枕草子『九月ばかり』品詞分解/現代語訳/解説①

枕草子『九月ばかり』品詞分解/現代語訳/解説①

はじめに

こんにちは!こくご部です。

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今回は枕草子『九月ばかり』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説も記しておきます。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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出典について

まずは出典の『枕草子』について触れておきましょう。

出典

★作者について
 作者は清少納言。一条天皇の中宮定子に仕える(紫式部が仕えたのは中宮彰子)。父は清原元輔

★ジャンルについて
 
随筆文学。『枕草子』の内容は以下の3つに大別される(諸説あり)。
①類聚的章段(「〇〇は~」「〇〇なもの」で始まるもの)
②日記的章段(実際に作者が経験した事象について描かれたもの)
③随想的章段(諸々の事象についての感想を述べたもの)

★成立について
 平安時代中期

敬語について
 
『枕草子』のうち、特に清少納言の過ごした宮廷社会を描いた場面では敬語に着目して「誰が主語になっているか」を見極めることが重要。
清少納言の仕えた中宮定子一条天皇に対しては二重尊敬が用いられることがほとんど。
また、通常の尊敬語が用いられている場合は上記の二人以外の貴人が主語であることが多く、敬語が用いられていない場合作者自身や周囲の女房たちが主語である可能性が高い。


九月ばかり、夜一夜降り明かしつる雨の、

九月                    名詞             読みは「ながつき」。各月の異名と、季節区分については理解しておきたい。現代に生きる我々と感覚が違うので、「1月から数えて3カ月ごとに四季を区分していけばよい」と覚えておこう。

【春】1月:睦月、2月:如月、3月:弥生
【夏】4月:卯月、5月:皐月、6月:水無月
【秋】7月:文月、8月:葉月、9月:長月
【冬】10月:神無月、11月:霜月、12月:師走            
ばかり副助詞程度の副助詞
夜一夜名詞夜通し、一晩中の意。読みは「よ ひとよ」。
降り明かし 動詞サ行四段活用動詞「降り明かす」の連用形
つる助動詞完了の助動詞「つ」の連体形。
同じ完了の意味で同じ連用形接続の「ぬ」との違いが聞かれることもあるのでまとめておく。
「ぬ」:自然的な作用を示す場合に用いられる
⇒ ex.「風立ちぬ」
「つ」:人為的、意図的な作用を示す場合に用いられる
⇒ex.「石炭をばはや積み果てつ」

【余談】
先の用例で紹介した「石炭をばはや積み果てつ」は森鴎外『舞姫』からの引用。高校の授業で『舞姫』を扱う学校は多いが、こだわりのある先生であればこの一文字で1時間の授業ができるほどの名文と言える。興味のある人は『舞姫』の中で「つ」と「ぬ」がどのように使い分けられているかチェックしてみてほしい。
名詞
格助詞主格用法
九月のころ、夜通し降り続いた雨が、

今朝はやみて、朝日いとけざやかにさし出でたるに、

今朝      名詞     
係助詞
やみ動詞 マ行四段活用動詞「やむ」の連用形
接続助詞
朝日名詞
いと副詞「たいそう」、「非常に」という訳を当て、程度が甚だしいことを示す。「めっちゃ」と脳内変換してもOK。
けざやかに形容動詞ナリ活用の形容動詞「けざやかなり」の連用形。
「はっきりしている、きわだっている」という意味を持つ語。
「け」は接頭語で、「け」+「さやかなり」と考えるとよい。
さし出で動詞ダ行下二段活用動詞「さし出づ」の連用形。
「さし」は接頭語で、動詞について意味を強めたり、語調を整えたりする。
ここでは「(光が)差し始める、輝き出す」という意味で使われる。
たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。
意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)
格助詞
今朝はやんで、朝日がたいそうはっきりと差し始めているときに、

前栽の露はこぼるばかり濡れかかりたるも、いとをかし。

前栽    名詞      読み方は「せんざい」。
庭の草木や、植え込みのこと。
格助詞
名詞
係助詞
こぼる動詞ラ行下二段活用動詞「こぼる」の終止形
ばかり副助詞程度の副助詞
濡れかかり動詞ラ行四段活用動詞「濡れかかる」の連用形
たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形     
係助詞
いと副詞
をかし形容詞シク活用の形容詞「をかし」の終止形。
「あはれなり」のようにジメっと感なく、「すてき!」とカラッと肯定的に評価するのが基本姿勢の語。
『枕草子』が「をかし」の文学と言われることも併せて覚えておきたい。
庭の植え込みの露はこぼれるほど(植え込みを)濡らしているのも、たいそう趣がある。

透垣の羅文、軒の上などは、

透垣     名詞    読み方は「すいがい」。
竹などで少し間をあけて作った垣のこと。
格助詞
羅文名詞透垣などの上部に作る飾りのこと。
細い木や竹を二本ずつひし形に交差させるようにして組んだ模様のこと。読みは「らもん」。
名詞読みは「のき」。           
格助詞
名詞
など副助詞例示の副助詞
格助詞
透垣の羅文や、軒の上などは、

かいたる蜘蛛の巣のこほれ残りたるに、

かい     動詞    カ行四段活用動詞「かく」の連用形のイ音便。
漢字をあてると「掛く、懸く」。「垂れ下げる、かける」という意味で使われる語。
たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形
蜘蛛名詞
格助詞 
名詞
格助詞主格用法
こほれ残り動詞ラ行下二段活用動詞「こほる」の連用形+ラ行四段活用動詞「残る」の連用形。
「こほる」は漢字をあてると「毀る」であるとおり、「破れる、壊れる」という意味を持つ語。
たる助動詞存続の助動詞「たり」の連体形
格助詞
垂れ下がっている蜘蛛の巣が破れ残っているところに、

今回はここまで🐸

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