【解答解説】関西大学2020(学部個別2月7日)古文/『八重葎』

【解答解説】関西大学2020(学部個別2月7日)古文/『八重葎』

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はじめに

今回は関西大学2020(学部個別2月7日)古文の解答例及び解説を掲載します。

なお、著作権の関係から、 当ブログ作成の現代語訳と解答解説のみを掲載し
設問は掲載していませんのでご了承ください。

また、品詞分解は別の機会に譲ろうと思いますのでしばしお待ちください!

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【解答解説】関西大学2020(学部個別2月7日)現代文


それでは行ってみましょう🔥


本文・現代語訳『八重葎』

本文 現代語訳『八重葎』

★下線部は解答の根拠となる箇所

長月二十日のほどに、例の中務の宮へおはしましければ、宮は壺前栽の紅葉のいとをかしき夕映えを見させたまふほどなりけり。

九月二十日ごろ、いつもの(ように)(中納言の君は)中務の宮へいらっしゃったところ、宮は壺前栽の紅葉が非常に風流に夕映えしている様子を見ていらっしゃるころであった。

御消息聞こえたまへば、「こなたに」とて、御しとね引きつくろひて、御対面あり。

ご挨拶を申しなさると、「こちらに」と、御しとねを整えて、お会いになる。

かたみにをかしき御さまかたちを、御前の人もめでたくぞ見ん。「秋も残りなうこそなりゆくめれ。

互いに麗しいご容姿を、御前に控えている人たちもすばらしいと見ないではいられまい。(中務の宮は中納言に)「秋も残り少なくなってゆくようだ。

小倉の紅葉いかに染めまさん。この頃のほどに思ひ立ちたまひね。頭の中将、右衛門の督なども、『ものせん』とこそ言ひしか」と、聞こえさせたまふ。

小倉山の紅葉がどんなに色づきまさっていることでしょう。近いうちに紅葉狩りに出かけるお気持ちになってください。頭の中将や右衛門の督なども、『出かけましょう』と言っておりました」と申し上げなさる。

「しかよく侍らん。されど小倉と言はん山の紅葉ははかばかしき色にも侍らざらん。木立などなつかしう、きはことなるは、この御覧ぜらるるにますことは候ふまじくや」と、

(中納言は)「それはようございましょう。しかしながら小倉という山の紅葉は、「小暗」というほどですから、しっかりした色合いでもございませんでしょう。木立など親しみをおぼえるきわだつ美しさとなると、今御覧になっている庭の紅葉にまさっていることはございますまい」と、

めでたまへば、「『名にはさはらぬ』とこそ言ひためれ」などのたまひて、さるべき御くだものども参りて、

お褒めになると、「『名にはさはらぬ』と言うではないか。など(宮は)おっしゃって、時節にふさわしい果物をいろいろお勧めされて、

暮れぬれば、帰りたまふとて、「山へは明日ものせさせたまひなむや。随身にてを侍らん」とのたまへば、

(やがて)日が暮れたので、お帰りになるとして、(中納言の君が)「(小倉)山へは明日お出かけになられませんか。随身になってお供いたします」と、おっしゃると、

「つとめてより誘ひたまへ。されどいな、ことごとしき随身はむつかしからむ」とほほゑみきこえたまふ。

宮は)「朝早くからお誘いください。しかしながら、随身のほうは結構です。ものものしい随身はうっとうしいでしょうから」と、ほほえみながらいお返事なさった。

君は帰りたまひて、御乳母の子のあきのぶを召して、

中納言の君はお帰りになって、乳母子のあきのぶをお呼びになって、

「明日の御まうけ、をかしきさまに大堰のわたりに待ちきこえよ。主には左衛門の督をこそ頼みきこえめ」とて、

「明日のおもてなしの準備は趣向を凝らして、大堰川のあたりでお待ちするようにせよ。饗応の接待役には、左衛門の督をお頼みするのがよかろう」と、おっしゃって、

あるべきことどものたまひつけて、またの日のつとめて、宮へ参りたまふ。

配慮すべきことをあれこれとお命じになって、翌日の早朝、中務の宮のもとへ参上なさる。

御車ども引き続けて、競ひおはす。御供の人も若きかぎりは、後れじと走りののしれど、さるはいと騒がしうとて、さるべきばかりこれかれ候はせたまふ。

御車を何台も連ねて、先を争っておいでになる。お供の人も、若い者はみな、とり残されてはなるまいと大声をあげて騒ぎ立てているが、たくさん引き連れてということになればうるさいだろうと、適切と思われる者だけ、誰彼とお連れになる。

山におはしまし着きて見たまへば、思しやりけるもしるく、染めましける紅葉のいろいろは錦暗う見ゆ。

小倉山にお着きになって御覧になると、お思いになっていたよりも、はっきりと色づいた紅葉の様子は、色彩豊かではあるが暗く見える。

下枝を折りて、中将の君、青海波を気色ばかり舞ひたる、いとおもしろし。「光源氏と聞こえしいにしへの挿頭もかばかりにこそ」と皆めでさせたまふ。

紅葉の下枝を折って、中将の君が青海波を形ばかりに舞ったのが、非常に風情があった。

「光源氏と評判になった人が、昔の、簪もこのようだったのであろう」と、皆で褒めなさる。

「いとまばゆき御よそへになん。その立ち並びたりけん深山木のかげだに侍らじを」と笑ひたまふ。

「非常にお恥ずかしいお例えでございます。光源氏と立ち並んだという深山木(頭の中将)の姿にさえ及びませんのに」と、笑いなさる。

時雨さとして、露ほろほろと乱るるほど、 いとど艶なり。 督の君、

時雨がさっと降って、露がほろほろと乱れ落ちてくる間、なおいっそう優美な風情である。

右衛門の督が、

訪ね来し君がためとや紅の色を染めます時雨なるらむ

訪ねてきた君のためでございましょうか。紅葉の紅の色をいっそう染める時雨でしょう

と聞こえたまへば、宮、

散らぬ間はここに千歳もをぐら山見で過ぎかたき峰のもみぢ葉

と興ぜさせたまふ。

と、申しあげると、中務の宮が、

紅葉の散らない間は、ここで千年を過ごしたいほどだ。小倉山の峰の紅葉は見ずに済ませることなどできないほど美しい。

と、興じられる。

「名のみして山はをぐらもなかりけりなべて草木の紅葉しつれば

思うたまへしには、こよなうかはりたる山のけしきにこそ」と聞こえたまふ。

(中納言の君は中務の宮に)「小倉山とは名前ばかりで、暗いなんてことはありませんでした。草木という草木がすべて紅葉したのですから。それほど美しいものではなかろうと思っておりましたが、予想に反してすばらしい山の風情ですね」と、申し上げなさる。

頭の君、

ふる里はいづくなるらんをぐら山紅葉の錦たち重ねけり

頭の中将は、

(私の)ふるさとはどちらでしょうか。小倉山の紅葉が錦が重なって(分からなくなってしまった)。

嵯峨野もはるばると見わたされて、霧の絶え間のをみなへしなどは、絵に描きたらんにも劣るまじき花の盛りを、「秋風の吹く」など、誰に語らむとをかし。

嵯峨野も遠くまで見わたすことができて、霧の絶え間にある女郎花などは、絵に描いたようなものにも劣らない花盛りであり、「秋風が吹く」などと、誰に語ろうかと趣深い。

こなたかなた行きおはすに、大堰のわたりより少しひきのけて、軟障引きまはし、萩の枝など引き結びて、そらだきものいと艶に薫りて、さすがに人繁くは見えず。

あちらこちらと行っていらっしゃるうちに、大堰川のあたりから少し離れて、垂れ布を使った仕切りを張りめぐらし、萩の枝などを引き結んで、空薫の香りも非常に優美に漂っているが、そうはいっても人影が多くは見えない。

「いかなる者の秋を惜しむならん。この御気配も、忍びたまふとも、さりとも聞きたらんに、便なきさまかな。上達部・上人などにはよも候ふまじ。

「どのような者が、秋を惜しんでいるのであろう。中務の宮さまがおいでのこちらの様子も、忍んでおられるとはいえ、いくらなんでも耳にしているだろうに、けしからぬありさまではないか。上達部、殿上人などでは、よもやございますまい。

ただあやしの痴者のおのが徳あるままに、かくはふるまふに侍らん。なかなかさやうの者は、はばかりたてまつるべきこととも思ひたらじ」

ただ身分の低い無礼者が、自分の財にまかせて、このように振る舞っているのでございましょう。かえってそういう者は、遠慮すべきことともわかっていないのでしょう」

など中納言の君聞こえ居たまふに、左衛門の君、桔梗の直衣・二藍の指貫ゆゑづきをかしきさまして立ち出でたまひて、

などと、中納言の君が申し上げなさるところに、左衛門の君が、桔梗の直衣・二藍の指貫で、奥ゆかしく風情のある様子で出て来られて、

「渚清くは」と、御気色たまはりたまふ。さるはさま変へたる岸のわたりなりけり。

「渚が美しいとお思いだったら」と、ご機嫌をおうかがいになる。そうはいっても、趣を異にした岸の辺なのであった。

宮を始めたてまつりてあるかぎり笑ひたまひて、「痴者はこれな」とて袖を引きしろふ。

宮をはじめ、その場にいた人たちはみなどっとお笑いになって、「無礼者はこれだったか」と袖を引っぱりあう。

中納言のつきづきしく言ひためること、語らせたまへば、この君(左衛門の督)もいみじく笑ひたまふ。

中納言がもっともらしく巧みに語ったことを、中務の宮がお話しになると、左衛門の君も大いにお笑いになる。

「今日の御まうけのため、中納言の君ののたまひつけたりしかば、いかでをかしからんことをと思うたまへしかど、をれ者の心の掟てはひがひがしくなん」とかしこまりきこえたまふ。

「今日のおもてなしの準備のために、中納言の君がご指示なさったので、なんとか風流な計画をと考えましたが、愚鈍な者の了見では、さぞ見苦しかろうと存じます」と、恐縮なさる。

はかなう世の常ならずしないたまふめれば、をかしがりたまひて、紅葉を焚かせて大御酒まゐる。

なんということではないが、並一通りのものではない趣向が凝ららされていると見てとれるので、宮は風流にお思いになって、紅葉を焚かせてお酒を暖めて召し上がる。

御供に候ふ博士召し出でて、苔の緑をはらふ人もありけり。琴弾き鳴らし笛吹きあはせて、「伊勢の海」など歌ふ。

お供に仕える博士を召し出して、苔の緑を払う人もいる。琴を弾き鳴らし、笛を吹きあわせて、「伊勢の海」などを歌う。

鹿も劣らじと思ひ顔に、あはれに鳴き添へたるほど、言はんかたなくおもしろし。御盃たまはすとて、

鹿も負けまいと思うかの様子で、悲しい鳴き声を添える様子は、形容できないほど風流である。宮は御盃をお与えになろうとして、

ながむればまた惜しまれて秋霧の立ちわかるべき心地こそせね

景色を眺めているといっそう名残借しく、秋霧のように立ち去り、この地に別れを告げる気になれない

と、めでさせたまふ。御さまめでたく、宮と聞こえさせんにことあひぬべし。

と、愛でなさる。そのご様子は立派で、宮と申しあげるのに、いかにもふさわしい。

「『散らぬ間は』と聞こえさせたまひし山のため、うしろめたう」とたはぶれつつ、御かはらけ取りたまうて、中納言の君、

「『紅葉が散らない間は小倉山で千年も過ごしたい』とお詠みになり、今度はこの大堰川を立ち去って帰る気にはとうていなれないなどと口になさるのは、小倉山のために気が咎めませんか」などと、冗談を言いつつ、御盃を取りなさって、中納言の君は、

いづくとかわきて定めん世の中の色香に移る人の心は

どちらがと、はっきり決められましょうか。世の中の色香に迷う人の心には。

あまたたびめぐりて、有明の月高くのぼるほどに、御車に奉る。

何度も何度も酒盃がまわって、有明の月が高く昇った夜明け頃、お帰りの車にお乗りになる。

若き人、帰さの道に行き隠るべき心設けにや、別れ別れに帰るもただなるよりはをかし。中納言殿ばかりぞ宮まで候ひたまひて、まかでたまふ。

若い人たちは、帰り道途中で姿を隠そうという魂胆があってか、それぞれに別れて帰るというのも、車を連ねてなにごともなく帰るよりは気の利いた風情である。中納言殿だけが、中務の宮邸までお供なさってから、おいとまなさる。

 


問1

問1:d

a 「どのくらい色づいてきているのでしょうか」「最近は~なりませんか」が不適。

b 「最近は~なりませんか」「頭の中将~言っておきました」が不適。

c 「どのくらい色づいてきているのでしょうか」が不適。

e 「にも行きませんかと言っておきました」が不適。


問2

問2:e

a 「ですが」「まさっていることでしょう」が不適。

b 「はっきりしない」「それでも」が不適。

c 「昔が思い出されて」が不適。

d 「はっきりしない」「ですが」「昔が思い出されて」「まさっていることでしょう」が不適。


問3

問3:a

b 「仕事が終わってからお誘いください」が不適。

c 「難しい」が不適。

d 「仕事が終わってからお誘いください」「お願いします」「難しい」が不適。

e 「お願いします」が不適。


問4

問4:b

a 「頼もしいであろう」が不適。

c 「褒美は素晴らしいものになるので」「報告せよ」「頼もしいであろう」が不適。

d 「頼もしいであろう」が不適。

e 「褒美は素晴らしいものになるので」「報告せよ」が不適。


問5

問5:c

a 「だけ」「言い争っている」「そばにひかえさせなさる」が不適。

b 「美を競って」「だけ」が不適。

d 「美を競って」「そばにひかえさせなさる」が不適。

e 「美を競って」「言い争っている」が不適。


問6

問6:c

a 「きっと美しい紅葉だろう」「すこし変わった色合いですが」が不適。

b 「通り」が不適。

d 「通り」「きっと美しい紅葉だろう」「すこし変わった色合いですが」が不適。

e 「きっと美しい紅葉だろう」「すこし変わった色合いですが」が不適。


問7

問7:c

a 「そちらの気配を我慢しておられる」「思い知らせる方法もないものか」「世にのさばっている」が不適。

b 「思い知らせる方法もないものか」「自由気ままに」が不適。

d 「そちらの気配を我慢しておられる」「世にのさばっている」が不適。

e 「世にのさばっている」が不適。


問8

問8:e

a 「笑っていただけるように」が不適。

b 「最初に笑い始め」「田舎びている」が不適。

c 「笑っていただけるように」「田舎びている」が不適。

d 「最初に笑い始め」「つぎからつぎへ」「田舎びている」が不適。

問9

問9:b

a 「帰ってしまいたい」「気がかりなのですね」が不適。

c 「過ごすなどありえない」が不適。

d 「過ごすなどありえない」「帰ってしまいたい」「気がかりなのですね」が不適。

e 「過ごすなどありえない」「帰ってしまいたい」が不適。

問10

問10:a

b 「月が隠れてしまうのを一人で惜しみたいのか」が不適。

c 「真夜中頃」が不適。

d 「連れ立って帰る」「お出かけになる」が不適。

e 「月が隠れてしまうのを一人で惜しみたいのか」「連れ立って帰る」「お出かけになる」不適。

※「連れ立って帰る」は「ただなる」にあたる部分がないため不適。


今回はここまで🐸

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