源氏物語『桐壺 光源氏の誕生』品詞分解/現代語訳/解説②
目次
はじめに
こんにちは!こくご部です。
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今回は前回の続きで、源氏物語の『桐壺 光源氏の誕生』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。
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前回の記事:源氏物語『桐壺 光源氏の誕生』品詞分解/現代語訳/解説①
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必要に応じて解説なども記しています。
古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥
それでは行ってみましょう!
上達部、上人なども、あいなく目をそばめつつ、
上達部 | 名詞 | 読みは「かんだちめ」。別名公卿(くぎょう)。 大臣、大納言、中納言、参議及び三位(さんみ)以上の者の総称。イメージとしては現代の「位の高い」エリート役人(大臣クラス)でOK。 平安時代の「位階」は大きく一位~九位(初位)に分けられるが、「上達部」は通常三位以上(及び四位のうち「参議(=宰相)」と呼ばれる者」)の者を指す。詳しくは下図を参照されたい。 |
上人 | 名詞 | 「殿上人(てんじょうびと)」のこと。「殿上人」とは通常、五位以上の者(及び六位のうち「蔵人(くろうど)」と呼ばれる者)のうち、清涼殿の「殿上の間」に昇ることを許された者を指す。 この清涼殿は天皇が居住する殿舎で、重要公事や日常政務が行われるなど政治の中心となった。 cf.「地下(じげ)」 昇殿のできない、つまり 「殿上の間」 に昇ることができない者。「蔵人」を除く六位以下の者の総称。 つまり、上から「上達部」「殿上人」「地下」と厳格に身分が分けられているのだ。 |
など | 副助詞 | |
も | 係助詞 | |
あいなく | 形容詞 | ★重要単語 ク活用の形容詞「あいなし」の連用形。 漢字を当てると「愛無し」または「合い無し」となり、対象を受け入れられないさま、おもしろくないさまなどを表す。 連用形の「あいなく」になると、副詞的に「困ったこととして」「理由もなく、なんとなく」の訳を当てることが多いが、文脈により適切な訳語を当てる必要がある。 作者や語り手の心情を読み取ることができる箇所でもある。 |
目 | 名詞 | |
を | 格助詞 | |
そばめ | 動詞 | マ行下二段活用動詞「そばむ」の連用形。 「そばむ」は下二段活用だけでなく四段活用も存在するが、「そばむ」以外にも、四段活用の場合は自動詞、下二段活用の場合は他動詞といった語が見られる。 |
つつ | 副助詞 | 動作の反復 |
上達部や殿上人なども、わけもなく目をそむけては、
【参考】官位役職について(上達部編)
いとまばゆき人の御おぼえなり。
いと | 副詞 | 「たいそう」、「非常に」という訳を当て、程度が甚だしいことを示す。「めっちゃ」と脳内変換してもOK。 |
まばゆき | 形容詞 | ク活用「まばゆし」の連体形。 現代語のように単純に「まぶしい」だけでなく、「(まばゆいほど)美しい」、「きまりが悪い」、「(度を過ぎていて)見ていられない」などの意味もある。 ここでは天皇の寵愛ぶりが「(度を過ぎていて)見ていられない」という訳を当てている。 |
人 | 名詞 | ここでは桐壺更衣を指す。 |
の | 格助詞 | |
御おぼえ | 名詞 | ★重要単語 動詞の「おぼゆ」が名詞化したもの。 世間や貴人から特別に愛されることを「おぼえ」という。 「御」は天皇に対する敬意を示すために付けられているが、「御」が付いている場合は「貴人から愛されている」という状況であることを示すマーカーの役割にもなっている。 |
なり | 助動詞 | 断定の助動詞「なり」の終止形 |
とても見ていられないほどの(帝の)桐壺更衣への寵愛ぶりである。
唐土にも、かかる事の起こりにこそ、世も乱れ、悪しかりけれと、
唐土 | 名詞 | 「もろこし」と読む。中国の古名。 当時の知識人たちは中国古典に精通しており、様々なタイミングで想起し引用する。 |
に | 格助詞 | |
も | 係助詞 | |
かかる | 連体詞 | 「かくある」が変化したもの。ラ行変格活用動詞「かかり」の連体形と見てもOK。 |
事 | 名詞 | |
の | 格助詞 | |
起こり | 名詞 | 「起源」や「原因」、「物事のはじめ」などの訳を当てる。 |
に | 格助詞 | 原因を表す格助詞。 |
こそ | 係助詞 | 強意の係助詞。係り結びで文末を已然形にすることに注意。 |
世 | 名詞 | 原義は「終わりや限界のある時間・空間」。 「世間」や「生涯」、「前世/現世/来世」など文脈により様々な訳語が当てられるが、頻出は「男女・夫婦の仲」の訳語。 ここでは「世の中」や「世間」の訳語を当てる。 |
も | 係助詞 | |
乱れ | 動詞 | ラ行下二段活用動詞「乱る」の連用形 |
悪しかり | 形容詞 | ★重要単語 シク活用の形容詞「悪し」の連用形。「あし」と読む。 物事の善悪や是非の基準から判断して評価するとき、次の四段階の語を用いる。積極的肯定の「よし」⇒まあまあ良い・悪くないの「よろし」⇒まあまあ悪い・良くないの「わろし」⇒積極的否定の「あし」の価値基準は押さえておきたい。 また、ここでは直後に助動詞「けり」を伴っているため、補助活用(カリ活用)になっている。 |
けれ | 助動詞 | 過去の助動詞「けり」の已然形。文中の「こそ」を受け、已然形になっている。 |
と | 格助詞 | 「僕は~と思う」、「彼は~と言っていた」のように、現在でも残っている。 読解中に「と」が現れたらどこからどこまでがその人物のセリフ(または心中表現)なのかを押さえよう。教科書など一部のものには「 」が本文に付されているものがあるが、入試問題などでは「 」が無いことが一般的。 |
中国でもこのような事が原因で、世の中も乱れ、よくないことだったと
やうやう天の下にもあぢきなう、人のもてなやみぐさになりて、
やうやう | 副詞 | 次第に。「漸く」が語源とされている。 |
天の下 | 名詞 | 地上の全世界。この世。国家や政治を指すこともある。 |
に | 格助詞 | |
も | 係助詞 | |
あぢきなう | 形容詞 | ★重要単語 ク活用の形容詞「あぢきなし」の連用形のウ音便 「味気なし」と漢字を当てることもある。道理から外れていてどうしようもない状態や、それを評価した「つまらない」「苦々しい」などの意味がある。 |
人 | 名詞 | |
の | 格助詞 | |
もてなやみぐさ | 名詞 | 悩みの種。 |
に | 格助詞 | |
なり | 動詞 | ラ行四段活用動詞「なる」の連用形 |
て | 接続助詞 |
しだいに世間においても苦々しいことだと人々の悩みの種になって、
楊貴妃の例も引き出でつべくなりゆくに、
楊貴妃 | 名詞 | 中国・唐の玄宗(げんそう)皇帝が溺愛した女性。玄宗皇帝は楊貴妃に心を奪われて以来政治を顧みなくなり、国家を乱したとして命を奪われた。 |
の | 格助詞 | |
例 | 名詞 | ★重要単語 漢字を当てると「例」。 「世間のしきたり」や「前例・先例」、「世間話」などの意味があるが、文脈に応じて適切な訳を当てる。 |
も | 係助詞 | |
引き出で | 動詞 | ダ行下二段活用動詞「引き出づ」の連用形 |
つ | 助動詞 | 強意の助動詞「つ」の終止形。 ★重要文法 直後に「推量」や「推定」の助動詞がある場合、「完了」ではなく「強意」の意味で訳出を行う。 |
べく | 助動詞 | 推量の助動詞「べし」の連用形。 |
なりゆく | 動詞 | カ行四段活用動詞「なりゆく」の連体形 |
に | 接続助詞 |
楊貴妃の(先)例までも引き合いに出して(非難しそうになって)いくので、
いとはしたなきこと多かれど、
いと | 副詞 | |
はしたなしき | 形容詞 | ク活用の形容詞「はしたなし」の連体形。 「端」+接尾語「なし」。接尾語の「なし」は「~でない」という意味ではなく、程度が甚だしいことを示し、「なし」の上につく語の意味を強調する働きをもつ。 「端」は中途半端であることを示すため、「きまりが悪い・恥ずかしい」、「中途半端だ」などの訳を当てる。 「〇〇するなんて、はしたない」というセリフを聞いたことがある人もいるかもしれないが、現代にも生きている。 |
こと | 名詞 | |
多かれ | 形容詞 | ク活用の形容詞「多し」の已然形。 |
ど | 接続助詞 | 逆接の確定条件を示す。 現代でも「待てど暮らせど」などの形で残っている。 |
とても体裁の悪いことが多くあるけれども、
かたじけなき御心ばへのたぐひなきを頼みにてまじらひ給ふ。
かたじけなき | 形容詞 | ク活用の形容詞「かたじけなし」の連体形 |
御心ばへ | 名詞 | ★重要単語 「心ばへ」は気持ちや性質、風情などを示す語。 コアイメージとなるのは「心情や気持ちなどが外界へ向かって広がっていくこと」。文脈に応じて適切な訳語を当てたい。 「御」がついていることから、貴人(この場合は帝)の「心ばへ」であることが分かる。 |
の | 格助詞 | |
たぐひなき | 形容詞 | ク活用の形容詞「たぐひなし」の連体形 |
を | 格助詞 | |
頼み | 名詞 | ★重要単語 頼ることそのものや、頼る相手や対象を示す。 動詞の「たのむ」は四段活用と下二段活用が存在し、前者は「頼りにする」、後者は「頼りに思わせる」と頼る側が入れ替わるため注意が必要。 |
にて | 格助詞 | |
まじらひ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「まじらふ」の連用形。 ここでは「他の者に交じって宮仕えを続ける」という意。 |
給ふ | 動詞 | ハ行四段活用「給ふ」の終止形。 この場合は上に「まじらふ」という動詞があるため、本動詞ではなく補助動詞(尊敬)である。 |
もったいない(帝の)お気持ち(ご愛情)が比べるものがないほど(強い)であるのを頼りにして、(桐壺更衣は)宮仕えなさる〔宮仕えを続けていらっしゃる〕。
今回はここまで。次回へ続きます🔥
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