枕草子『春はあけぼの』品詞分解/現代語訳/解説③

枕草子『春はあけぼの』品詞分解/現代語訳/解説③

はじめに

こんにちは!こくご部です。

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今回は枕草子『春はあけぼの』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説も記しておきます。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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冬はつとめて。雪の降りたるは、言ふべきにもあらず。

冬   名詞     前回、前々回の記事に引き続き、ここでは作者が「素敵だ」と思っていることを列挙している。ここまで春、夏、秋についての箇所を見てきた。               
係助詞
つとめて名詞「早朝」、「翌朝」といった意味を持つ語。
ここでは前者の意味で使われる。
名詞
格助詞主格用法
降り動詞ラ行四段活用動詞「降る」の連用形
たる接続助詞存続の助動詞「たり」の連体形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。
意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)
係助詞
言ふ       動詞      ハ行四段活用動詞「言ふ」の終止形
べき助動詞当然の助動詞「べし」の連体形
★重要文法
助動詞「べし」は多くの意味をもつが、以下のように判別の手掛かりになる「ルール」があるので整理しておきたい。
※必ず文脈判断を踏まえること。この「ルール」は「この意味になることが多い」程度の認識でいるべし。

【原則】
・主語が一人称⇒意志
・主語が二人称⇒適当/当然/命令
・主語が三人称⇒推量

【文脈判断等】
・下に打消を伴う⇒可能 
・下に格助詞の「と」を伴う/終止形⇒意志
・下に名詞や助詞を伴う(「~するはずの」と訳す)⇒当然/予定 ※直後に助詞が来る場合:名詞が省略されている。
・文中に疑問/反語を示す語を伴う⇒推量/可能
助動詞断定の助動詞「なり」の連用形
も               係助詞             強意の係助詞
あら動詞ラ行変格活用動詞「あり」が補助動詞として使われている。
「あり」本来の意味である「存在する」という意味ではなく、「~の状態である」という意味で使われていることに注意する。
助動詞打消の助動詞「ず」の終止形
冬は早朝(がよい)。雪が降っているのは、言うまでもない。

霜のいと白きも、また、さらでもいと寒きに、

霜      名詞      読みは「しも」。
格助詞主格用法
いと副詞「たいそう」、「非常に」という訳を当て、程度が甚だしいことを示す。「めっちゃ」と脳内変換してもOK。
白き形容詞ク活用の形容詞「白し」の連体形
係助詞強意の係助詞
また接続詞
さら動詞ラ行変格活用動詞「さり」の未然形。
「さり」+接続助詞「で」+係助詞「も」で連語として使われ、「そうでなくても」という意味を持つ。
接続助詞打消接続。
未然形に接続することに注意。
係助詞
いと副詞
寒き形容詞ク活用の形容詞「寒し」の連体形。
連体形であることからも分かるように、直後に名詞を補うと解釈しやすい。
格助詞
霜がたいそう白いのも、またそうでなくてもたいそう寒い時(朝)に、

火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。

火     名詞     
など副助詞婉曲の副助詞
急ぎ動詞ガ行四段活用動詞「急ぐ」の連用形
おこし動詞サ行四段活用動詞「おこす」の連用形
接続助詞
名詞
持て渡る動詞ラ行四段活用動詞「持て渡る」の連体形。
「渡る」は、ここでは「行く」という意味で使われる。
係助詞   
いと副詞
つきづきし形容詞シク活用の形容詞「つきづきし」の終止形。
「似つかわしい、ふさわしい」という意味を持つ語。

現代では炭ではなくストーブやヒーターであろうが、寒い冬を経験したことのある人にはよく分かるのではないだろうか。時代を超越した共感や普遍的な価値観に触れるのも、古文の魅力の一つである。
火のようなものを急いでおこして、炭を持って行くのもたいそう似つかわしい。

昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、

昼      名詞       
格助詞
なり動詞ラ行四段活用動詞「なる」の連用形
接続助詞
ぬるく形容詞ク活用の形容詞「ぬるし」の連用形。
漢字をあてると「温し」であるとおり、ここでは「(なま)あたたかい」の意味で使われる。
ゆるびもていけ動詞カ行四段活用動詞「ゆるびもていく」の已然形。
「ゆるび」はバ行四段活用動詞「ゆるぶ」の連用形であり、ここでは「(寒さが)やわらぐ」の意味で使われる。
接続助詞★重要文法
接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。
①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない)
⇒仮定(もし~ならば)
②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている)

(ⅰ)原因・理由(~なので)
(ⅱ)偶然(~したところ)
(ⅲ)必然(~するといつも)

ここでは偶然で取ると自然か。
昼になって、なまあたたかく寒さがやわらいでいくと、

火桶の火も白き灰がちになりて、わろし。

火桶     名詞     読みは「ひおけ」。木で作られた火鉢のこと。
格助詞
名詞
係助詞   
白き形容詞ク活用の形容詞「白し」の連体形
灰がちに 形容動詞ナリ活用の形容動詞「灰がちなり」の連用形
なり動詞ラ行四段活用動詞「なる」の連用形
接続助詞
わろし形容詞ク活用の形容詞「わろし」の終止形。
★重要単語
①積極的肯定の「よし」
②まあまあ良い・悪くないの「よろし」
③まあまあ悪い・良くないの「わろし」
④積極的否定の「あし」
の価値基準は押さえておきたい。

ここまで、作者はプラスの価値を示す形容詞を用いて、自分が良いと思う物事について語ってきたが、一転してここではマイナスの価値を示す「わろし」を用いている。この温度差もおもしろいポイントである。
火桶の火も白く灰が目立つようになって、みっともない。

今回はここまで🐸

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