更級日記『源氏の五十余巻』品詞分解/現代語訳/解説①

更級日記『源氏の五十余巻』品詞分解/現代語訳/解説①

はじめに

こんにちは!こくご部です。

定期テスト対策から大学受験の過去問解説まで、「知りたい」に応えるコンテンツを発信します。


今回は更級日記から『源氏の五十余巻』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説も記しておきます。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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出典について

まずは出典の『更級日記』について触れておきましょう。

出典

★作者について
 作者は菅原孝標女(すがわらたかすえのむすめ)。伯母は『蜻蛉日記』を著した藤原道綱母。

★ジャンルについて
 日記文学
。同ジャンルの『蜻蛉日記』と対比して語られる文脈が多い。

★成立について
 平安時代中期

その他
『源氏物語』が大好きな一人の夢見る少女が成長と共に厳しい現実に打ちひしがれ、やがて仏門に入り来世の幸福を願うようになる。作者自身の人生の回想録でもある。ある文化やその中心地(=都)に憧れを抱く地方在住のオタク女子と形容されることが多い。個人的には親近感が湧きます。


かくのみ思ひくんじたるを、心も慰めむと、心苦しがりて、

かく副詞
のみ係助詞
思ひくんじ動詞   サ変動詞「思ひくんず」の連用形。
「くんず」はふさぎこむ。
たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形
格助詞
名詞
格助詞
慰め動詞マ行下二段活動動詞「慰む」の未然形
助動詞意志の助動詞「む」の終止形
格助詞
心苦しがり      動詞ラ行四段活用動詞「心苦しがる」の連用形。
接尾語「がる」は名詞や形容詞、形容動詞の語幹について動詞をつくる。 「~のように思う」、「~のように振る舞う」という意味を持つ。
接続助詞
このようにひたすらふさぎこんでいるのを、(私の)心を慰めようと、心配して、

母、物語など求めて見せたまふに、

母     名詞     作者の母。
物語名詞
など副助詞
求め動詞マ行下二段活用動詞「求む」の連用形
接続助詞
見せ動詞サ行下二段活用動詞「見す」の連用形
たまふ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の連体形。
「たまふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。

ここでは作者から母への敬意。
接続助詞
母は物語などを探してお見せなさる(見せてくださる)ので、

げにおのづから慰みゆく。紫のゆかりを見て、

げに副詞  なるほど。本当に。
おのづから   副詞漢字を当てると「自づから」。自然と。
慰みゆく動詞
紫のゆかり名詞ここでは『源氏物語』の若紫の巻のことを指す。
格助詞ク活用の形容詞「若し」の連用形
動詞マ行上一段活用動詞「見る」の連用形。
上一段動詞は基本的には10語のみと数に限りがあるため、頭文字を取って「ひいきにみゐる」で確実に暗記しておくこと。
接続助詞  
なるほど自然と心が慰められる。『源氏物語』の若紫の巻などを見て、

続きの見まほしくおぼゆれど、人語らひなどもえせず、

続き    名詞    
格助詞主格用法                
動詞マ行上一段活用「見る」の未然形
まほしく助動詞希望の助動詞「まほし」の連用形
おぼゆれ動詞ヤ行下二段活用動詞「おぼゆ」の已然形。
ハ行四段活用動詞「思ふ」に奈良時代の「受身」「可能」「自発」の助動詞「ゆ」(「尊敬」の意味がないことに注意)が付いて一語になった語。
ここでは「思われる」の意味で使われている。
接続助詞逆接の接続助詞。已然形接続ということも押さえておきたい。
人語らひ名詞人に相談すること。話をすること。
など副助詞
係助詞
副詞後ろに「打消」を伴って「不可能」の意味を表す。
このようにセットで用いる副詞を「呼応(陳述)の副詞」と呼ぶ。
動詞サ行変格活用「す」の未然形
助動詞打消の助動詞「ず」の連用形
続きが見たく思われるが、人に相談することなどもできず、
 

たれもいまだ都なれぬほどにて、え見つけず。

たれ代名詞   漢字を当てると「誰」。
係助詞
いまだ副詞漢字を当てると「未だ」。
名詞京都のことを指す。
なれ動詞ラ行下二段活用「なる」の未然形
助動詞打消の助動詞「ず」の連体形
ほど名詞
助動詞断定の助動詞「なり」の連用形
接続助詞
副詞後ろに「打消」を伴って「不可能」の意味を表す。
このようにセットで用いる副詞を「呼応(陳述)の副詞」と呼ぶ。
見つけ動詞カ行下二段活用動詞「見つく」の未然形
助動詞打消の助動詞「ず」の終止形
皆がまだ都に住み慣れないころで、見つけることができない。

いみじく心もとなく、ゆかしくおぼゆるままに、

いみじく      形容詞  シク活用の形容詞「いみじ」の連用形。   
程度が「はなはだしい」のほか、「すばらしい」「ひどい」の意味を持つ。
現代語の「ヤバい」と同じで、プラス・マイナスの両面のニュアンスがあることを念頭に置いておきたい。

この場合は副詞的に用いており「非常に」と訳を当てると自然。           
心もとなく形容詞ク活用の形容詞「心もとなし」の連用形。

「じれったい、待ち遠しい」や「気がかりだ、不安だ」などの意味を持つ。
ゆかしく形容詞ク活用の形容詞「ゆかし」の連用形。

カ行四段活用動詞「行く」が形容詞化した語であり、そっちに行ってみたいと思うぐらい「心がひかれる」という意味が基本となっている語。
関心を抱いた対象に応じて「見たい」「聞きたい」「知りたい」などと訳し分けることが必要。
おぼゆる動詞ヤ行下二段活用動詞「おぼゆ」の連体形
まま名詞
格助詞理由
非常にもどかしく、(源氏物語の続きが)見たいと思われるので、


「この源氏の物語、一の巻よりしてみな見せたまへ。」と

代名詞    
格助詞
源氏の物語    名詞紫式部が著した『源氏物語』を指す。
一の巻名詞連番のうちの最初の一つ目。マンガなどをイメージすればよい。
当然ながら、当時はの書物は製本したものではなき、(絵)巻物である。
より格助詞起点
動詞サ行変格活用動詞「す」の連用形
接続助詞
みな動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の終止形。
「たまふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。語り手から右大臣への敬意が示される。
見せ動詞サ行下二段活用「見す」の連用形
たまへ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の命令形。
「たまふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。

ここでは作者から神仏への敬意。
格助詞
「この『源氏物語』を一の巻から全部(私に)お見せください。」と

心のうちに祈る。親の太秦に籠りたまへるにも、

名詞    
格助詞
うち名詞
格助詞
祈る動詞ラ行四段活用動詞「祈る」の終止形
名詞
格助詞主格用法
太秦名詞読みは「うずまさ」。現在の京都市右京区。映画村などで有名な地である。
格助詞
籠もり   動詞ラ行四段活用動詞「籠る」の連用形
たまへ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の已然形。
「たまふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。

ここでは作者から親への敬意。
助動詞完了の助動詞「り」の連体形
格助詞
係助詞
と心の中で祈る。親が太秦(の広隆寺)に籠っていらっしゃる時も、

異事なくこのことを申して、「出でむままにこの物語見果てむ。」

異事名詞読みは「ことごと」。他のこと。別のこと。
なく形容詞ク活用の形容詞「なし」の連用形
代名詞直前の「源氏の物語、一の巻よりしてみな見せたまへ」を指している。
形容詞
こと名詞
格助詞
申し動詞サ行四段活用動詞「申す」の連用形。
「言ふ」の謙譲語として使われ、ここでは作者から広隆寺の仏への敬意が示されている。
接続助詞
出で動詞ダ行下二段活用動詞「出づ」の未然形
助動詞仮定の助動詞「む」の連体形。

助動詞「む」は多くの意味をもつが、以下のように判別の手掛かりになる「ルール」があるので整理しておきたい。
※必ず文脈判断を踏まえること。この「ルール」は「この意味になることが多い」程度の認識でいること。

【原則】
助動詞「む」が文末にある場合
・主語が一人称⇒意志
・主語が二人称⇒適当/当然/命令
・主語が三人称⇒推量
助動詞「む」が文中に連体形で出てきた場合
・「む(連体形)」+「は」、「に」、「には」、体言⇒仮定
・「む(連体)」+体言⇒婉曲
※婉曲は助動詞「む」を訳出しなくても文意が通じる場合。
まま名詞
格助詞
代名詞
格助詞
物語名詞
見果て  動詞タ行下二段活用動詞「見果つ」の未然形
格助詞意志の助動詞「む」の終止形
他のことは祈らずにこのこと(源氏物語を一の巻から全部見せてほしいということ)を申し上げて、「(寺から)出たらそのまますぐにこの物語を最後まで見終わろう。」

今回はここまで🐸

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