【解答解説】近畿大学2021(1月31日)国語大問2(古文)/『無名草子』

【解答解説】近畿大学2021(1月31日)国語大問2(古文)/『無名草子』

こんにちは!こくご部です。

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はじめに

今回は近畿大学2021(1月31日)国語大問2(古文)/『無名草子』の解答例及び解説を掲載します。

日本で一番志願者が多い近畿大学!とにかく情報処理能力が求められます。

志望している人は早期の対策をおすすめします🐸

なお、著作権の関係から、 当ブログ作成の現代語訳及び解答解説のみを掲載し
設問は掲載していませんのでご了承ください。


それでは行ってみましょう🔥


出典について

まずは出典の『無名草子』について触れておきましょう。

出典

★ジャンル
 物語評論:物語とそれに付随する和歌についての評論

★作者について
 作者は未詳。藤原俊成女(ふじわらのしゅんぜい/としなりのむすめ)が作者だとする説もある。
 鎌倉初期の成立。

その他
 批評が収録されている物語が、当時の人々にどのように受容されていたかを窺い知ることができる貴重な資料とされている。
 数百年後、名作映画のレビューとして、感想を熱く語ったツイートが「資料」として取り上げられるイメージに近いかもしれない。


本文・現代語訳『無明草子』葵の上の~

本文 現代語訳『無明草子』

葵の上の失せのほどのこともあはれなり。

葵の上がお亡くなりになるあたりも心が打たれる。

御わざの夜、 父大臣の闇に迷ひたまへるなど、ことわりにあはれなり。

葬儀の夜、(葵の上の)父・左大臣が心を乱しなさる(場面)など、あまりに気の毒である。

鈍める御衣を奉り換ふとて、我先立たましかば、深く染めたまはまし、などおぼして

(源氏が)鈍色のお召し物にお召し替えになるといって、「もしも私が葵の上に先立っていたならば、涙で袖をもっと深く染めなさっただろうに」、などとお思いになって

かぎりあれば薄墨衣あさけれど涙ぞ袖をふちとなしける

 決まりがあるので、私の着ている喪服は色が薄くて浅い薄墨衣であるが、あふれる涙が袖の色を深く染めていくことよ)

と詠みたまふところ。

と詠みなさる場面。

また、御忌み果てて、君も出でたまひ、日ごろさぶらひつる女房ども、

また、喪が明けて、源氏がお帰りになり、普段葵の上にお仕えしていた女房たちが、

おのおのあからさまに散るとて、おのがじし別れ惜しむところ、いたくあはれなり。

それぞれほんのちょっと散り散りになるといって、思い思いに別れを惜しむ場面も、非常にしみじみとする。

また、書きたまへる御手習ひども、大臣見て、

また、(源氏が)書き流しなさったものなどを、大臣が見て、

泣きたまひなどするも、すべてあはれなる巻なり。

泣きなさりなどするのも、全て心を打つ巻である。

須磨の別れのほどのことも。葵の上の古里にまかり申しにおはして、

「須磨」の巻での別れのあたりも(心を打つ)。(源氏が)葵の上の故郷(左大臣邸)に、(都を離れ、須磨へ)下向することを申し上げにいらっしゃって、

鳥辺山燃えし煙もまがふやと海人の塩焼くうらみにぞ行く

葬儀のあった鳥辺山で燃えていた煙と見間違えるほど似ていないか、と海人が塩を焼く浦を見に行く

とあるところ。また、鏡台に御髪掻きたまふとて見たまへば、

という場面。また、鬢の乱れを梳こうと鏡台をご覧になったところ、

いと面痩せたる影の、我ながら清らなるもあはれにおぼえて、

非常にお顔がやつれた容貌が、我ながら気品があって美しいのも心惹かれるとお思いになり、

「この影のやうにや痩せはべる」とて

「この鏡に映ったように痩せているのでしょうか」と言って、

身はかくてさすらへぬとも君があたりさらぬ鏡の影は離れじ

私の身はこのように落ちぶれるとしても、あなたの周囲の鏡に映る私はあなたの元を離れずにいよう

と聞こえたまへば、紫の上、涙を一目浮けて、見おこせて、

と申し上げなさると、紫の上は涙を浮かべ、こちらを見やって、

別るとも影だにとまるものならば鏡を見てもなぐさみなまし

別れたとしても、せめて影だけでもお姿を留めてくださるのならば、鏡を見て心を慰められることができるのに。

とあるところ。また、賀茂の下の御社のほどにて、神にまかり申したまふとて、

とある場面。また、賀茂の下の御社のあたりで、神に退去を申し上げなさろうとして、

憂き世をば今ぞ別るるとどまらむ名をばただすの神にまかせて

辛いこの世を今離れる。私の去った後に残る噂は糺の神にゆだねよう。

とあるところ。また、出でたまふ晩、紫の上、

とある場面。また、出立なさる晩、紫の上が(源氏に)、

惜しからぬ命に換へて目の前の別れをしばしとどめてしかな

 惜しくもない(私の)命に換えてでも、目の前の別れを少しの間止めたいものだなあ

とのたまへるこそ、いと人わろけれ。何の人数なるまじき花散里だに、

とおっしゃったのは非常にみっともない。一人前とは程遠い花散里でさえ、

月影の宿れる袖はせばくともとめても見ばや飽かぬ光を

 月の光が宿っている私の袖は狭いですが、引き止めてでも見ていたいものだなあ、見飽きることのない光(源氏)を。

とこそ聞こえたまふめれ。

と申し上げなさったようである。


問1 

問1:4

傍線部の解釈ができれば解答できる問題。

近畿大学の国語は時間との戦いになるので必ずしも必要ではないが、解答に迷う場合は落ち着いてまずは品詞分解

解答のキーとなる文法事項・語彙をチェックしていく。

〇「先立つ」
⇒(自分が)先に亡くなることを示す。もちろん、「先に立つ」「先に行う」などの意味もあるが、ここでは冒頭の「葵の上の失せのほど」とあることから、文脈判断ができる。

〇「ましかば~まし」
⇒「実とすることを定して像する」、反実仮想の助動詞「まし」。「ませば~まし」「ましかば~まし」「ませ~まし」などの形で用いられる。
ここで重要なのは「反実仮想」という名のとおり、「(実際はそうなっていないが)もし〇〇だったら〇〇なのになあ」ということ。本文中にこの構文を見かけたら、事実に反したことを述べているということを改めて認識しておきたい。

〇「(袖を)染める」
⇒流れた涙を袖で拭い、袖の色が変わる様子。「袖を濡らす」などの表現もあるが、同じ意味。


問2 

問2:1

「鳥辺山~」の歌に使用されている技法の組み合わせを選ぶ問題。

〇縁語:「鳥辺山」「燃え」「煙」「焼く」
⇒縁語は「一つの歌の中に関連性の高い語を読み込み、多層的な「鳥辺山」は当時、火葬場があり「葬儀」「死別」の代名詞。
今回は「火葬」から類推される「燃え」「煙」「焼く」が縁語。

〇掛詞:地名・ひらがな表記が怪しい!と考えておく。
⇒この場合は「恨み」「浦見(る)」


問3 

問3:1

まずは傍線部の逐語訳を心がけ、必要に応じ欠けている部分・省略されている部分を補う!

 

⇒直訳すると

「非常に顔が痩せた容貌が、我ながら気品があって美しいのも心惹かれるとお思いになり」
となるので、選択肢と照らし合わせていく。

2:「美しく思える~思い出されて」が不適。「我ながら」とあるのに他人のことのような記述になっている。

3:「みじめな気分になって」が不適。本文と真逆の内容。

4:「その内面は」が不適。「容貌」、つまり外見の話をしている。


問4 

問4:1

★穴埋め問題は形で判断⇒文意で判断

〇今回は和歌の中での穴埋めのため、まずは5/7/5/7/7の形になっているかをチェック。
⇒2の「ぞ」を入れると5/6/5/7/7になるため、ほぼ間違いと見当をつける(字余り・字足らずの可能性もあるため、ここで決めつけてはいけない

〇品詞をチェックする
⇒2の「ぞ」、3の「こそ」は係助詞。係助詞が入る場合は係り結びが生じるが、本文を確認しても係り結びが起きていないため、2と3は除外する。

〇文意で判断
⇒残った1の「だに」と「さへ」のどちらがふさわしいかを検討する。
ここでは「離れ離れになるとしても、せめてだけでも姿を引き留めてくれるなら~」という文脈であるので、1の「だに」が相応しい。


問5 

問5:2

★和歌が詠まれた状況、和歌に込められた思いを押さえて選択肢を吟味する!

ここは「謀叛」の罪を着せられ、自身から須磨に下ることを決意した光源氏が、周囲の人々に別れを告げにいくシーン。

1:「現世に」「名声を後世に残す意思を表明」が不適。前者は内容とズレ、後者は本文から読み取ることはできない。

3:「この世」「苦しみから逃れたい」が不適。1と同様。

4:「残される人々の名前を思い出し」が不適。和歌中に見える「名」は光源氏自身の名声・評判。


問6

問6:2

★傍線部直前・直後の内容も押さえる。文脈を正確に追いかけることができていれば問題なく解ける問題。

〇「紫の上、(和歌)とのたまふこそ、いと人わろけれ」とあるため、「紫の上が〇〇と詠んだのが良くない」という文脈である。
⇒この時点で批判されている対象が「紫の上を理解しない者は」となっている1、「光源氏は」となっている3が不適。

〇同様に、傍線部直後の「何の人数なるまじき花散る里だに(和歌)とこそ聞こえたまふめれ」もチェック。
⇒「取るに足りない(身分の)花散里でさえ〇〇と詠んだのに~」という文脈であり、比喩を用いて婉曲的に別れを悲しむ花散里の例が引き合いに出されている。
⇒ここで紫の上の和歌を確認すると、「目の前の別れをしばしとどめてしかな」とまさに「直接的で感情的」な思いを詠んでいる。これに対して女房たちは人わろけれ」と言っているのであり、1が適当。

なお、和歌において自分の命を引き合いに出す例は珍しくない。


問7

問7:1

問6と関連して、なぜ花散里を引き合いに出したのかを問う問題。

傍線部直後の「だに」がポイント。「だに」が類推(~でさえ)の意味であることが分かれば、紫の上の比較対象として花散里を挙げていることは想像に難くないはず。

2:「紫の上だけを取り上げるのは不公平だから」は理由になっていない。

3:「筆者が一番評価している人物だから」は最も選んではいけない選択肢。本文に記述もなく、最も評価している人物に「だに」を使うことはない。

4:「たくさん挙げた方が分かりやすいから」も2と同様に理由になっていない。


問8

問8:2

内容一致問題。

ここまで解いてきた時点で明らかに怪しいと感じてほしい選択肢が1つある。
2の「間接的に伝えようとした紫の上は」については問6の答えになっているだけでなく、問6で正答が選べなくても本文の和歌を確認すれば「間接的」とは言えないことが分かる。

近畿大学の問題は情報の取捨選択と、その処理速度が無いと対応が難しい。選択肢を吟味して確からしい判断をすることは言うまでもなく重要であるが、明らかな正解が分かる場合はどんどん先に進んで行くのが望ましい


今回はここまで🐸

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