土佐日記『門出』品詞分解/現代語訳/解説③

土佐日記『門出』品詞分解/現代語訳/解説③

はじめに

こんにちは!こくご部です。

定期テスト対策から大学受験の過去問解説まで、「知りたい」に応えるコンテンツを発信します。


今回は土佐日記『門出』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説も記しておきます。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

前回の記事はこちらから⇓


二十三日。八木のやすのりといふ人あり。

二十三日      名詞 読みは「はつかあまりみか」もしくは「にじゅうさんにち」。              
八木のやすのり               名詞人名。詳しくは不明であるが、「藤原のときざね」よりは自分の周囲にもいそうなお名前である。
格助詞
いふ        動詞        ハ行四段活用動詞「いふ」の連体形
名詞
あり動詞ラ行変格活用動詞「あり」の終止形。
ラ変動詞は「あり」「をり」「はべり」「いまそが(か)り/いますが(か)り」を押さえておこう。                                           
二十三日。八木のやすのりという人がいる。

この人、国に必ずしも言ひ使ふ者にもあらざなり。

こ    代名詞   ここでは前述の「八木のやすのり」を指す。
格助詞
名詞
名詞ここでは「国司の役所」のこと。
格助詞
必ず副詞
しも副助詞部分否定の副助詞
言ひ使ふ動詞ハ行四段活用動詞「言ひ使ふ」の連体形。
「仕事を言いつけて使う、召し使う」という意味で使われる。
名詞
助動詞断定の助動詞「なり」の連用形
係助詞強意の係助詞
あら動詞ラ行変格活用動詞「あり」が補助動詞として使われている。
「あり」本来の意味である「存在する」という意味ではなく、「~の状態である」という意味で使われていることに注意する。
助動詞打消の助動詞「ず」の連体形の撥音便無表記形。
「ざる」が撥音便になる⇒「ざん」になる。⇒「ん」が表記されなくなり「ざ」だけになる、という遷移。

★ルールとしてはラ変で活用する言葉の連体形に「めり、べし、なり」などが付くと「撥音便の無表記」が起きるというものであるが、受験生としては「あ/か/ざ/た/な」の下に「めり、べし、なり」のうちどれかが続いている場合は「ん」を入れて読む、という認識でOK。
なり助動詞伝聞の助動詞「なり」の終止形。
助動詞の「なり」は断定の「なり」と伝聞・推定の「なり」の二つが存在するが、前者は体言または連体形に接続、後者は終止形(ラ変型の活用語には連体形)に接続する。

『土佐日記』の冒頭部分、「男もすなる日記といふものを女もしてみむとてするなり」を覚えておけば、接続が導き出せる。
詳しくは「門出」①の記事へ。
この人、国司の役所で必ずしも召し使う者でもないそうだ。

これぞ、たたはしきやうにて馬のはなむけしたる。

これ    代名詞   
係助詞強意の係助詞
たたはしき形容詞シク活用の形容詞「たたはし」の連体形。
ここでは「いかめしくおごそかである、威厳がある」という意味で使われる。
やうに助動詞様子の助動詞「やうなり」の連用形
接続助詞
馬のはなむけ      名詞別れの宴のこと
動詞サ行変格活用動詞「す」の連用形
たる助動詞完了の助動詞「たり」の連体形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。
意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)

ここでは係助詞「ぞ」を受けて係り結びが成立している。
この人は威厳のある様子で、別れの宴をしてくれた。

守柄にやあらむ、国人の心の常として、今はとて見えざなるを、

守柄    名詞   読みは「かみがら」で、国守の人柄のこと。
「守」は作者である紀貫之を指している。
助動詞断定の助動詞「なり」の連用形。
★重要語句
「にや」(「にか」)
断定の助動詞「なり」の連用形+疑問の係助詞「や」の形で出てきた場合、後に続く「あらむ」や「ありけむ」などが省略されている。
「~であろうか」、「~であっただろうか」などと訳す。
係助詞疑問の係助詞
あら動詞ラ行変格活用動詞「あり」が補助動詞として使われている
助動詞推量の助動詞「む」の連体形。
係助詞「や」を受けて係り結びが成立している。
国人名詞読みは「くにひと」。田舎の人。地方の人。
格助詞
名詞
格助詞
名詞
助動詞断定の助動詞「たり」の連用形
して接続助詞
名詞
係助詞
とて格助詞
見え動詞ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」の未然形。
「見える」「思われる」「見られる」「結婚する」など様々な意味があるが、「見ゆ」の「ゆ」は上代(ほぼ奈良時代まで)の助動詞であり、受身・自発・可能の意味がある。
「受身・自発・可能」という字面を見ると「る」と同じでは?と思った人がいるかもしれないが、その直感は正しい。「る」の発達に伴って「ゆ」が少しずつ姿を消していった。
なお、「ゆ」には尊敬の意味はない。
助動詞打消の助動詞「ず」の連体形の撥音便無表記形。
上記を参照。
なる助動詞伝聞の助動詞「なり」の連体形
接続助詞逆接の確定条件
国守の人柄であろうか、国の人の人情の常として、今はといって、(別れの際に)顔を出さないが、

心ある者は、恥ぢずになむ来ける。

心ある    動詞    ラ行変格活用動詞「心あり」の連体形。
「心ある者」は「八木のやすのり」に対する評価である。
名詞
係助詞
恥ぢ動詞ダ行上二段活用動詞「恥づ」の未然形。
ここでは「周囲の人のことを気にせずに」というニュアンスであろうか。
助動詞打消の助動詞「ず」の連用形
格助詞
なむ係助詞強意の係助詞。
「なむ」には以下の4パターンあるので、それぞれ識別できるように押さえておきたい。(「⇒」以下は見分ける際のポイント)

①他への願望の終助詞「なむ」
⇒「なむ」の上は未然形
②助動詞「ぬ」の未然形「な」+助動詞「む」
⇒「なむ」の上は連用形
③係助詞「なむ」
⇒結びの流れや省略が発生していない場合、文末は連体形
④ナ変動詞の一部(未然形)+「な」+助動詞「む」
⇒「な」の上に「死」や「去(往)」がある

この場合は上の「立つ」が「立ち」と連用形になっていることから②が該当する。直感や雰囲気、感覚で訳や解釈を行っていると読むのが難しくなります。
動詞カ行変格活用動詞「来」の連用形。
連用形なので、読みは「き」である。
ける助動詞過去の助動詞「けり」の連体形。
同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。

ここでは係助詞「なむ」を受けて係り結びが成立している。
真心のある人は恥じずに来た。

これは、物によりてほむるにしもあらず。

これ     代名詞    
係助詞
名詞
格助詞
より動詞ラ行四段活用動詞「よる」の連用形
接続助詞
ほむる動詞マ行下二段活用動詞「ほむる」の連体形
助動詞断定の助動詞「なり」の連用形
しも副助詞部分否定の副助詞
あら動詞ラ行変格活用動詞「あり」の未然形が補助動詞として使われている
助動詞打消の助動詞「ず」の終止形

これは、(餞別の)贈り物によってほめるわけではない。

今回はここまで🐸


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