平家物語『木曽の最期』品詞分解/現代語訳/解説②

平家物語『木曽の最期』品詞分解/現代語訳/解説②

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今回は平家物語の『木曽の最期』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説なども記しています。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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聞こゆる木曽の鬼葦毛といふ馬の、きはめて太うたくましいに、

聞こゆる    連体詞   冒頭部から木曽左馬頭(源義仲)の装束について語っている部分である。(前回の記事を参照。)
名高い、有名な、の意
木曽名詞現在の長野県のあたりのこと
格助詞
鬼葦毛名詞読みは「おにあしげ」。
「鬼」は接頭語。名詞の上につき、荒々しい、勇敢な、といった様子を表す。現代語の「鬼ダルい」もここから来ているのであろうか。

また、「葦毛」は馬の毛色の一つで、白い毛に青や黒などの毛が混じったもののこと。
格助詞
いふ動詞ハ行四段活用動詞「いふ」の連体形
名詞
格助詞同格の用法
きはめて副詞
太う形容詞ク活用の形容詞「太し」の連用形のウ音便
たくましい形容詞シク活用の形容詞「たくまし」の連体形のイ音便。
ここでは、後に「馬」という体言を補うとよい。
格助詞
名高い木曽の鬼葦毛という馬で、たいそう太くたくましい馬に、

黄覆輪の鞍置いてぞ乗つたりける。

黄覆輪     名詞    鞍や刀の鞘などの縁を金や金色の金属を用いて、飾ったもの。
読みは「きんぷくりん」。何となくかわいい。
格助詞
名詞読みは「くら」。馬に乗って座るために、馬や牛の背中に装着する道具を指す。
これ以降、馬具などの描写があるが、google画像検索を行うなどしてイメージを掴みやすくしておこう。
置い動詞カ行四段活用動詞「置く」の連用形のイ音便
接続助詞
係助詞強意の係助詞
乗つ動詞ラ行四段活用動詞「乗る」の連用形の促音便
たり助動詞存続の助動詞「たり」の連用形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。
意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)
ける助動詞過去の助動詞「けり」の連体形。
同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。

ここでは係助詞「ぞ」を受けて、係り結びが成立している。
黄覆輪の鞍を置いて、乗っていた。
 

鐙ふんばり立ち上がり、大音声をあげて名のりけるは、

鐙     名詞     読みは「あぶみ」。馬の横腹あたりにある、足をかける馬具。
ふんばり動詞ラ行四段活用動詞「ふんばる」の連用形
立ち上がり動詞タ行四段活用動詞「立つ」の連用形+ラ行四段活用動詞「上がる」の連用形
大音声名詞読みは「だいおんじやう」。文字通り「大きな声」の意。
格助詞
あげ動詞ガ行下二段活用動詞「あぐ」の連用形
接続助詞
名のり動詞ラ行四段活用動詞「名のる」の連用形。
「やあやあ我こそは…」という口上を耳に(目に)したことがあるかもしれないが、自身がどのような人物であるかを知らしめ、正々堂々と戦うというのが武士の作法であったとされる。
ける助動詞過去の助動詞「けり」の連体形
係助詞
鐙をふんばり立ち上がり、大声をあげて名乗ったことには、

「昔は聞きけんものを、木曽の冠者、

昔  名詞  後に見える「今」に対応する語。
係助詞
聞き動詞カ行四段活用動詞「聞く」の連用形
けん助動詞過去推量の助動詞「けむ」の連体形。
こちらも後に見える「らむ」に対応している。
ものを接続助詞逆接確定の接続助詞
木曽    名詞  
格助詞
冠者名詞読みは「くわんじや」。元服して冠を付けて一人前になった若者のこと。
また、六位で無官の人のことを指す場合もある。
「昔は聞いただろうが、木曽の一人前になった若者を、

今は見るらん、左馬頭兼伊予守、朝日の将軍源義仲ぞや。

今           名詞       先の「昔」と対応する語。
係助詞
見る動詞マ行上一段活用動詞「見る」の終止形。
上一段動詞は基本的には10語のみと数に限りがあるため、頭文字を取って「ひいきにみゐる」で確実に暗記しておくこと。
らん助動詞現在推量の助動詞「らむ」の終止形。助動詞「らむ」は終止形接続。
また、先の助動詞「けむ」と対応している語である。
左馬頭兼伊予守         名詞「左馬頭」は「さまのかみ」と読む。官馬の調教や馬具の管理などを司った役所の長官のこと。

「伊予」は現在の愛媛県のこと。
朝日名詞一説によると、「朝日の将軍」は征夷大将軍であるとされる。
格助詞
将軍名詞
源義仲名詞木曽左馬頭のこと。自身の話をしている。
終助詞念押しの終助詞
間投助詞呼びかけの間投助詞

今は見ているだろう、左馬頭兼伊予守、朝日の将軍源義仲であるよ。

今回はここまで🐸

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