枕草子『はしたなきもの』品詞分解/現代語訳/解説①

枕草子『はしたなきもの』品詞分解/現代語訳/解説①

はじめに

こんにちは!こくご部です。

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今回は枕草子『はしたなきもの』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説も記しておきます。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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出典について

まずは出典の『枕草子』について触れておきましょう。

出典

★作者について
 作者は清少納言。一条天皇の中宮定子に仕える(紫式部が仕えたのは中宮彰子)。父は清原元輔

★ジャンルについて
 
随筆文学。『枕草子』の内容は以下の3つに大別される(諸説あり)。
①類聚的章段(「〇〇は~」「〇〇なもの」で始まるもの)
②日記的章段(実際に作者が経験した事象について描かれたもの)
③随想的章段(諸々の事象についての感想を述べたもの)

★成立について
 平安時代中期

敬語について
 
『枕草子』のうち、特に清少納言の過ごした宮廷社会を描いた場面では敬語に着目して「誰が主語になっているか」を見極めることが重要。
清少納言の仕えた中宮定子一条天皇に対しては二重尊敬が用いられることがほとんど。
また、通常の尊敬語が用いられている場合は上記の二人以外の貴人が主語であることが多く、敬語が用いられていない場合作者自身や周囲の女房たちが主語である可能性が高い。


はしたなきもの、こと人を呼ぶに、我ぞとさし出でたる。

はしたなき        形容詞      ク活用の形容詞「はしたなし」の連体形。
「端」+接尾語「なし」。接尾語の「なし」は「~でない」という意味ではなく、程度が甚だしいことを示し、「なし」の上につく語の意味を強調する働きをもつ。
「端」は中途半端であることを示すため、「きまりが悪い・恥ずかしい」、「中途半端だ」などの訳を当てる。
「〇〇するなんて、はしたない」というセリフを聞いたことがある人もいるかもしれないが、現代にも生きている。

この「はしたなきもの」~から始まる本章段は、筆者が「きまりが悪い」と感じるものを書き連ねた「類聚的章段」である。        
もの名詞
こと人名詞「こと」は漢字をあてると「異」であり、ここでは「こと人」で「ほかの人」という意味で使われる
格助詞
呼ぶ動詞バ行四段活用動詞「呼ぶ」の連体形
接続助詞         逆接確定
代名詞
終助詞念押しの終助詞
格助詞
さし出で動詞ダ行下二段活用動詞「さし出づ」の連用形。
「さし」は接頭語で、動詞に付いて意味を強めたり語調を整えたりする。
「さし出づ」はここでは「でしゃばる」という意味で使われる。
たる助動詞完了の助動詞「たり」の連体形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。
意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)
きまりが悪いもの。ほかの人を呼ぶが、(呼ばれたのは)自分だと出しゃばったもの。

ものなど取らする折は、いとど。

もの      名詞     
など副助詞婉曲の副助詞
取らする動詞 サ行下二段活用動詞「取らす」の連体形。
「受け取らせる、与える」という意味を持つ語。
名詞
係助詞
いとど副詞副詞「いと」を重ねてできた語で、「ますます、いっそう」、「そのうえさらに」といった意味を持つ。
ここでは直後に「はしたなし」が省略されていると考えると解釈しやすい。
ものなどを与える時は、ますます(間が悪い)。

おのづから人の上などうち言ひそしりたるに、

おのづから   副詞      漢字をあてると「自ら」であるとおり、ここでは「自然に、自然の成り行きで」の意で使われる。
名詞
格助詞
名詞その人や関係する物事についてを指す。現代でも「身の上話」という言葉が残っている。
など副助詞婉曲の副助詞
うち言ひ動詞ハ行四段活用動詞「言ふ」の連用形。
「うち」は接頭語。動詞に付いて、語調を整えたり、直後に続く動詞の意味を強めたりする働きがあるので、覚えておきたい。
そしり動詞ラ行四段活用動詞「そしる」の連用形。
「悪く言う、けなす」という意味を持つ語。
たる助動詞完了の助動詞「たり」の連体形      
接続助詞
自然の流れで人のうわさなどをちょっと言い、けなしたところ、

をさなき子どもの聞き取りて、

をさなき     形容詞   ク活用の形容詞「をさなし」の連体形
子ども名詞
格助詞主格用法
聞き取り動詞ラ行四段活用動詞「聞き取る」の連用形                 
接続助詞
幼い子どもが聞き取って、

その人のあるに言ひ出でたる。

そ     代名詞    ここでは、「うち言ひそし」られた人、つまりけなされた人を指す。
格助詞
名詞
格助詞 主格用法
ある動詞ラ行変格活用動詞「あり」の連体形。
ラ変動詞は「あり」「をり」「はべり」「いまそが(か)り/いますが(か)り」を押さえておこう。
に   格助詞
言ひ出で 動詞ダ行下二段活用動詞「言ひ出づ」の連用形
たる助動詞完了の助動詞「たり」の連体形。
直後に「はしたなし」を補うと解釈しやすい。
その人がいる時に(子どもがその悪口を)言い出したこと(は、きまりが悪い)。

今回はここまで🐸

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