【解答解説】近畿大学2021公募推薦(11月20日)国語大問2(古文)法学部/経営学部

【解答解説】近畿大学2021公募推薦(11月20日)国語大問2(古文)法学部/経営学部

こんにちは!こくご部です。

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はじめに

今回は近畿大学2021公募推薦(11月20日)国語大問2(古文)法学部/経営学部の解答例及び解説を掲載します。

日本で一番志願者が多い近畿大学!とにかく情報処理能力が求められます。

志望している人は早期の対策をおすすめします🐸

なお、著作権の関係から、 当ブログ作成の現代語訳及び解答解説のみを掲載し、設問は掲載していませんのでご了承ください。


それでは行ってみましょう🔥

⇓同じ年の他の問題(現代文)はこちらから


出典について

まずは出典の『日本永代蔵』について触れておきましょう。

出典『日本永代蔵』

★ジャンル
 浮世草子:江戸時代の庶民文学。
上方を中心として隆盛。
※西鶴が生きていた時代には「仮名草子」と呼ばれていた。

★作者について
 作者は伊原西鶴(1642~1693)。西山宗因の弟子として俳人として世に出た後、宗因の死後は浮世草子作家に転身。西鶴の著した作品は①町人物、②好色物、③武家物、④雑話物に大別される。

その他
 『日本永代蔵』は金銭や物品などを第一とする町人にスポットを当てた作品。他の作品も含め、人間の本質を突いている作品と言え、現代に生きる私たちも共感できる部分が少なくない。




本文・現代語訳『日本永代蔵』巻三の三

本文 現代語訳『日本永代蔵』巻三の三

利といふ物つもれば大分なり。

質屋の利息というものは積み重なれば大きなものである。

この菊屋、四、五年に銀二貫目あまり仕出し、

この菊屋は4、5年で銀2貫目ほど稼ぎ、

なほひすらく人に情を知らず、足もとなる高泉和尚の寺にまゐらず、

さらにずるがしこく人情もなく、身近にある高泉和尚の寺に参らず、

祭にも五香の宮に参詣せず、神仏の願ひ、いかないかな思ひ出しもせざる男、

祭りにも五香宮に参詣せず、神仏の願いはどうしてもどうしても思い出しもしない(=思いつきもしない)男である。

遠い初瀬の観音を信心し、俄にあゆみを運ぶを、

(しかし)遠く離れた初瀬の観音を信仰し、突然通い出したが、

人の気もあのごとくかはる物かと、世間にてこれ沙汰ぞかし。

「人間の気もあのように変わるものか」と、世間で噂になっていたことよ。

この寺の御開帳、七日を、古代より判金一枚づつに極めおかれしを、菊屋、二貫目の身代にて三度まで開帳すれば、

この寺の御開帳(篤信者に厨子の戸帳を開いて中の秘仏を拝観させること)は七日で昔から判金(十両の大判)1枚ずつと定められていたが、菊屋は2貫目の身代で三度まで開帳したところ、

本願坊をはじめ、一山に名を聞き伝へ、またもなき後生願ひ、

本願坊をはじめとして、全山・僧に名が広まり、「またとない極楽往生を願う人物で、

古今に三度まで一人しての開帳なき事申し侍る。

これまで三度も一人で開帳したことはない」と(人々/僧たち)は申します。

ある時、心をつけて戸帳を見しに、

ある時、注意して戸帳(厨子の仏前に垂れ下がったとばり)を見たとき、

かけまくも長竿にして、一端つづきの十端ならびを、用捨もなくあげおろしに、半ことの外毀ね見ぐるしかりき。

恐れ多くも長竿で掛け巻いて、一反ずつを十反につなげた戸帳を、容赦もなく上げ下ろしをしたので、半分は思いのほか傷ついていて見苦しかった。

とりわけ菊屋申せしは、「我たびたび開帳せしに、

とりわけ菊屋が申し上げたことには、「私が何度も開帳し、

戸帳かく切れ損じけるを、寄進に新しく掛けかへん」といふ。

戸帳がこのように切れ損じていた(のを発見した)ので、寄進(社寺に財物を寄付すること)で新しいものにかけ替えよう」と言った。

僧中これをよろこび、都より金襴とりよせあらためける。

僧たちはこれを喜び、都から金襴を取り寄せて新しくした。

そののち菊屋申すは、「このふるき戸帳を申しうけ、 京の三十三所観音へかけたき」

その後菊屋が申し上げたことには、「この古い戸帳を申し受け(いただいて)、京都の三十三所観音のところにかけたい」

と言へば、「安き事」 とてつかはしけるを、残らず取りてかへる。

と言ったところ、「たやすいことだ」と言って与えたので、残らず受け取って帰った。

この唐織、申すもおろか、時代渡りの柿地の小釣、浅黄地の花兎、 紺地の雲鳳、その外も模様かはりぬ。

この唐織は、申し上げるまでもない、古渡り(古くに外国から渡って来た)の柿色の地に小さな蔓草、(金襴の模様の種類。)浅黄色の地に花とうさぎ、紺色の地に雲と鳳凰など、その他にも様々な模様があった。

これみな大事の茶入の袋、表具切に売りける程に、

これをみな、大切な茶入れの袋、表具切(掛物の表装用の切れ)として売ったところ、

大分の金銀とりて家栄え、五百貫目と脇から指図違ひなし。

大量の金銀を設けて家が栄え、五百貫目と周囲の推定は誤っていない。

観音信仰にはあらず、これをすべき手だて、

(これは)観音信仰ではなく、これ(私腹を肥やすこと)をする手段である。

さてもすかぬ男、一度は思ふままなりしが、元来筋なき分限、

なんとも好ましくない(この)男は、一度は思うままになったが、元来道理に合わない身であったため、

昔より浅ましくほろびて、後には、京橋に出て下り舟にたより、

昔よりも浅ましく落ちぶれ、後には京橋に出て下り船を当てにして、

請売の焼酎・諸白、あまいも辛いも人は酔はされぬ世や。

焼酎・諸白(清酒)を小売りすることとなった。(その男が提供する酒が)甘くても辛くても、世間の人々は酔わされない(騙されない)世の中であることよ。


問1 内容説明問題

問1:2

傍線部について、何を「思ひ出しもせざる」のかを選ぶ問題。

ここでは単純に直前の「神仏の願ひ」を受けると考えて問題ない。よって正解は2。

 

近畿大学の問題は情報の取捨選択と、その処理速度が無いと対応が難しい。選択肢を吟味して確からしい判断をすることは言うまでもなく重要であるが、明らかな正解が分かる場合はどんどん先に進んで行くのが望ましい


問2 内容説明問題

問2:1

傍線部について、何が評判になったのかを説明する問題。
傍線部の訳ができなかったとしても、設問に「何が評判になったのか」とあることから、世間の人々が噂している内容を押さえることができれば即座に解答を選ぶことができる。

ここでも問1と同様に、直前の「人の気もあのごとくかはる物か」を受けていることを押さえれば難なく解答できる。

深読みせずにどんどん処理していきたい。


問3 理由説明問題

問3:3

傍線部について理由を説明する問題。

傍線部では「これまでに一人で三度も開帳したものはいなかった」という内容が書かれていることから、その根拠にあたる箇所を探して解答する。

本問でも傍線部の前に「この寺の御開帳~極めおかれしを」とあることから、開帳は無償で行うことができるものではなく、大金をはたいてようやく行えるものであることが分かる。よって正答は3。

なお、現代でも駐車場などで「月極」といった例があり、これは「つきぎめ」と読む。読みから想像できるかもしれないが、「きめ(る)」と読む際の意味は「決める」であり、「極める」ではない。
本文では「判金一枚づつに極めおかれし」とあり、読みが書かれていないが、意味が分からない場合は自分で読みを当ててそこから類推するのも一つの手段


問4 理由説明問題

問4:4

傍線部について理由を説明する問題。
このあたりから訳出が難しい部分が出てくるが、脚注と照らし合わせていけば問題ない。

まずは状況を整理することを心がけてほしい。ここで何を「あげおろし」ているのかと言えば「戸帳」であり、その動作を行った理由は傍線部の後の会話「我たびたび~新しく掛けかへん」「このふるき戸帳を申しうけ」や菊屋の行動から読み取ることができる。

 

つまり、戸帳を自らの物にするために「あげおろし」ていたのであるから、4が正解。

1は選択肢全体が本文の内容とズレている。ただ古くなったのではなく、男が傷つけたのである。

2も選択肢全体が本文の内容とズレており、本文に根拠がない。

3は「いち早く~欲が表れた」が不適。本文の内容とズレている。

 

なお、「用捨」は読みから判断できるように、「容赦」と読み換えて問題ない。


問5 内容説明問題

問5:1

傍線部について内容を説明する問題。

指示語の「これ」の内容を説明するものであるから、原則は「直前の内容」を押さえる
「これ」の直前を確認すると「寄進に新しく掛けかへん」という菊屋の言葉があるため、この内容を押さえている選択肢を選ぶ。正解は1。

2は選択肢全体が本文の内容とズレており不適。

3は「買いたい」「強く」が不適。前者は本文の内容とズレており、後者は本文に根拠がない。

4は「取り換え時期を早めたこと」が不適。取り換え時期について言及しておらず(そもそも換える予定があったがどうかも判断できない)、本文に根拠がない。

 

また、「僧中これをよろこび」となっていることから(表面上は)プラスの内容であることにも注意したい。


問6 内容説明問題

問6:3

傍線部について内容を説明する問題。

本問は少し難しく感じた受験生も少なくないかもしれないが、これも傍線部直前の内容から判断すれば選択肢は絞り込める。

傍線部直前には「大分の金銀とりて家栄え、五百貫目」とあり、この「と」に注目できればこの文章が会話や発話の内容であると判断できる

「指図」の意味を載せている単語帳は無いに等しいので、ここは類推するしかないが、まず現代の「指図」と同様の意味で使われている選択肢4を検討する。

4は「指示通り行えば栄えるに違いない」とあるが、菊屋はすでに唐織を売り払っているため不適。

残りの1、2は菊屋が誰かから指示を受けたり横やりを受けているわけではないことから選択肢を切れる。最後に残った3を文脈と照らし合わせて検討しても問題はない。


問7 内容説明問題

問7:2

本問も指示語の「これ」の内容を押さえる必要があるが、直前の「観音信仰にはあらず」も押さえておきたい。この時点で選択肢1「信仰のお膳立て」3「観音のお告げによる行動」を削ることができる。

「手だて」から2の「手段」がドンピシャであるが、直前の「金儲け」も文脈に合っていることからこちらが正解。

なお、4はどのように訳してもこのように訳出することもできず、文脈にも当てはまらないことから不適。


問8 理由説明問題

問8:1

傍線部の「人は酔はされぬ世や」の訳出が難しかったとしても、設問の「主人公がこのように評される理由は何か」を読めばこの一文が主人公を評している箇所であることが分かる

よって、本文の内容と照らし合わせて選択肢を検討するだけで正答を選ぶことができる。

2は「利息を要求したから」が設問とズレている。

3は「人の新人につけこむような行為」が本文に根拠がないため不適。

4も3と同様に、選択肢全体が本文に根拠がないため不適。


問9 内容説明問題

問9:4

まとめにあたる最後の文章についての設問であり、本文の内容と関連しているかどうかを判断するだけで選択肢を削ることができる。

1は選択肢全体が本文に根拠がないため不適。

2は「信仰心に基づかない商売は」が不適。後半部が主人公の末路と合致していることから、一見正しそうに見えるが、この選択肢は裏を返せば「信仰心に基づく商売は客を冷めさせることはない」ということになる。これは本文から読み取ることはできないため、不適。

3は選択肢全体が本文の内容とズレている。「酸いも甘いもかみ分け」た商売人であれば、主人公はこのような末路をたどることはなかったであろう。


今回はここまで🐸

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