土佐日記『亡児』品詞分解/現代語訳/解説①

土佐日記『亡児』品詞分解/現代語訳/解説①

はじめに

こんにちは!こくご部です。

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今回は土佐日記『亡児』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説も記しておきます。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

出典について

まずは出典の『土佐日記』について触れておきましょう。

出典

★作者について
 作者は紀貫之。平安中期の代表的な歌人。『古今和歌集』の撰者の一人としても覚えておきたい人物。九三〇年から九三四年まで土佐守として任務を果たした。

★ジャンルについて
 日記文学

★成立について
 九三五年~九四五年
ごろの成立と言われている。

その他
 女性の身を借りて書かれており(女性仮託と言う)、仮名文字が使われている。が、内容を読み進めると、対句や漢文訓読的な男性用語も使われている。


二十七日。大津より浦戸をさして漕ぎ出づ。

二十七日 名詞 読みは「はつかあまりなぬか」。                 
大津名詞今の高知市に位置する港のこと。「門出」に出てきた「舟に乗るべき所」のことを指す。滋賀県にも同様の地名があるが、ここでは別の場所である。                                   
「ある人」が国守の任期を終えた後に向かった場所である。
より格助詞
浦戸        名詞        現在の高知市浦戸にあった港のこと。
大津から十二キロメートルほどの距離にあるところと言われている。
格助詞
さし動詞サ行四段活用動詞「さす」の連用形。目指す。
接続助詞
漕ぎ出づ動詞ダ行下二段活用動詞「漕ぎ出づ」の終止形
二十七日。大津から浦戸を目指して(舟を)漕ぎ出す。

かくあるうちに、京にて生まれたりし女子、

かく    副詞    「かく」は眼前の事実、前の会話や文脈を「このように」と指示する語。文中に指示の副詞が出てきた場合は、何を指しているのか具体的内容を押さえること。
ここでの「かく」は様々に解釈することができる。「この一行の人々の中で」、「こうして漕いでいるうちにも」、「いろいろのことがあった最中に」といった説があるが、ここでは「この一行の人々の中で」としておく。
ある動詞ラ行変格活用動詞「あり」の連体形。
ラ変動詞は「あり」「をり」「はべり」「いまそが(か)り/いますが(か)り」を押さえておこう。
うち名詞
格助詞
名詞
にて格助詞
生まれ   動詞ラ行下二段活用動詞「生まる」の連用形
たり助動詞完了の助動詞「たり」の連用形。
助動詞の「たり」は完了・存続の「たり」と断定の「たり」の二つが存在するが、前者は連用形接続、後者は体言に接続する。
意味から考えても両者は明確に区別できるはず。(完了・存続の「たり」はもともと「てあり」から生じているため、接続助詞の「て」と同様に連用形接続である。同様に、断定の「たり」は「とあり」から生じている。)
助動詞過去の助動詞「き」の連体形。
同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。
女子名詞土佐に赴任するよりも前に生まれていた女の子のことを指す。

この(京へと帰る)一行の中で、都で生まれていた女の子が、

国にてにはかに失せにしかば、

国   名詞     ここでは土佐の国のことを意味する。
にて格助詞
にはかに    形容動詞ナリ活用の形容動詞「にはかなり」の連用形。
「突然だ、急だ」の意味を持つ語。「にわか雨」をイメージすると覚えやすい。
失せ  動詞サ行下二段活用動詞「失す」の連用形。
ここでは「死ぬ」の婉曲的な表現として使われる。
助動詞完了の助動詞「ぬ」の連用形。
「に」は下記の八つのパターンがあるため、判別できるようになっておきたい。
①格助詞「に」 ⇒体言+「に」
②格助詞「に」 ⇒連体形+(体言)+「に」
         連体形と「に」の間に体言(「とき」「ところ」)を補うことができる
③接続助詞「に」⇒連体形+「に」
④断定の助動詞「なり」の連用形 ⇒連体形または体言+「に」
 「に」の下に「あり」「さぶらふ」「はべり」などがつくことが多い。
⑤完了の助動詞「ぬ」の連用形 ⇒連用形+「に」
⑥ナリ活用の形容動詞の連用形活用語尾 
⑦ナ行変格活用動詞の連用形活用語尾
⑧副詞の一部

この場合は、直前の動詞「失す」が連用形のため⑤であると判断する。
しか助動詞過去の助動詞「き」の已然形
接続助詞★重要文法
接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。
①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない)
⇒仮定(もし~ならば)
②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている)

(ⅰ)原因・理由(~なので)
(ⅱ)偶然(~したところ)
(ⅲ)必然(~するといつも)

ここでは原因・理由で取ると自然か。
(土佐の)国で突然亡くなったので、

このごろの出で立ちいそぎを見れど、何ごとも言はず、

このごろ     名詞     ここでは「近頃」の意味で使われる。
格助詞
出でたちいそぎ名詞「出発の支度」の意。
「出でたち」が出発であり、「いそぎ」は用意のこと。特に後者は汎用性の高い重要語である。
格助詞
見れ動詞マ行上一段活用動詞「見る」の已然形。
上一段動詞は基本的には10語のみと数に限りがあるため、頭文字を取って「ひいきにみゐる」で確実に暗記しておくこと。
接続助詞逆接の確定条件。「~けれども」と訳す。
接続は已然形。
何ごと名詞
係助詞強意の係助詞
言は動詞ハ行四段活用動詞「言ふ」の未然形
助動詞打消の助動詞「ず」の連用形
近頃の出発の支度(の様子)を見るけれども、なにも言わず、

京へ帰るに女子のなきのみぞ、悲しび恋ふる。

京     名詞                                   
格助詞
帰る動詞ラ行四段活用動詞「帰る」の連体形
接続助詞逆接の確定条件。
(待ちに待った)都に帰る時であるというのに、心は曇ったままである。
女子名詞
の 格助詞主格用法
なき形容詞ク活用の形容詞「なし」の連体形
のみ副助詞限定の副助詞
係助詞強意の係助詞
悲しび動詞バ行四段活用動詞「悲しぶ」の連用形。
「悲しく思う」の意。
恋ふる動詞ハ行上二段活用動詞「恋ふ」の連体形。
係助詞「ぞ」を受けて係り結びが成立している。
都に帰るが女の子がいないことばかりを悲しく思い恋い慕う。

ある人々もえ堪へず。

ある      動詞    ラ行変格活用動詞「あり」の連体形。
ここでの「ある」とは、不特定多数を示す「some」ではなく、そこに「いる」という意味であることに注意。                
人々名詞
係助詞
副詞★重要文法 後ろに「打消」を伴って「不可能」の意味を表す。
このようにセットで用いる副詞を「呼応(陳述)の副詞」と呼ぶ。
堪へ動詞ハ行下二段活用動詞「堪ふ」の未然形  
助動詞打消の助動詞「ず」の終止形

そこにいる人々も堪えることができない。

今回はここまで🐸

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