源氏物語『藤壺の入内』品詞分解/現代語訳/解説⑤

源氏物語『藤壺の入内』品詞分解/現代語訳/解説⑤

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今回は源氏物語の『藤壺の入内』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

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必要に応じて解説なども記しています。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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源氏の君は、御あたり去りたまはぬを、

源氏     名詞    「源氏の君」は、ここでは「光源氏」を指す。
格助詞
名詞
係助詞
御あたり名詞「御」とついていることから、ここでは父である「桐壺帝」の側のことを指しているのだと判断する。
去り動詞ラ行四段活用動詞「去る」の連用形
たまは動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の未然形。
「たまふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。
作者から源氏の君への敬意が示される。
助動詞打消の助動詞「ず」の連体形
接続助詞
源氏の君は(父である桐壺帝の)お側をお離れにならないので、

ましてしげく渡らせたまふ御方は、え恥ぢあへたまはず。

まして     副詞    「よりいっそう」や「なおさら」などの意。何と何を比較しているのかを把握することが重要であるが、ここでは「たまに通う女性」と「足しげく通う女性」である。
しげく形容詞ク活用の形容詞「しげし」の連用形
渡ら動詞ラ行四段活用動詞「渡る」の未然形
助動詞尊敬の助動詞「す」の連用形。
作者から帝への敬意が示される。
たまふ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の已然形。
尊敬の補助動詞として使われ、作者から帝への敬意が示される。
御方名詞
係助詞
副詞★重要文法
後ろに「打消」を伴って「不可能」の意味を表す。
このようにセットで用いる副詞を「呼応(陳述)の副詞」と呼ぶ。
恥ぢ動詞ダ行上二段活用動詞「恥づ」の連用形
あへ動詞ハ行下二段活用動詞「あふ」が補助動詞として使われている。
補助動詞の「あふ」は現代語でも「慰めあう」などで用いるように、「互いに(みんなで)~する」という意味を持つ。

また、「すっかり~する、~しきる」という意味を持つ場合もあるが、この場合は下に「ず」または「なむ」を伴うことが多い。
ここでは、「すっかり~する、~しきる」の意味で使われる。
たまは動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の未然形。
尊敬の補助動詞として使われ、作者から御方への敬意が示される。
助動詞打消の助動詞「ず」の終止形
(帝が時々お通いになる方もだが、)まして頻繁に(帝が)お通いになるお方はすっかり恥ずかしがることはできない。
 

いづれの御方も、我、人に劣らむとおぼいたるやはある。

いづれ     代名詞     「どの」の意。
格助詞
御方名詞
係助詞
代名詞
名詞
格助詞
劣ら動詞ラ行四段活用動詞「劣る」の未然形
助動詞推量の助動詞「む」の終止形。
助動詞「む」は多くの意味をもつが、以下のように判別の手掛かりになる「ルール」があるので整理しておきたい。
※必ず文脈判断を踏まえること。この「ルール」は「この意味になることが多い」程度の認識でいること。

【原則】
助動詞「む」が文末にある場合
・主語が一人称⇒意志
・主語が二人称⇒適当/当然/命令
・主語が三人称⇒推量

助動詞「む」が文中に連体形で出てきた場合
・「む(連体形)」+「は」、「に」、「には」、体言⇒仮定
・「む(連体)」+体言⇒婉曲
※婉曲は助動詞「む」を訳出しなくても文意が通じる場合。
格助詞
おぼい動詞サ行四段活用動詞「おぼす」の連用形のイ音便。「思ふ」の尊敬語。

同じく「思ふ」の尊敬語として「おぼしめす」という語もあるが、より高い敬意を表すときは「おぼしめす」の方を用いる。
ここでは、作者からいづれの御方への敬意が示される。
たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。

意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)
やは係助詞反語の係助詞。
疑問・反語の係助詞「や」、強意の係助詞「は」が結びついた場合、多くは反語の意味を持つ。(疑問を強めると反語になるのは「誰が行くの?」⇒「誰が行くの!?(誰も行かないと思っている)」となる例からも想像に難くない。)
「か」+「は」の例も同じ。
ある動詞ラ行変格活用動詞「あり」の連体形。
直前の「やは」を受けて係り結びが成立している。
どのお方も、自分が、人より劣っているだろうとお思いになっているだろうか、いや、いるはずがない。

とりどりにいとめでたけれど、

とりどりに     形容動詞   ナリ活用の形容動詞「とりどりなり」の連用形。
「思い思いだ、いろいろだ、さまざまだ」という意味を持つ。
いと副詞「たいそう」、「非常に」という訳を当て、程度が甚だしいことを示す。「めっちゃ」と脳内変換してもOK。
めでたけれ形容詞ク活用の形容詞「めでたし」の已然形。
ダ行下二段活用動詞「愛(め)づ」に形容詞「甚(いた)し」が付いてできた語。
「めづ」は「愛づ」と書くとおり、対象の美しさやすばらしさ、かわいらしさに強く心をひかれることを表す。心ひかれる対象にあわせて「感嘆する」「愛する」と訳し分ける。
心惹かれる程度が「甚し」ということで、「大いに賞賛すべき様子だ」という意味が基本である。
「すばらしい」「立派だ」と訳すとよい。
接続助詞逆接の接続助詞。已然形接続ということも押さえておきたい。
さまざまでたいそう美しいが、

うち大人びたまへるに、いと若ううつくしげにて、

うち大人び         動詞       バ行上二段活用動詞「大人ぶ」の連用形。
「大人ぶ」は「一人前になる」、「大人びる」といった意味を持つ語。
「うち」は接頭語。動詞に付いて、語調を整えたり、直後に続く動詞の意味を強めたりする働きがあるので、合わせて覚えておきたい。
たまへ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の已然形。
尊敬の補助動詞として使われ、作者からいづれの御方への敬意が示される。
助動詞存続の助動詞「り」の連体形。
接続を覚えるための語呂合わせは「サ未四已(さみしい)りっちゃん」派か「サ未四已りかちゃん」派かで分かれる。
教室に「り」で始まる子がいるとその日はイジられる可能性が高い。
接続助詞
いと副詞
若う形容詞ク活用の形容詞「若し」の連用形のウ音便
うつくしげに形容動詞ナリ活用の形容動詞「うつくしげなり」の連用形。
古語の「うつくし」を目にして、最初に出てくる意味は「かわいい」であってほしい。
接続助詞

(どの女性も)大人びなさっているが、(藤壺は)たいそう若くかわいらしくて、

せちに隠れたまへど、おのづから漏り見たてまつる。

せちに      形容動詞   ナリ活用の形容動詞「せちなり」の連用形。
漢字をあてると「切なり」。
「ひたむきだ」、「すばらしい」、「痛切だ」といった意味を持つ語。
ここでは「ひたむきだ」の意味で使われる。
隠れ動詞 ラ行下二段活用動詞「隠る」の連用形。
当時、貴族階級の女性は「人前に姿を現すことがはしたないこと」とされているため、姿を隠しているのである。
たまへ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の已然形。
尊敬の補助動詞として使われ、作者から藤壺への敬意が示される。
接続助詞逆接の接続助詞
おのづから副詞
漏り動詞ラ行四段活用動詞「漏る」の連用形
動詞マ行上一段活用動詞「見る」の連用形。
上一段動詞は基本的には10語のみと数に限りがあるため、頭文字を取って「ひいきにみゐる」で確実に暗記しておくこと。
たてまつる動詞ラ行四段活用動詞「たてまつる」の終止形。
★重要単語
「奉る」は尊敬語・謙譲語両方の用法があるため、苦手とする受験生が多い。以下に整理しておくのでしっかり確認しておこう。

〇尊敬語
【本動詞】
・「食ふ」「飲む」の尊敬語「召し上がる」
・「乗る」の尊敬語「お乗りになる」
・「着る」の尊敬語「お召しになる」
〇謙譲語(謙譲語の方が目にする機会は多い!)
【本動詞】
・「与ふ」の謙譲語「差し上げる」
【補助動詞】
・「~し申し上げる」
★「補助動詞は用言や助動詞などの活用する語に付く場合である」ことを押さえておきたい。

ここでは作者から藤壺への敬意が示される。
ひたむきにお隠れになるが、(源氏の君は)自然と隙間から(藤壺を)お見かけ申し上げる。

今回はここまで🐸

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