平家物語『木曽の最期』品詞分解/現代語訳/解説④

平家物語『木曽の最期』品詞分解/現代語訳/解説④

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今回は平家物語の『木曽の最期』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説なども記しています。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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それをも破つて行くほどに、

それ   代名詞   土肥次郎実平の軍のことを指す。前回の記事を参照。
土肥は2000騎で陣を張っているが、対する木曽殿(源義仲)はたったの50騎である。
単純に計算するのであれば40倍の軍勢を相手にする、まさに決死の戦いである。
格助詞
係助詞
破つ動詞ラ行四段活用動詞「破る」の連用形の促音便
接続助詞
行く動詞カ行四段活用動詞「行く」の連体形
ほど名詞★重要単語
時間、距離、空間、物体など様々な事物の程度を示す。
この場合は時間に対して使われている。
格助詞
それ(土井次郎実平の軍)をも破って行くうちに、

あそこでは四、五百騎、ここでは二、三百騎、百四、五十騎、百騎ばかりが中を、

あそこ   代名詞    
格助詞
係助詞
四、五百騎名詞
ここ代名詞
格助詞
係助詞
二、三百騎名詞
百四、五十騎名詞
百騎名詞
ばかり副助詞程度の副助詞。
限定の用法もあるので合わせて覚えておこう。
格助詞
名詞
格助詞
あそこでは四、五百騎、ここでは二、三百騎、百四、五十騎、百騎ほどが中を、
 

駆け割り駆け割り行くほどに、

駆け割り     動詞    カ行下二段活用動詞「駆く」の連用形+ラ行四段活用動詞「割る」の連用形
駆け割り動詞同上。
行く動詞カ行四段活用動詞「行く」の連体形
ほど名詞
格助詞
かき分けて駆け、かき分けて駆け行くうちに、

主従五騎にぞなりにける。

主従     名詞     読みは「しゆじゆう」。
五騎名詞何とか土肥次郎実平の2000騎の陣を突破したが、とうとう5騎になってしまった。絶体絶命である。
格助詞
係助詞強意の係助詞
なり動詞ラ行四段活用動詞「なる」の連用形
に 助動詞完了の助動詞「ぬ」の連用形。
同じ完了の意味で同じ連用形接続の「つ」との違いが聞かれることもあるのでまとめておく。
「ぬ」:自然的な作用を示す場合に用いられる
⇒ ex.「風立ちぬ」
「つ」:人為的、意図的な作用を示す場合に用いられる
⇒ex.「石炭をばはや積み果てつ」

【余談】
先の用例で紹介した「石炭をばはや積み果てつ」は森鴎外『舞姫』からの引用。高校の授業で『舞姫』を扱う学校は多いが、こだわりのある先生であればこの一文字で1時間の授業ができるほどの名文と言える。興味のある人は『舞姫』の中で「つ」と「ぬ」がどのように使い分けられているかチェックしてみてほしい。
ける助動詞過去の助動詞「けり」の連体形。
同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。

ここでは係助詞「ぞ」を受けて係り結びが成立している。
主従五騎になってしまった。

五騎がうちまで巴は討たれざりけり。

五騎       名詞         
格助詞
うち名詞
まで副助詞
名詞各地に伝説が残る、木曽殿と共に行動をしていた女性の名前。
美人で勇猛な人物であるとされている。その武力が後に示されることとなるが、ここでまだ生き残っている時点で相当な実力が窺える。
係助詞
討た動詞タ行四段活用動詞「討つ」の未然形
助動詞受身の助動詞「る」の未然形。
助動詞「る」・「らる」は受身、尊敬、自発、可能の四つの意味をもつ。主な意味の見分け方は次のとおり。原則⇒文脈判断の順番で自然な訳を組み立てたい。

①受身 ⇒「~に」(受身の対象)+「る」(「らる」)
②尊敬 ⇒尊敬語+「る」(「らる」)
③自発 ⇒知覚動詞(「思ふ」「しのぶ」「ながむ」等)+「る」(「らる」)
④可能 ⇒「る」(「らる」)+打消・反語

また、助動詞「る」「らる」は接続する動詞の活用の種類によって使い分けられるため、併せて覚えておきたい。
四段活用動詞、ナ行変格活用動詞、ラ行変格活用動詞の未然形は「る」が使われる。その他の動詞の未然形には「らる」が使われる。
「四段な(ナ変)ら(ラ変)る」と覚えるのも手。
ざり助動詞打消の助動詞「ず」の連用形
けり助動詞過去の助動詞「けり」の終止形

五騎のうちまで巴は討たれなかった。

木曽殿、「おのれはとうとう、女なれば、いづちへも行け。

木曽殿    名詞   木曽義仲のこと
おのれ代名詞巴のことを指す
係助詞
とうとう副詞漢字をあてると「疾う疾う」であるとおり、「早く早く、さっそうと」という意味を持つ語
名詞
なれ助動詞断定の助動詞「なり」の已然形。
助動詞の「なり」は断定の「なり」と伝聞・推定の「なり」の二つが存在するが、前者は体言または連体形に接続、後者は終止形(ラ変型の活用語には連体形)に接続する。
『土佐日記』の冒頭部分、「男もすなる日記といふものを女もしてみむとてするなり」を覚えておけば、接続が導き出せる。
接続助詞★重要文法
接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。
①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない)
⇒仮定(もし~ならば)
②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている)

(ⅰ)原因・理由(~なので)
(ⅱ)偶然(~したところ)
(ⅲ)必然(~するといつも)

ここでは原因・理由で取ると自然か。
いづち代名詞方向、場所についての指示代名詞
格助詞
係助詞強意の係助詞
行け動詞カ行四段活用動詞「行く」の命令形
木曽殿は、「あなたは早く早く、女であるから、どこへでも行け。

我は討ち死にせんと思ふなり。

我     代名詞    
係助詞
討ち死に名詞
動詞サ行変格活用動詞「す」の未然形
助動詞意志の助動詞「む」の終止形。
助動詞「む」は多くの意味をもつが、以下のように判別の手掛かりになる「ルール」があるので整理しておきたい。
※必ず文脈判断を踏まえること。この「ルール」は「この意味になることが多い」程度の認識でいること。

【原則】
助動詞「む」が文末にある場合
・主語が一人称⇒意志
・主語が二人称⇒適当/当然/命令
・主語が三人称⇒推量

助動詞「む」が文中に連体形で出てきた場合
・「む(連体形)」+「は」、「に」、「には」、体言⇒仮定
・「む(連体)」+体言⇒婉曲
※婉曲は助動詞「む」を訳出しなくても文意が通じる場合。
格助詞
思ふ動詞ハ行四段活用動詞「思ふ」の連体形
なり助動詞断定の助動詞「なり」の終止形
私は討ち死にしようと思うのだ。
 

もし人手にかからば自害をせんずれば、

もし     副詞     
人手名詞
格助詞
かから動詞ラ行四段活用動詞「かかる」の未然形。
「手にかかる」の形で使われる場合、「殺される」という意味となる。
接続助詞★重要文法
接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。
①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない)
⇒仮定(もし~ならば)
②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている)

(ⅰ)原因・理由(~なので)
(ⅱ)偶然(~したところ)
(ⅲ)必然(~するといつも)

ここでは①の仮定。
自害名詞
格助詞
動詞サ行変格活用動詞「す」の未然形
んずれ助動詞意志の助動詞「むず」の已然形。
助動詞「むず」は、その力強い語感から武士が好んだとされている。
接続助詞
もし人(敵)に殺されそうになるならば自害をするつもりのため、

木曽殿の最後のいくさに、女を具せられたりけり

木曽殿     名詞     源義仲のこと。ここは特定の人物のセリフではなく、木曽殿が世間の人や周辺の人物が自分について語るのを想像しているシーンである。
格助詞主格用法
最後名詞「最後のいくさ」という表現から、自らが命を落とすことを覚悟していることが窺える。
格助詞
いくさ名詞
に   格助詞 
名詞
格助詞
具せ動詞サ行変格活用動詞「具す」の未然形。
漢語の「具」が動詞化した語。「備える」というもとの意味から、「一緒に行く」「連れて行く」といった意味が生じた。
られ助動詞尊敬の助動詞「らる」の連用形。
助動詞「る」・「らる」は受身、尊敬、自発、可能の四つの意味をもつ。主な意味の見分け方は次のとおり。原則⇒文脈判断の順番で自然な訳を組み立てたい。

①受身 ⇒「~に」(受身の対象)+「る」(「らる」)
②尊敬 ⇒尊敬語+「る」(「らる」)
③自発 ⇒知覚動詞(「思ふ」「しのぶ」「ながむ」等)+「る」(「らる」)
④可能 ⇒「る」(「らる」)+打消・反語

また、助動詞「る」「らる」は接続する動詞の活用の種類によって使い分けられるため、併せて覚えておきたい。
四段活用動詞、ナ行変格活用動詞、ラ行変格活用動詞の未然形は「る」が使われる。その他の動詞の未然形には「らる」が使われる。
「四段な(ナ変)ら(ラ変)る」と覚えるのも手。

ここでは世間の人から木曽殿への敬意が示される。
たり助動詞完了の助動詞「たり」の連用形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。
意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)
けり助動詞過去の助動詞「けり」の終止形。
同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。
『木曽殿が最後の戦に女をお連れになったらしい』

なんど言はれんことも、しかるべからず。」とのたまひけれども、

なんど    副助詞       例示の副助詞
言は動詞ハ行四段活用動詞「言ふ」の未然形
助動詞受身の助動詞「る」の未然形
助動詞婉曲の助動詞「む」の連体形
こと       名詞
係助詞強意の係助詞
しかる動詞ラ行変格活用動詞「しかり」の連体形。
いくら巴が勇猛であるとはいえ、木曽殿の最後のいくさに女性を連れていたと周囲の人に言われることは「(自分にとって)ふさわしくない」と言っているのだ。
べから助動詞当然の助動詞「べし」の未然形。
★重要文法
助動詞「べし」は多くの意味をもつが、以下のように判別の手掛かりになる「ルール」があるので整理しておきたい。
※必ず文脈判断を踏まえること。この「ルール」は「この意味になることが多い」程度の認識でいるべし。

【原則】
・主語が一人称⇒意志
・主語が二人称⇒適当/当然/命令
・主語が三人称⇒推量

【文脈判断等】
・下に打消を伴う⇒可能 
・下に格助詞の「と」を伴う/終止形⇒意志
・下に名詞や助詞を伴う(「~するはずの」と訳す)⇒当然/予定 ※直後に助詞が来る場合:名詞が省略されている。
・文中に疑問/反語を示す語を伴う⇒推量/可能
助動詞打消の助動詞「ず」の終止形
格助詞
のたまひ動詞ハ行四段活用動詞「のたまふ」の連用形。
「言ふ」の尊敬語であり、ここでは作者から木曽殿に対する敬意。
けれ助動詞過去の助動詞「けり」の已然形
ども接続助詞逆接の接続助詞。已然形接続ということも押さえておきたい。

などと言われるようなことも、ふさわしくない。」とおっしゃったが、

今回はここまで🐸

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