枕草子『春はあけぼの』品詞分解/現代語訳/解説②

枕草子『春はあけぼの』品詞分解/現代語訳/解説②

はじめに

こんにちは!こくご部です。

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今回は枕草子『春はあけぼの』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説も記しておきます。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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秋は、夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、

秋   名詞                      
係助詞
夕暮れ名詞前回の記事に引き続き、ここでは作者が「素敵だ」と思っていることを列挙している。冒頭では春、夏について語られた。
夕日名詞
格助詞主格用法
さし動詞サ行四段活用動詞「さす」の連用形
接続助詞
山の端名詞山の稜線のこと。読みは「やまのは」。
「山ぎは」とセットになる語である。
いと       副詞       「たいそう」、「非常に」という訳を当て、程度が甚だしいことを示す。「めっちゃ」と脳内変換してもOK。
近う形容詞ク活用の形容詞「近し」の連用形のウ音便
なり動詞ラ行四段活用動詞「なる」の連用形
たる               助動詞             存続の助動詞「たり」の連体形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。
意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)
格助詞
秋は夕暮れ(がよい)。夕日が差して山の稜線がたいそう近づいてきている時に、

烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、

烏   名詞   読みは「とり」ではなく、「からす」である。
言われてみれば確かに、「からす」と「秋」、そして「夕暮れ」を関連付けてイメージする人は少なくないかもしれない。
格助詞主格用法
寝どころ  名詞
格助詞
行く動詞カ行四段活用動詞「行く」の終止形
とて格助詞
三つ名詞現代語訳をする際の助数詞は「羽」が望ましい。
四つ名詞
二つ名詞
三つ名詞
など副助詞例示の副助詞
烏が寝どころへ行くということで、三羽四羽、二羽三羽など、

飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるが、

飛び急ぐ     動詞      ガ行四段活用動詞「飛び急ぐ」の連用形
さへ副助詞添加の副助詞
あはれなり形容動詞ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の終止形。
「趣深い」「かわいそう」「すばらしい」など様々な訳語をあてることができるが、 「あはれ」とは基本的・包括的な美的理念であり、 一面性のみに光を当てるべきではないことを理解しておきたい。
近年「エモい」というある意味「便利」な言葉が生まれたが、平安時代の精神と通ずるところがあるように思える。
「エモい」「尊い」などを先人が逆輸入すれば「あはれなり」と訳するのかもしれない。

くどいようだが、「をかし」とセットになる語。
まいて副詞「まして」のイ音便の形。
「なおさら」、「いうまでもなく」という意味を持つ語。
ここでは後者の意味で使われる。
名詞読みは「かり」。「烏」と対比的に用いられている。
など副助詞婉曲の副助詞
格助詞同格の用法
連ね動詞ナ行下二段活用動詞「連ぬ」の連用形     
たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形。
ここでは後ろに「雁」を補うとよい。
格助詞主格用法
飛び急ぐ様子さえ、趣深い。いうまでもなく、雁のような鳥で連なっている雁が、

いと小さく見ゆるは、いとをかし。

いと      副詞       
小さく形容詞ク活用の形容詞「小さし」の連用形
見ゆる副詞ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」の連体形。
「見える」「思われる」「見られる」「結婚する」など様々な意味があるが、「見ゆ」の「ゆ」は上代(ほぼ奈良時代まで)の助動詞であり、受身・自発・可能の意味がある。

「受身・自発・可能」という字面を見ると「る」と同じでは?と思った人がいるかもしれないが、その直感は正しい。「る」の発達に伴って「ゆ」が少しずつ姿を消していった。
なお、「ゆ」には尊敬の意味はない。
係助詞
いと副詞
をかし形容詞シク活用の形容詞「をかし」の終止形。
「あはれなり」のようにジメっと感なく、「すてき!」とカラッと肯定的に評価するのが基本姿勢の語。
『枕草子』が「をかし」の文学と言われることも併せて覚えておきたい。
たいそう小さく見えるのは、たいそう風情がある。

日入り果てて、風の音、虫の音など、

日     名詞     
入り果て動詞タ行下二段活用動詞「入り果つ」の連用形
接続助詞
名詞   
格助詞
音  名詞よく言われる話ではあるが、現代では発明されている様々なものが当時はまだなかったため、昔の人々は五感を最大限に働かせて季節の移り変わりを楽しんだようである。
これまでは目で見て楽しむもの(視覚)がメインであったが、今度は耳で楽しむもの(聴覚)について語られている。
名詞
格助詞
名詞
など副助詞例示の副助詞
日が沈んで、風の音、虫の声などは、

はた言ふべきにあらず。

はた      副詞    ここでは「やはり、さらにまた」といった意味で使われる。
言ふ 動詞ハ行四段活用動詞「言ふ」の終止形
べき助動詞可能の助動詞「べし」の連体帰依
★重要文法
助動詞「べし」は多くの意味をもつが、以下のように判別の手掛かりになる「ルール」があるので整理しておきたい。
※必ず文脈判断を踏まえること。この「ルール」は「この意味になることが多い」程度の認識でいるべし。

【原則】
・主語が一人称⇒意志
・主語が二人称⇒適当/当然/命令
・主語が三人称⇒推量

【文脈判断等】
・下に打消を伴う⇒可能 
・下に格助詞の「と」を伴う/終止形⇒意志
・下に名詞や助詞を伴う(「~するはずの」と訳す)⇒当然/予定 ※直後に助詞が来る場合:名詞が省略されている。
・文中に疑問/反語を示す語を伴う⇒推量/可能
助動詞断定の助動詞「なり」の連用形
あら動詞ラ行変格活用動詞「あり」が補助動詞として使われている。
「あり」本来の意味である「存在する」という意味ではなく、「~の状態である」という意味で使われていることに注意する。    
助動詞打消の助動詞「ず」の終止形

さらにまた、言うことができない(ほど趣がある)。

今回はここまで🐸

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