更級日記『源氏の五十余巻』品詞分解/現代語訳/解説④

更級日記『源氏の五十余巻』品詞分解/現代語訳/解説④

はじめに

こんにちは!こくご部です。

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今回は更級日記から『源氏の五十余巻』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説も記しておきます。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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「法華経五の巻をとく習へ。」と言ふと見れど、

法華経名詞読みは「ほけきやう」。主語は先に見える「いと清げなる僧の、黄なる地の袈裟着たる」である。
名詞
格助詞
巻     名詞
格助詞
とく形容詞ク活用の形容詞「とし」の連用形。
副詞と見てもよい。
習へ動詞ハ行四段活用動詞「習ふ」の命令形
格助詞    
言ふ   動詞ハ行四段活用「言ふ」の終止形
格助詞
見れ動詞マ行上一段活用動詞「見る」の已然形。
上一段動詞は基本的には10語のみと数に限りがあるため、頭文字を取って「ひいきにみゐる」で確実に暗記しておくこと。
接続助詞    逆接の確定条件を示す。
現代でも「待てど暮らせど」などの形で残っている。接続は已然形。
「法華経の五の巻を早く習え。」と言う夢を見たが、


人にも語らず、習はむとも思ひかけず。

名詞    
格助詞
係助詞
語ら動詞ラ行四段活用動詞「語る」の未然形
助動詞打消の助動詞「ず」の連用形
習は動詞ハ行四段活用動詞「習ふ」の未然形
助動詞意志の助動詞「む」の終止形。

助動詞「む」は多くの意味をもつが、以下のように判別の手掛かりになる「ルール」があるので整理しておきたい。
※必ず文脈判断を踏まえること。この「ルール」は「この意味になることが多い」程度の認識でいること。
【原則】
助動詞「む」が文末にある場合
・主語が一人称⇒意志
・主語が二人称⇒適当/当然/命令
・主語が三人称⇒推量
助動詞「む」が文中に連体形で出てきた場合
・「む(連体形)」+「は」、「に」、「には」、体言⇒仮定
・「む(連体)」+体言⇒婉曲
※婉曲は助動詞「む」を訳出しなくても文意が通じる場合。
格助詞
係助詞
思ひかけ動詞カ行下二段活用動詞「思ひかく」の未然形
形容詞打消の助動詞「ず」の終止形
他の人にも話さず、(法華経の五の巻を)習おうとも思わない。

物語のことをのみ心にしめて、「われはこのごろわろきぞかし。

物語名詞  
格助詞
こと名詞
格助詞
のみ副助詞限定の用法。この少女(作者)は物語で頭がいっぱいになっている状態である。
名詞
格助詞ア行下二段活用「得」の未然形
しめ動詞マ行下二段活用動詞「しむ」の連用形
接続助詞
われ代名詞自分。以下は作者のセリフである。かわいい。
格助詞
このごろ 名詞最近。近頃。
わろき形容詞ク活用の形容詞「わろし」の連用形

①積極的肯定の「よし」
②まあまあ良い・悪くないの「よろし」
③まあまあ悪い・良くないの「わろし」
④積極的否定の「あし」
の価値基準は押さえておきたい。
係助詞強意
かし終助詞念押し
物語のことだけを心に占めて、「私は今は見た目も良くないわよね。


盛りにならば、容貌も限りなくよく、髪もいみじく長くなりなむ。

盛り名詞女盛り。
振り返って見ると「幼い頃に想像していた今の自分はもっと大人でかっこ良くて…」と皆が思うのかもしれない。
格助詞
なら動詞ラ行四段活用動詞「なる」の未然形。
助動詞「なり」ではないことに注意。
接続助詞接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。
①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない)
⇒仮定(もし~ならば)
②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている)

(ⅰ)原因・理由(~なので)
(ⅱ)偶然(~したところ)
(ⅲ)必然(~するといつも)

ここでは未然形+「ば」であり、仮定条件である。
容貌名詞★重要単語
「かたち」と読み、「顔立ち」や「容貌」を示す。
「すがた」が衣服を含めた身体全体を指すのに対し、「かたち」はまさに顔の造形について指す。
係助詞  
限りなく  形容詞ク活用の形容詞「限りなし」の連用形
よく形容詞ク活用の形容詞「よし」の連用形
名詞当時は長く、黒い髪は女性の美の象徴とされた。
係助詞
いみじく形容詞シク活用の形容詞「いみじ」の連用形。

程度が「はなはだしい」のほか、「すばらしい」「ひどい」の意味を持つ。
現代語の「ヤバい」と同じで、プラス・マイナスの両面のニュアンスがあることを念頭に置いておきたい。

この場合は副詞的に用いており「非常に」と訳を当てると自然。
長く形容詞ク活用の形容詞「長し」の連用形
なり動詞ラ行四段活用動詞「なる」の連用形
助動詞強意の助動詞「ぬ」の未然形。
直後に「推量」や「推定」の助動詞がある場合、基本的に「完了」ではなく「強意」の意味で訳出を行うのが基本。
助動詞推量の助動詞「む」の終止形
(でも)女盛りになったら、きっと容姿もこの上なくよく、髪もきっと非常に長くなるのだろう。

光の源氏の夕顔、宇治の大将の浮舟の女君のやうにこそあらめ。」

光の源氏  名詞紫式部が著した『源氏物語』に登場する主人子の光源氏を指す。
格助詞
夕顔名詞『源氏物語』に登場する、光源氏が愛した女性の一人。数奇な運命を辿った。
宇治の大将   名詞『源氏物語」のうち、光源氏の死後を描いた「宇治十帖」の主人公。「光源氏の子」。
格助詞
浮舟名詞『源氏物語』最後のヒロイン。
格助詞 比喩
女君名詞作者の推しは上記の二人なのであった。
格助詞
やう名詞
助動詞断定の助動詞「なり」の連用形
こそ係助詞強意
あら動詞ラ行変格活用動詞「あり」の未然形
助動詞推量の助動詞「む」の已然形。ここでは係助詞「こそ」を受けて係り結びが成立している。
光源氏にとっての夕顔、宇治の大将にとっての浮舟のような女性のようになるだろう。」

と思ひける心、まづいとはかなくあさまし。

格助詞
思ひ動詞ハ行四段活用動詞「思ふ」の連用形
ける助動詞過去の助動詞「けり」の連体形
名詞
まづ副詞
いと副詞「たいそう」、「非常に」という訳を当て、程度が甚だしいことを示す。「めっちゃ」と脳内変換してもOK。
はかなく形容詞ク活用の形容詞「はかなし」の連用形。
頼りない、取るに足りないなどの意味があるが、ここでは「幼い」という意味で解釈した。
あさまし 形容詞 ク活用の形容詞「あさまし」の終止形。

「あさまし」は「驚くことだ(否定的)」「あきれたことだ」などと訳を当てる。
「驚きあきれた」と記憶しておいて問題はないが、文脈に応じて訳し分けられるようにしておきたい。
と思っていた(あの頃の私の)気持ちは、何はともあれ、非常に幼く、あきれたものであった。

今回はここまで🐸

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