【解答解説】京都大学2022(文系)大問1(現代文)/岡本太郎『日本の伝統』

【解答解説】京都大学2022(文系)大問1(現代文)/岡本太郎『日本の伝統』

こんにちは!こくご部です。

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はじめに

今回は京都大学2022(文系)大問1/岡本太郎『日本の伝統』現代文の解答例及び解説を掲載します。

語彙力はもちろん、高いレベルの論理的思考力と表現力が必要になる京都大学!

志望している人は早期の対策をおすすめします🐸

なお、著作権の関係から、 当ブログ作成の解答解説のみを掲載し
本文・設問は掲載していませんのでご了承ください。



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それでは行ってみましょう🔥


問1 内容説明問題

解答の方針・骨組み

傍線部「どっちがこれから~なくなってきます」についての内容説明問題。

★まず、傍線部について吟味する。
・「どっちが」
⇒「どっち」というからには2つの選択肢がある【対比】
⇒①「コーリンとか、タンニュー、トーハク」などの日本の芸術家
 ②「ダ・ヴィンチやミケランジェロ」などの西洋の芸術家

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・「伝統」
⇒本問のキーワードが登場。本文を読み始める前に必ず出典を確認したい

今回の出典が『日本の伝統』であることからも、「伝統」について論じていく・「伝統」を中心として語られていくのだと予想できる。

これらの情報があるだけでも本文の印象が変わることもあるので、まずは出典を確認するという癖をつけたい。(特に古文は必須!)

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・「これからの~分からなくなってきます」
⇒文字通り、「後世の日本人に引き継がれていくのは①か②分からない」と読んではならない
⇒これが筆者の言いたいことだろうか?筆者の言いたいことは何か?を考える:【反語】

⇒日本人なら知っているであろう、有名な日本の芸術家の名前が分からないということは、彼らの名前や功績は後世に受け継いで行かれるのか?という問いが生まれた

問1解答例

日本の若者に、日本の古典芸術家の名前を出しても伝わらないのに、西洋の古典芸術家は知っているといったように、将来に継承されていくべき日本の伝統が途絶えてしまうのではないかと危ぶまれるということ。


問2 内容説明問題

解答の方針・骨組み

傍線部「自分が法隆寺になればよいのです」についての内容説明問題。

★まず、傍線部について吟味する。

・「法隆寺」
⇒ここではどのようなものとして記述されているか整理する。

⇒3段落・法隆寺壁画焼失についての記述
「法隆寺は火災によってかえってポピュラーに~急に四倍に増えたということです」
金堂が焼け、壁画が見られなくなったこと(マイナス)を契機として世間の人々の関心を引いた(プラス)という例として引用されている

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・「法隆寺になればよい
⇒どのような比喩か?筆者の言いたいことは何か?を考える

⇒5段落「今さら焼けてしまったことを嘆いたり~」、7段落「失われたものが大きいなら~それを伝統におしあげたらよいのです」に注目。
⇒・「悔いと空虚を逆の力に作用させて、それよりもっとすぐれたものを作る」
 ・「そしてそれを伝統におしあげたらよいのです」

マイナスの「悔いと空虚」を「逆の力(=プラス、こくご部注)に作用させ」るという構図になっていることを押さえ、解答に盛り込む(ここではさらに「伝統までおしあげ」ることも合わせて盛り込む必要がある)。

⇒8段落「そのような不逞な気魄にこそ、伝統継承の直流がある」
幅広い指示語である「そのような」を用いてこれまでの段落を受け、まとめている

「ここ(「そのような不逞な気魄」)に伝統は直接的に継承されていく」というのが筆者の主張。

問2解答例

壁画が焼失して見物人が急増した法隆寺のように、何かを失ったとしても、それを穴埋めすることにとどまらず、消失に対する悔いと空虚さを昇華させてさらに優れたものとし、伝統へと押し上げるような不逞な気迫をもつ存在になればよいということ。


問3 理由説明問題

解答の方針・骨組み

傍線部「どうもアブナイ」について、何故筆者がこのように言うのかを説明する問題。

★まず、傍線部について吟味する。

・「アブナイ」
⇒何が「アブナイ」のか?
⇒「アブナイ(危ない)」というからには「何かが良くない/悪い状態・結果になりそうである」と思っているという状態であるはず。
⇒ここでは「何が良くて何が悪いのか」を整理しておく。

16段落「日本のまちがった伝統意識」(マイナス)
17段落「(王様はハダカで歩いてらぁと言う)子どもの透明な目」(プラス)
中身のない権威主義を鋭く射抜く、純粋無垢なものの象徴

また、傍線部直前の「用心していながら、逆に、うっかり敵の手にのりかかっていた」もヒント。
「マイナス」にならないように用心していたが、気付いたら「マイナス」になっていたという文脈であることを押さえる。

問3解答例

日本の間違った伝統意識を覆そうと様々な古典を見歩いているうちに、権威主義を脱しようとする至純な心を見失ってしまい、知らず知らずのうちにかえって伝統に対して権威主義的になってしまったから。


問4 内容説明問題

解答の方針・骨組み

傍線部「それこそ芸術の力であり」についての内容説明問題。

★傍線部に指示語が含まれている場合、まずは指示語の内容を押さえる。
⇒「そのくらい平気で、むぞうさな気分で~これは本ものだ」

・傍線部直前の「これ 本もの
⇒「は」は「対比」という用法をもつ。
日本語話者にとってイメージしやすいかもしれないが、「おじいさん山へ芝刈りに、おばあさん川へ洗濯に」という文章では、「おじいさん」と「おばあさん」がそれぞれ対比されている。

ここでは「これ本物だ」という表現になっているが、ここには「本物」と対比関係にある「偽物」が(記述はなくとも)見える

⇒何が「本物」で、何が「偽物」なのかをイメージしておくと解答のヒントになりうる。

★傍線部について吟味する。

・「それこそ芸術の力であり」
⇒「それ」の指示内容は上述のとおり。解答を作成する上では「それ」が指す内容を明らかにし、「力」はどのようなものかについて触れたい

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・「力」
⇒どのような力か?本問に限らず、「力」はプラス・マイナス両面の価値が存在し得るため、どちらの価値観で記述されているかを押さえる。

傍線部直前の19段落を押さえる。「文化的に根こそぎにされてしまった~これは本ものだ」
・「文化的に根こそぎにされてしまった」
⇒「即物的な再発見」により「権威やものものしい伝統的価値」が破壊された
これまでの「伝統」が無価値に
⇒「人間の空しさ」「みじめさを露呈」

・「が、そのくらい平気で、むぞうさな気分でぶつかって、しかもなお、もし打ってくるものがあるとしたら(中略)これは本物だ」

⇒逆接の「が」を見落とさない。空虚さや惨めさを露呈してしまっていても、「平気で、むぞうさな気分(=ありのままの心)」で作品に対して向き合い、その上で心を打つのであれば・・・という文脈。

問4解答例

作品の持つ権威や伝統的価値によらず、空しさとみじめさを露呈するほどにありのままの心で作品に対峙したとしても、それでもなお人間の心に訴えかけることこそが真の芸術の力であるということ。


問5 内容説明問題

解答の方針・骨組み

傍線部「ほんとうの芸術家」について説明する問題。

★「本文全体を踏まえて」の指示があるが、まずは傍線部について吟味する。

美に絶望し退屈している者こそほんとうの芸術家」とあるため、「ほんとうの芸術家」は「美に絶望し退屈している者」であることは明らかである。

よって、解答では「美に絶望し退屈している者」がどのような者であるかに触れたい。

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★「美に絶望し退屈している者」とはどのような者か?

〇20段落以降に見える「小林秀雄」の例から考える
自慢の骨董コレクションを持ち出して筆者に見せる
「骨董としてたいへん尊重される」もの=(そのもの本体についての評価でなく)「伝統・権威(歴史)」の観点によって評価している例

それに対して筆者は
・「私にはおもしろくもへったくれもない」
・「やせた後姿を見ながら、なにか、気の毒のような、もの悲しい気分だった」
⇒「絶望し退屈している者」の例。
⇒「伝統」や「権威」によって判断せず、自らの目や感覚(問3を参照)で判断する者

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★「本文全体の趣旨を踏まえ」の指示があるため、本文全体・各設問のエッセンスを抽出することを心がける
・「法隆寺の比喩」
・権威主義を射抜く「透明な目」
・真の「芸術の力」

問5解答例

権威や伝統的価値の楔から自らを解き放ち、それまでの時代の価値観そのものやその消失までをも昇華させ、純粋な自らの目と感性によって新たな伝統を生み出すという不逞な気迫を持って芸術に向き合おうとする者。


今回はここまで🐸

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