平家物語『木曽の最期』品詞分解/現代語訳/解説⑨

平家物語『木曽の最期』品詞分解/現代語訳/解説⑨

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今回は平家物語の『木曽の最期』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説なども記しています。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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「日ごろは音にも聞きつらん、今は目にも見たまへ。

日ごろ    名詞    「普段」、「何日かの間」といった意味を持つ語。
「○○ごろ」は「年」「月」「日」の下について、長い時間の経過を表す。
ここでは「普段」の意味で使われる。
係助詞
名詞「音に聞く」「音に聞こゆ」の形で、「うわさ、評判」の意味として使われる。
「音に聞く」といえば、祐子内親王家紀伊の「音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ」という歌も押さえておきたい。百人一首に収録されている。
格助詞
係助詞
聞き動詞カ行四段活用動詞「聞く」の連用形
助動詞強意の助動詞「つ」の終止形。
★重要文法
直後に「推量」や「推定」の助動詞がある場合、基本的に「完了」ではなく「強意」の意味で訳出を行う。
らん助動詞現在推量の助動詞「らむ」の終止形。
助動詞「らむ」は終止形接続。
名詞
係助詞
名詞
格助詞
係助詞
動詞マ行上一段活用動詞「見る」の連用形。
上一段動詞は基本的には10語のみと数に限りがあるため、頭文字を取って「ひいきにみゐる」で確実に暗記しておくこと。
たまへ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の命令形。
「たまふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。
今井四郎から木曽殿への敬意が示される。
尊敬語かつ命令形という形に違和感を覚える生徒もいるかもしれないが、古文の世界ではややありふれた光景。
「普段は評判で聞いているだろう、今は目で見なさい。

木曽殿の御乳母子、今井四郎兼平、生年三十三にまかりなる。

木曽殿     名詞   木曽義仲のこと
格助詞
御乳母子名詞「乳母子」は「めのとご」と読む。
ここでは後見役の人の子どものこと。
今井四郎兼平名詞
生年名詞読みは「しやうねん」。年齢のこと。
三十三名詞
格助詞
まかりなる動詞ラ行四段活用動詞「まかる」の連用形+ラ行四段活用動詞「なる」の終止形。
「出づ」の謙譲語、「行く」の丁寧語、他の動詞の前に付いて謙譲・丁寧を表す(~申す、~ます)の意味がある。
ここでは謙譲・丁寧の意味を表し、今井四郎から五十騎ほどの敵に対する敬意が示される。
木曽殿のご後見役の方の子ども、今井四郎兼平、歳は三十三になり申す。
 

さる者ありとは、鎌倉殿までも知ろしめされたるらんぞ。

さる    連体詞  「そういった、そのような」または「立派な、ふさわしい」などの意味。
名詞
あり動詞ラ行変格活用動詞「あり」の終止形。
ラ変動詞は「あり」「をり」「はべり」「いまそが(か)り/いますが(か)り」を押さえておこう。
格助詞
係助詞
鎌倉殿名詞源頼朝のこと。
まで副助詞限界の副助詞
係助詞強意の係助詞
知ろしめさ動詞サ行四段活用動詞「知ろしめす」の未然形。
「知る」の尊敬語、「治る」の尊敬語の意味を持つ。
ここでは「知る」の尊敬語として使われ、今井四郎から鎌倉殿への敬意が示される。
助動詞尊敬の助動詞「る」の連用形。
助動詞「る」・「らる」は受身、尊敬、自発、可能の四つの意味をもつ。主な意味の見分け方は次のとおり。原則⇒文脈判断の順番で自然な訳を組み立てたい。

①受身 ⇒「~に」(受身の対象)+「る」(「らる」)
②尊敬 ⇒尊敬語+「る」(「らる」)
③自発 ⇒知覚動詞(「思ふ」「しのぶ」「ながむ」等)+「る」(「らる」)
④可能 ⇒「る」(「らる」)+打消・反語

また、助動詞「る」「らる」は接続する動詞の活用の種類によって使い分けられるため、併せて覚えておきたい。
四段活用動詞、ナ行変格活用動詞、ラ行変格活用動詞の未然形は「る」が使われる。その他の動詞の未然形には「らる」が使われる。
「四段な(ナ変)ら(ラ変)る」と覚えるのも手。
たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。
意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)
らん助動詞現在推量の助動詞「らむ」の連体形
終助詞念押しの終助詞。「~よ」などの訳を当てることが多い。
そのような者がいるとは、鎌倉殿までもご存じでいらっしゃるだろうよ。

兼平討つて見参に入れよ。」とて、

兼平     名詞                                  
討つ動詞タ行四段活用動詞「討つ」の連用形
接続助詞
見参名詞ここでは「お目にかけること」の意味で使われる
格助詞
入れよ動詞ラ行下二段活用動詞「入る」の命令形
とて格助詞
(この)兼平を討って(その首を)お目にかけよ。」と言って、

射残したる八筋の矢を、さしつめ引きつめさんざんに射る。

射残し       動詞     サ行四段活用動詞「射残す」の連用形                     
たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形
八筋名詞読みは「やすぢ」。
格助詞
名詞
格助詞
さしつめ動詞マ行下二段活用動詞「さしつむ」の連用形。
「さしつめ引きつめ」で連語として、「つがえては引き、つがえては引き」の意味で使われる。
引きつめ動詞マ行下二段活用動詞「引きつむ」の連用形
さんざんに副詞ナリ活用の形容動詞「さんざんなり」の連用形とみてもよい。
ここでは動作が「容赦なく激しい」の意味で使われる。
射る動詞ヤ行上一段活用動詞「射る」の終止形

射残していた八本の矢をつがえては引き、つがえては引き、容赦なく射る。


死生は知らず、やにはにかたき八騎射落とす。

死生    名詞    
係助詞
知ら動詞ラ行四段活用動詞「知る」の未然形
助動詞打消の助動詞「ず」の連用形
やにはに副詞その場で、たちどころに、の意。
この「やにはに」は現代にも残っており、共通テスト2024・国語 第2問(小説)の語彙問題で出題された
かたき名詞漢字をあてると「敵」。
八騎名詞八本の矢を打って八本とも命中させたことになる。まさに百発百中である。
射落とす動詞サ行四段活用動詞「射落とす」の終止形         
(今井四郎は)死んだか生きているかはわからないが、たちどころに敵を八騎射落とす。

そののち打ち物抜いて、あれに馳せ合ひ、

そ     代名詞   
格助詞
のち名詞
打ち物名詞ここでは打ち鍛えた物、つまり武器となる刃物のこと
抜い動詞カ行四段活用動詞「抜く」の連用形のイ音便
接続助詞
あれ代名詞
格助詞
馳せ合ひ動詞ハ行四段活用動詞「馳せ合ふ」の連用形
その後刃物を抜いて、あちこちと(馬を)走らせ敵に当たり、
 

切つてまはるに、面を合はする者ぞなき。

切つ    動詞    ラ行四段活用動詞「切る」の連用形の促音便
接続助詞
まはる動詞ラ行四段活用動詞「まはる」の連体形
接続助詞
名詞顔のこと。読みは「おもて」。
格助詞
合はする動詞ラ行下二段活用動詞「合はす」の連体形
名詞
係助詞強意の係助詞
なき形容詞ク活用の形容詞「なし」の連体形。
直前の係助詞「ぞ」を受けて係り結びが成立している。
切って回るため、顔を合わせる(=正面から立ち向かう)者はいない。

ぶんどりあまたしたりけり。

ぶんどり    名詞     戦場で敵の首などを奪い取ること                             
あまた副詞★重要単語
たくさん。
動詞サ行変格活用動詞「す」の連用形
たり助動詞完了の助動詞「たり」の連用形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。
意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)
けり助動詞過去の助動詞「けり」の終止形。
同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。
敵の首をたくさん取った。

ただ「射とれや。」とて、中に取りこめ、

ただ       副詞                         
射とれ動詞ラ行四段活用動詞「射とる」の命令形
間投助詞呼びかけの間投助詞
とて格助詞
名詞
格助詞
取りこめ動詞マ行下二段活用動詞「取りこむ」の連用形。
漢字をあてると「取り籠む」であるとおり、「取り囲む」といった意味を持つ語。

ただ「射殺せよ。」と言って、中に(今井四郎を)取り囲み、

今回はここまで🐸

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