枕草子『春はあけぼの』品詞分解/現代語訳/解説①

枕草子『春はあけぼの』品詞分解/現代語訳/解説①

はじめに

こんにちは!こくご部です。

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今回は枕草子『春はあけぼの』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説も記しておきます。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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出典について

まずは出典の『枕草子』について触れておきましょう。

出典

★作者について
 作者は清少納言。一条天皇の中宮定子に仕える(紫式部が仕えたのは中宮彰子)。父は清原元輔

★ジャンルについて
 
随筆文学。『枕草子』の内容は以下の3つに大別される(諸説あり)。
①類聚的章段(「〇〇は~」「〇〇なもの」で始まるもの)
②日記的章段(実際に作者が経験した事象について描かれたもの)
③随想的章段(諸々の事象についての感想を述べたもの)

★成立について
 平安時代中期

敬語について
 
『枕草子』のうち、特に清少納言の過ごした宮廷社会を描いた場面では敬語に着目して「誰が主語になっているか」を見極めることが重要。
清少納言の仕えた中宮定子一条天皇に対しては二重尊敬が用いられることがほとんど。
また、通常の尊敬語が用いられている場合は上記の二人以外の貴人が主語であることが多く、敬語が用いられていない場合作者自身や周囲の女房たちが主語である可能性が高い。


春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく、

春   名詞                      
係助詞
あけぼの     名詞明け方、夜明けのこと
やうやう副詞次第に。だんだん。「漸く」が語源とされている。
白く形容詞ク活用の形容詞「白し」の連用形
なりゆく動詞カ行四段活用動詞「なりゆく」の連体形。
「やうやう白くなりゆく山ぎは」と続けて読むことも可能であるが、本記事では「なりゆく」と「山ぎは」の間に読点を入れた例にならって読解していく。
春は夜明け(がよい)。次第に(あたりが)白くなっていく、

山ぎは少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。

山ぎは      名詞     空の、山の稜線に接するあたりのこと。
少し副詞 
明かり動詞 ラ行四段活用動詞「明かる」の連用形
接続助詞
紫だち動詞タ行四段活用動詞「紫だつ」の連用形。
「紫色がかる」という意味を持つ語。
上記の「やうやう白くなりゆく山ぎは」のように、「紫だちたる」の直後に句点を打つことも可能である。
教科書の「本文」は翻刻を行った人物の解釈によるものなのである。
たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。
意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)
名詞
格助詞主格用法
細く形容詞ク活用の形容詞「細し」の連用形
たなびき動詞カ行四段活用動詞「たなびく」の連用形。
「雲や煙などが、横に長く引く」、「長く連ねる」といった意味を持つ語。
ここでは前者の意味で使われる。
たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形
山の稜線に接するあたりが少し明るくなって、紫色がかっている雲が細く横に長くひいている(のがよい)。

夏は夜。月のころはさらなり、

夏      名詞     
係助詞
名詞
名詞
格助詞
ころ名詞
係助詞
さらなり形容動詞ナリ活用の形容動詞「さらなり」の終止形。
ここでは「言うまでもない」の意味で使われる。ここで読点ではなく句点を打つこともできる。      
夏は夜(がよい)。月の(眺めがよい)ころは言うまでもなく、

闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。

闇      名詞       
係助詞
なほ副詞★重要単語
現代にも残っている「依然としてやはり(変わらず)」、「よりいっそう」のほか、「なんといってもやはり」などの意味があり、文脈に応じて適切な訳語を当てる。
名詞
格助詞主格用法
多く形容詞ク活用の形容詞「多し」の連用形
飛びちがひ動詞ハ行四段活用動詞「飛びちがふ」の連用形。
「互いに入り乱れて飛ぶ」という意味を持つ語。
「飛び交ふ」と同じ。
たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形
(月の出ていない)闇もやはり、蛍が多く互いに入り乱れ飛んでいる(のも風情がある)。

また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、をかし。

また     接続詞     
ただ副詞
一つ名詞
二つ名詞   
など副助詞例示の副助詞
ほのかに   形容動詞ナリ活用の形容動詞「ほのかなり」の連用形
うち光り 動詞ラ行四段活用動詞「光る」の連用形。
「うち」は接頭語。動詞に付いて、語調を整えたり、直後に続く動詞の意味を強めたりする働きがあるので、覚えておきたい。
接続助詞
行く動詞カ行四段活用動詞「行く」の連体形
係助詞
をかし形容詞シク活用の形容詞「をかし」の終止形。
「あはれなり」のようにジメっと感なく、「すてき!」とカラッと肯定的に評価する、と評価されることがあるが、まさにその通りであると感じる。
『枕草子』が「をかし」の文学と言われることも併せて覚えておきたい。
また、ただ一つ、二つなど、ほのかにちょっと光って(飛んで)行くのも、趣がある。

雨など降るも、をかし。

雨      名詞    
など 副助詞婉曲の副助詞
降る動詞ラ行四段活用動詞「降る」の連体形
係助詞
をかし形容詞シク活用の形容詞「をかし」の終止形。

これを読んでくれているあなたは、どのようなものが「をかし」であると感じるだろうか。
時代を超えても共感できるものや、意味すら分からないものもあるかもしれないが、「時の試練」を乗り越えたテクストには様々な力がある。

雨のようなものが降るのも、趣がある。

今回はここまで🐸

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