土佐日記『門出』品詞分解/現代語訳/解説④
目次
はじめに
こんにちは!こくご部です。
定期テスト対策から大学受験の過去問解説まで、「知りたい」に応えるコンテンツを発信します。
今回は土佐日記『門出』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。
必要に応じて解説も記しておきます。
古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥
それでは行ってみましょう!
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二十四日。講師、馬のはなむけしに出でませり。
| 二十四日 | 名詞 | 読みは「はつかあまりよか」もしくは「にじゅうしにち」。 |
| 講師 | 名詞 | 読みは「かうじ」。国分寺に置かれた僧官のこと。 |
| 馬のはなむけ | 名詞 | 別れの宴のこと。宴を催す以外に、金品や詩歌を贈って別れを祝うこともある。 旅立つ人が乗る馬の鼻をその人が向かう方へ向ける習慣からできた言葉とされる。 |
| し | 動詞 | サ行変格活用動詞「す」の連用形 |
| に | 格助詞 | |
| 出で | 動詞 | ダ行下二段活用動詞「出づ」の連用形 |
| ませ | 動詞 | サ行四段活用動詞「ます」の連用形。 ここでは尊敬の意を表す補助動詞として使われる。「まうす」が変化してできた語。 |
| り | 助動詞 | 完了の助動詞「り」の終止形。 接続を覚えるための語呂合わせは「サ未四已(さみしい)りっちゃん」派か「サ未四已りかちゃん」派かで分かれる。 教室に「り」で始まる子がいるとその日はイジられる可能性が高い。 |
二十四日。僧官が餞別をしにお出でになった。
ありとある上・下、童まで酔ひしれて、
| あり | 動詞 | ラ行変格活用動詞「あり」の連用形。 ラ変動詞は「あり」「をり」「はべり」「いまそが(か)り/いますが(か)り」を押さえておこう。 |
| と | 格助詞 | |
| ある | 動詞 | ラ行変格活用動詞「あり」の連体形 |
| 上・下 | 名詞 | ここでは身分の「上・下」を表す。読みは「かみ、しも」。 |
| 童 | 名詞 | 読みは「わらは」。現代日本では「お酒はハタチになってから」。 法律は社会や時代を反映して人間が作るものであるので、社会の状況を垣間見ることができる。 |
| まで | 副助詞 | 限界の副助詞 |
| 酔ひしれ | 動詞 | ラ行下二段活用動詞「酔ひしる」の連用形。酔っぱらって。読みは「ゑひしる」。 |
| て | 接続助詞 |
ありとあらゆる、身分が上の者も下の者も、子どもまでもが酔いしれて、
一文字だに知らぬ者、しが足は十文字に踏みてぞ遊ぶ。
| 一文字 | 名詞 | ここでは「一」という文字のことを指す。 「一」に大きな意味があるというより、画数の最も少なく、簡単である字を例に挙げている。 |
| だに | 副助詞 | 副助詞「だに」は類推の「だに」と最小限の希望の「だに」の二つの用法が存在するが、今回は前者。 類推とは程度の軽いものを言うことで、程度の重いものを推測させるものである。「~さえ(も)」という訳をする。 |
| 知ら | 動詞 | ラ行四段活用動詞「知る」の未然形 |
| ぬ | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の連体形 |
| 者 | 名詞 | |
| し | 代名詞 | それ。代名詞の場合、格助詞「が」を伴って「しが」の形で用いられる。 また、副助詞として解釈することも可能。 |
| が | 格助詞 | |
| 足 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| 十文字 | 名詞 | ここでは「十」という文字のことを指す。手で「一」という、簡単な字も書けないものが、足で「十」を書いているようにふらついていることを示した表現。 |
| に | 格助詞 | |
| 踏み | 動詞 | マ行四段活用動詞「踏む」の連用形 |
| て | 接続助詞 | |
| ぞ | 係助詞 | 強意の係助詞 |
| 遊ぶ | 動詞 | バ行四段活用動詞「遊ぶ」の連体形。 直前の「ぞ」を受けて係り結びが成立している。 |
「一」という文字でさえも知らない者が、その足は「十」の文字に足を踏んで遊んでいる。
二十五日。守の館より、呼びに文持て来たなり。
| 二十五日 | 名詞 | 読みは「はつかあまりいつか」もしくは「にじゅうごにち」。 |
| 守 | 名詞 | 国司のこと。ここでは特に新任の国司のことを指している。 |
| の | 格助詞 | |
| 館 | 名詞 | |
| より | 格助詞 | |
| 呼び | 動詞 | バ行四段活用動詞「呼ぶ」の連用形 |
| に | 格助詞 | |
| 文 | 名詞 | 手紙。 |
| 持て来 | 動詞 | カ行変格活用動詞「持て来」の連用形 |
| た | 助動詞 | 完了の助動詞「つ」の連体形の撥音便。 「たる」が撥音便になる⇒「たん」になる。⇒「ん」が表記されなくなり「た」だけになる、という遷移。 ★ルールとしてはラ変で活用する言葉の連体形に「めり、べし、なり」などが付くと「撥音便の無表記」が起きるというものであるが、受験生としては「あ/か/ざ/た/な」の下に「めり、べし、なり」のうちどれかが続いている場合は「ん」を入れて読む、という認識でOK。 |
| なり | 助動詞 | 伝聞の助動詞「なり」の終止形。 助動詞の「なり」は断定の「なり」と伝聞・推定の「なり」の二つが存在するが、前者は体言または連体形に接続、後者は終止形(ラ変型の活用語には連体形)に接続する。 『土佐日記』の冒頭部分、「男もすなる日記といふものを女もしてみむとてするなり」を覚えておけば、接続が導き出せる。 |
二十五日。(新しい)国司の館から、(前任の国司を)呼びに手紙を持って来たそうだ。
呼ばれて至りて、日一日、夜一夜、
| 呼ば | 動詞 | バ行四段活用動詞「呼ぶ」の未然形 |
| れ | 助動詞 | 受身の助動詞「る」の連用形。 助動詞「る」・「らる」は受身、尊敬、自発、可能の四つの意味をもつ。主な意味の見分け方は次のとおり。原則⇒文脈判断の順番で自然な訳を組み立てたい。 ①受身 ⇒「~に」(受身の対象)+「る」(「らる」) ②尊敬 ⇒尊敬語+「る」(「らる」) ③自発 ⇒知覚動詞(「思ふ」「しのぶ」「ながむ」等)+「る」(「らる」) ④可能 ⇒「る」(「らる」)+打消・反語 また、助動詞「る」「らる」は接続する動詞の活用の種類によって使い分けられるため、併せて覚えておきたい。 四段活用動詞、ナ行変格活用動詞、ラ行変格活用動詞の未然形は「る」が使われる。その他の動詞の未然形には「らる」が使われる。 「四段な(ナ変)ら(ラ変)る」と覚えるのも手。 |
| て | 接続助詞 | |
| 至り | 動詞 | ラ行四段活用動詞「至る」の連用形 |
| て | 接続助詞 | |
| 日一日 | 名詞 | 「一日中」の意。読みは「ひひとひ」。「ひ」が多い。 |
| 夜一夜 | 名詞 | 「一晩中」の意。読みは「よひとよ」。 |
呼ばれて行って、一日中、一晩中、あれやこれやと
とかく遊ぶやうにて明けにけり。
| とかく | 副詞 | ここでは「あれやこれや、何やかやと」の意で使われる |
| 遊ぶ | 動詞 | バ行四段活用動詞「遊ぶ」の連体形。 古文に見える「遊び」の多くは「詩歌管弦の遊び」を指す。 |
| やうに | 助動詞 | 比況の助動詞「やうなり」の連用形 |
| て | 接続助詞 | |
| 明け | 動詞 | カ行下二段活用動詞「明く」の連用形 |
| に | 助動詞 | 完了の助動詞「ぬ」の連用形。 同じ完了の意味で同じ連用形接続の「つ」との違いが聞かれることもあるのでまとめておく。 「ぬ」:自然的な作用を示す場合に用いられる ⇒ ex.「風立ちぬ」 「つ」:人為的、意図的な作用を示す場合に用いられる ⇒ex.「石炭をばはや積み果てつ」 【余談】 先の用例で紹介した「石炭をばはや積み果てつ」は森鴎外『舞姫』からの引用。高校の授業で『舞姫』を扱う学校は多いが、こだわりのある先生であればこの一文字で1時間の授業ができるほどの名文と言える。興味のある人は『舞姫』の中で「つ」と「ぬ」がどのように使い分けられているかチェックしてみてほしい。 |
| けり | 助動詞 | 過去の助動詞「けり」の終止形。 同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。 |
あれやこれやと管弦の遊びのようなことをして夜が明けてしまった。
今回はここまで🐸
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