枕草子『はしたなきもの』品詞分解/現代語訳/解説②
目次
はじめに
こんにちは!こくご部です。
定期テスト対策から大学受験の過去問解説まで、「知りたい」に応えるコンテンツを発信します。
今回は枕草子『はしたなきもの』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。
必要に応じて解説も記しておきます。
古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥
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あはれなることなど、人の言ひ出で、うち泣きなどするに、
あはれなる | 形容動詞 | ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の連体形。 「趣深い」「かわいそう」「すばらしい」など様々な訳語をあてることができるが、 「あはれ」とは基本的・包括的な美的理念であり、 一面性のみに光を当てるべきではないことを理解しておきたい。 ここでは現代語と同様に「かわいそう」という訳語を当てている。 |
こと | 名詞 | |
など | 副助詞 | 婉曲の副助詞 |
人 | 名詞 | |
の | 格助詞 | 主格用法 |
言ひ出で | 動詞 | ダ行下二段活用動詞「言ひ出づ」の連用形 |
うち泣き | 動詞 | カ行四段活用動詞「泣く」の連用形。 「うち」は接頭語。動詞に付いて、語調を整えたり、直後に続く動詞の意味を強めたりする働きがあるので、合わせて覚えておきたい。 |
など | 副助詞 | 婉曲の副助詞 |
する | 動詞 | サ行変格活用動詞「す」の連体形 |
に | 接続助詞 | 逆接確定条件 |
かわいそうなことなどを、人が言い出してちょっと泣きなどするが、
げにいとあはれなりなど聞きながら、
げに | 副詞 | 本当に、の意 |
いと | 副詞 | 「たいそう」、「非常に」という訳を当て、程度が甚だしいことを示す。「めっちゃ」と脳内変換してもOK。 |
あはれなり | 形容動詞 | ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の終止形 |
など | 副助詞 | 引用の副助詞 |
聞き | 動詞 | カ行四段活用動詞「聞く」の連用形 |
ながら | 接続助詞 | 逆接確定条件 |
ほんとうにたいそうかわいそうだなどと聞きながら、
涙のつと出で来ぬ、いとはしたなし。
涙 | 名詞 | |
の | 格助詞 | 主格用法 |
つと | 副詞 | 「そのまま、ずっと」、「急に、さっと」という意味を持つ語。 ここでは後者の意味で使われる。 |
出で来 | 動詞 | カ行変格活用動詞「出で来」の未然形。 読みは「いでこ」である。これを「いでき」と読んでしまうと、直後の「ぬ」が完了の助動詞となり、文意が通らない。 |
ぬ | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の連体形 |
いと | 副詞 | |
はしたなし | 形容詞 | ク活用の形容詞「はしたなし」の終止形。 「端」+接尾語「なし」。接尾語の「なし」は「~でない」という意味ではなく、程度が甚だしいことを示し、「なし」の上につく語の意味を強調する働きをもつ。 「端」は中途半端であることを示すため、「きまりが悪い・恥ずかしい」、「中途半端だ」などの訳を当てる。 「〇〇するなんて、はしたない」というセリフを聞いたことがある人もいるかもしれないが、現代にも生きている。 |
涙がさっと出てこないのは、たいそうきまりが悪い。
泣き顔つくり、けしき異になせど、いとかひなし。
泣き顔 | 名詞 | |
つくり | 動詞 | ラ行四段活用動詞「つくる」の連用形 |
けしき | 名詞 | 漢字をあてると「気色」。 自然などの風景だけでなく、目で見た物や人の様子などを表す語。 「様子」、「機嫌」、「思い」といった意味になる。 ここでは「様子」の意味で使われる。 |
異に | 形容動詞 | ナリ活用の形容動詞「異なり」の連用形。 「~と違って」「とりわけ、特に」などといった意味を持つ。 ここでは前者の意味で使われる。 「様子」を「(普段と)違う」ようにしている、ということである。 |
なせ | 動詞 | サ行四段活用動詞「なす」の已然形 |
ど | 接続助詞 | 逆接確定条件。已然形に接続することも覚えておきたい。 |
いと | 副詞 | |
かひなし | 形容詞 | ク活用の形容詞「かひなし」の終止形。 漢字を当てると「甲斐無し」。 「どうにもならない」、「取るに足りない」の意味を持つ。 ここでは前者の意味。 |
泣き顔をつくり、様子をとりわけ悲しそうに作るが、たいそうどうにもならない。
めでたきことを見聞くには、まづただ出で来にぞ出で来る。
めでたき | 形容詞 | ク活用の形容詞「めでたし」の連体形。 ダ行下二段活用動詞「愛(め)づ」に形容詞「甚(いた)し」が付いてできた語。 「めづ」は「愛づ」と書くとおり、対象の美しさやすばらしさ、かわいらしさに強く心をひかれることを表す。心ひかれる対象にあわせて「感嘆する」「愛する」と訳し分ける。 心惹かれる程度が「甚し」ということで、「大いに賞賛すべき様子だ」という意味が基本である。 「すばらしい」「立派だ」と訳すとよい。 |
こと | 名詞 | |
を | 格助詞 | |
見 | 動詞 | マ行上一段活用動詞「見る」の連用形。 上一段動詞は基本的には10語のみと数に限りがあるため、頭文字を取って「ひいきにみゐる」で確実に暗記しておくこと。 |
聞く | 動詞 | カ行四段活用動詞「聞く」の連体形 |
に | 格助詞 | |
は | 係助詞 | |
まづ | 副詞 | |
ただ | 副詞 | |
出で来 | 動詞 | カ行変格活用動詞「出で来」の連用形。ここで「出てくる」と筆者が述べているのは、先に話題に上がっている「涙」のことである。 |
に | 格助詞 | |
ぞ | 係助詞 | 強意の係助詞 |
出で来る | 動詞 | カ行変格活用動詞「出で来」の連体形。直前の「ぞ」を受けて、係り結びが成立している。 同様の語を重ねて使用することで、その語を強調する効果がある。現代では「頭痛が痛い」などと言うと「重言だ」と指摘されるので注意。 |
すばらしいことを見聞きするときには、まず先に(涙が)出て来て出て来て(するのに)。
今回はここまで🐸
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