「申し上げる」、謙譲の補助動詞である「お~申し上げる」の用法がある。謙譲語としての「聞こゆ」は、直前に動詞があるかどうかで意味を判別する必要がある。 ここでは「言ふ」の謙譲語として使われ、作者から源氏の君への敬意が示される。 |
ける | 助動詞 | 過去の助動詞「けり」の連体形。 同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。 |
を | 格助詞 |
「(藤壺が桐壺更衣に)たいそうよく似ていらっしゃる。」と典侍が申し上げるのを、
若き御心地に「いとあはれ。」と思ひきこえたまひて、
若き | 形容詞 | ク活用の形容詞「若し」の連体形 |
御心地 | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
いと | 副詞 | |
あはれ | 形容動詞 | ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の語幹。 「趣深い」「かわいそう」「すばらしい」など様々な訳語をあてることができるが、 「あはれ」とは基本的・包括的な美的理念であり、 一面性のみに光を当てるべきではないことを理解しておきたい。 近年「エモい」というある意味「便利」な言葉が生まれたが、平安時代の精神と通ずるところがあるように思える。 「エモい」「尊い」などを先人が逆輸入すれば「あはれなり」と訳するのかもしれない ★形容詞・形容動詞の語幹の用法についてまとめておく。 ①接尾語を伴い別の品詞をつくる例 ⇒形容詞の語幹+「げなり」=形容動詞 形容詞の語幹+「さ」「み」=名詞 形容詞の語幹+「がる」=動詞 ②連用修飾語(〇〇が××なので と訳す)になる例 ⇒名詞(体言)+「を」+形容詞の語幹+「み」 ex.「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の~」 ③格助詞「の」を伴い連体修飾語になる例 ⇒ex.「をかしの御髪や。」 ④単独または感動詞を伴い、意味を強める例 ⇒ex.「あなめでたや。」 |
と | 格助詞 | |
思ひ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「思ふ」の連用形 |
きこえ | 動詞 | ヤ行下二段活用動詞「きこゆ」の連用形。 謙譲の補助動詞として使われ、作者から藤壺への敬意が示される。 |
たまひ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「たまふ」の連用形。 尊敬の補助動詞として使われ、作者から源氏の君への敬意が示される。 |
て | 接続助詞 |
幼いお気持ちに、「たいそう懐かしいことだ。」と思い申し上げなさって、
常に参らまほしく、
常に | 副詞 | |
参ら | 動詞 | ラ行四段活用動詞「参る」の未然形。 ★重要単語 「参る」は「行く」「来」の謙譲語である「参上する」という意味のほか、「御」+名詞+「参る」などの形で高貴な身分の人物に対して「(何かをして)差し上げる」という「与ふ」「す」の謙譲語、さらに「食ふ」「飲む」の尊敬語である「召し上がる」の意味がある。判別には文脈判断が必要になるが、まずは最初の「参上する」を当て、不自然であれば他の訳をあてていく。 |
まほしく | 助動詞 | 希望の助動詞「まほし」の連用形 |
いつも(藤壺の側に)参りたい、
「なづさひ見たてまつらばや。」
なづさひ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「なづさふ」の連用形。 「水に浮かんで漂っている」、「慕いなつく、なれ親しむ」といった意味を持つ。 ここでは後者の意味で使われる。 |
見 | 動詞 | マ行上一段活用動詞「見る」の連用形 |
たてまつら | 動詞 | ラ行四段活用動詞「たてまつる」の未然形。 ★重要単語 「奉る」は尊敬語・謙譲語両方の用法があるため、苦手とする受験生が多い。以下に整理しておくのでしっかり確認しておこう。 〇尊敬語 【本動詞】 ・「食ふ」「飲む」の尊敬語「召し上がる」 ・「乗る」の尊敬語「お乗りになる」 ・「着る」の尊敬語「お召しになる」 〇謙譲語(謙譲語の方が目にする機会は多い!) 【本動詞】 ・「与ふ」の謙譲語「差し上げる」 【補助動詞】 ・「~し申し上げる」 ★「補助動詞は用言や助動詞などの活用する語に付く場合である」ことを押さえておきたい。 ここでは源氏の君から藤壺への敬意が示される。 |
ばや | 終助詞 | 願望の終助詞。「バヤリースオレンジ飲みたい」や「婆やは〇〇したい」などの有名なゴロがあるので、好きなもので覚えよう。接続は未然形。 |
「なれ親しんで(藤壺の姿を)拝見したい。」
とおぼえたまふ。
と | 格助詞 | |
おぼえ | 動詞 | ヤ行下二段活用動詞「おぼゆ」の連用形 |
たまふ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「たまふ」の終止形。 尊敬の補助動詞として使われ、作者から源氏の君への敬意が示される。 |
とお思いになる。
今回はここまで🐸
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