源氏物語『御息所のもの思い』品詞分解/現代語訳/解説④

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はじめに

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今回は源氏物語の『御息所のもの思い』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

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必要に応じて解説なども記しています。   

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!


それだに人の上にては、罪深うゆゆしきを

それ     動詞     ラ行四段活用動詞「うちかなぐる」の連体形。
「かなぐる」は「荒々しく引き離す」という意味を持つ語である。
だに副助詞例示の副助詞
動詞ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」の連用形。
「見える」「思われる」「見られる」「結婚する」など様々な意味があるが、「見ゆ」の「ゆ」は上代(ほぼ奈良時代まで)の助動詞であり、受身・自発・可能の意味がある。
「受身・自発・可能」という字面を見ると「る」と同じでは?と思った人がいるかもしれないが、その直感は正しい。「る」の発達に伴って「ゆ」が少しずつ姿を消していった。
なお、「ゆ」には尊敬の意味はない。
動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の連体形。
尊敬の補助動詞として使われ、作者から六条の御息所への敬意が示される。
名詞
にて動詞ラ行四段活用動詞「たび重なる」の連用形
助動詞完了の助動詞「ぬ」の連用形。
助動詞過去の助動詞「けり」の終止形
深う
ゆゆしき
荒々しく引き離すなどをご覧になることが度重なったのだった。

現の我が身ながらさるうとましきことを言ひつけらるる、

現      形容詞    ク活用の形容詞「はかなし」の連体形。                          
「頼りない、あっけない」、「ちょっとした、とるに足りない」といった意を持つ語。
ここでは後者の意味で使われる。
名詞 
格助詞
名詞「はかなきことの折」とは、かの有名な「車争い」のことを指す。
賀茂祭の行列に光源氏が参加するということで、その様子を見ようと光源氏の正妻である葵の上は見物に出かけた。しかし見物に行くことを急に決めたため、行列を見るのにいい場所がなく、従者が他の車をどけて場所取りをしてしまっていた。そのどけられた車の中に、お忍びで来ていた光源氏の愛人、六条の御息所がいたのであった。
格助詞
ながら名詞
さる格助詞主格用法
うとましき動詞タ行四段活用動詞「思ひ消つ」の連用形。
ここでは「無視する」の出で使われる。
こと
言ひつけ
らるる
ちょっとした事件の際に、あの人(葵の上)が、(六条の御息所を)無視し、

宿世の憂きこと。

宿世       形容詞      ク活用の形容詞「無し」の連体形
名詞
憂き格助詞
こと動詞サ行四段活用動詞「もてなす」の連体形。
現代でも「おもてなし」や「(人を)もてなす」の形で残っているように、「(客を)もてなす」や「応対する」、「物事を執り行う」などの意味がある。
いない者のように対応する様子であった御禊の日の後から、

すべてつれなき人にいかで心もかけきこえじ。」

すべて     名詞     ここでは、「一つの出来事、一件」の意で使われる。
「車争い」の事件のことを指す。
つれなき格助詞
動詞ラ行下二段活用動詞「おぼし浮かる」の連用形。
「おぼす」はサ行四段活用動詞の連用形。「思ふ」の尊敬語。
ここでは作者から六条の御息所への敬意が示される。
助動詞完了の助動詞「ぬ」の連用形。
同じ完了の意味で同じ連用形接続の「つ」との違いが聞かれることもあるのでまとめておく。
「ぬ」:自然的な作用を示す場合に用いられる
⇒ ex.「風立ちぬ」
「つ」:人為的、意図的な作用を示す場合に用いられる
⇒ex.「石炭をばはや積み果てつ」

【余談】
先の用例で紹介した「石炭をばはや積み果てつ」は森鴎外『舞姫』からの引用。高校の授業で『舞姫』を扱う学校は多いが、こだわりのある先生であればこの一文字で1時間の授業ができるほどの名文と言える。興味のある人は『舞姫』の中で「つ」と「ぬ」がどのように使い分けられているかチェックしてみてほしい。
いかで助動詞過去の助動詞「き」の連体形
名詞
形容詞ク活用の形容詞「鎮まりがたし」の連用形のウ音便
かけ動詞サ行四段活用動詞「おぼす」の未然形。
ここでは作者から六条の御息所への敬意が示される。
きこえ助動詞受身の助動詞「らる」の連体形。
助動詞「る」・「らる」は受身、尊敬、自発、可能の四つの意味をもつ。主な意味の見分け方は次のとおり。原則⇒文脈判断の順番で自然な訳を組み立てたい。

①受身 ⇒「~に」(受身の対象)+「る」(「らる」)
②尊敬 ⇒尊敬語+「る」(「らる」)
③自発 ⇒知覚動詞(「思ふ」「しのぶ」「ながむ」等)+「る」(「らる」)
④可能 ⇒「る」(「らる」)+打消・反語

また、助動詞「る」「らる」は接続する動詞の活用の種類によって使い分けられるため、併せて覚えておきたい。
四段活用動詞、ナ行変格活用動詞、ラ行変格活用動詞の未然形は「る」が使われる。その他の動詞の未然形には「らる」が使われる。
「四段な(ナ変)ら(ラ変)る」と覚えるのも手。
名詞
あの一つの出来事で動揺した心が鎮まりがたくお思いになる気持ちのせいであろうか、

とおぼし返せど、

と      副詞     
おぼし返せ動詞マ行四段活用動詞「まどろむ」の連用形。
「うち」は接頭語。動詞に付いて、語調を整えたり、直後に続く動詞の意味を強めたりする働きがあるので、覚えておきたい。
動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の連体形。
「たまふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。
作者から六条の御息所への敬意が示される。
ほんの少しうとうとなさった夢の中では、
 

「思ふももの。」をなり。

思ふ      代名詞    葵の上を指す
格助詞
もの名詞
副詞「たいそう」、「非常に」という訳を当て、程度が甚だしいことを示す。「めっちゃ」と脳内変換してもOK。
なり形容詞シク活用の形容詞「おぼし」の連体形。
「(そのように)思われる」、「(したいと)思っている」といった意味を持つ語。
ここでは前者の意味で使われる。
あの姫君と思われる人がたいそう美しくいる所に行って、あれやこれやと引き回し、

今回はここまで🐸

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