源氏物語『桐壺 光源氏の誕生』品詞分解/現代語訳/解説③
目次
はじめに
こんにちは!こくご部です。
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今回は前回の続きで、源氏物語の『桐壺 光源氏の誕生』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。
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前回の記事:源氏物語『桐壺 光源氏の誕生』品詞分解/現代語訳/解説②
必要に応じて解説なども記しています。
古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥
それでは行ってみましょう!
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父の大納言は亡くなりて、母北の方なむ、
父 | 名詞 | |
の | 格助詞 | 同格の用法。 「父」=「大納言」。 逐語的に訳すと「父で(あって)大納言である(者は)」となる。 「の」の下に読点(、)がある場合、主格用法または同格用法となることが多い。 |
大納言 | 名詞 | 大臣に次ぐ地位で、政治に参与する。 上達部の官位役職については下図を参照されたい。 なお、小豆には「大納言」という品種があるが、「身が大きいこと・皮が破れないこと(⇒大納言は殿中で抜刀しても切腹しなくてよい)・大納言の烏帽子に見た目が似ていること」などからこのように名付けられたとのだとか。 |
は | 係助詞 | |
亡くなり | 動詞 | ラ行四段活用「亡くなる」の連用形。 直接的な類義語の「死ぬ」は変格活用だが、こちらはシンプルに四段活用。 |
て | 接続助詞 | |
母 | 名詞 | |
北の方 | 名詞 | 貴人の妻のこと。 「平安時代~室町時代の貴族の邸宅様式である寝殿造の北側(北の対)に正妻を住まわせたことから」という説と、「中国において、屋敷の北側に主婦の居室として設けた『北堂』がもとになっている」という説がある。 類義語として「上」があるが、こちらは天皇の意味もあるため、読解の際には注意が必要。 |
なむ | 係助詞 | 強意の係助詞。 「なむ」は通常、文末を連体形にするが、後続は「もてなしたまひけれど、」と続き、助動詞「けり」は已然形になっている。このように、係り結びの「結び」が消滅することを「結びの流れ」という。 〈結びの流れが起きるパターン〉 〇接続助詞により文章が続く場合 ⇒係助詞も接続助詞も、関わる語を特定の活用形にする力(接続)を持っている。(係助詞は文末を連体形または已然形に、接続助詞は上の語を特定の形に変える。) ⇒これらが同時に存在する時、接続助詞の接続が優先され、係助詞による係り結びが生じない。 〇係助詞の後、長文が挿入されている場合 ⇒係助詞の後に文章が挿入されていれば必ず結びの流れが起きるというわけではないことを押さえておきたい。 |
父の大納言は亡くなって、母・北の方は
【参考】官位役職について(上達部編)
いにしへの人の、由あるにて、
いにしへ | 名詞 | 「昔」や「以前」、「古風」などの訳語を当てる。 「いにしへの 奈良の都の 八重桜 やへざくら けふ九重に にほひぬるかな」は覚えておきたい。 |
の | 格助詞 | |
人 | 名詞 | |
の | 格助詞 | 同格用法。 「体言」+「の」、(読点)「体言」の形は主格の用法または同格の用法になることが多い。 |
由 | 名詞 | ★重要単語 「理由」や「方法」、「縁」など文脈に応じて様々な訳語が当てられる。ここでは「由緒」という訳を当てているが、どのような訳語が適切か迷う場合はその字を含んだ熟語を作り、文脈にあてはめてみよう。これは漢文でも有効な手法であるので、身に付けておきたい。 |
ある | 動詞 | ラ行変格活用動詞「あり」の連体形 |
に | 助動詞 | 断定の助動詞「なり」の連用形 |
て | 接続助詞 |
古風な人で(あって)、由緒のある人であり、
親うち具し、さしあたりて世の覚え花やかなる御方々にも劣らず、
親 | 名詞 | |
うち具し | 動詞 | サ行変格活用動詞「(うち)具す」の連用形。 「連れる」、「揃う」などの意味がある。 また、「うち」は接頭語。動詞に付いて、語調を整えたり、直後に続く動詞の意味を強めたりする働きがあるので、合わせて覚えておきたい。 |
さしあたりて | 副詞 | 現実に。 |
世 | 名詞 | 原義は「終わりや限界のある時間・空間」。 「世間」や「生涯」、「前世/現世/来世」など文脈により様々な訳語が当てられるが、頻出は「男女・夫婦の仲」の訳語。 ここでは「世の中」や「世間」の訳語を当てる。 |
の | 格助詞 | |
覚え | 名詞 | ★重要単語 動詞の「おぼゆ」が名詞化したもの。 世間や貴人から特別に愛されることを「おぼえ」という。 どちらの意味で使われているか判断するには文脈や前につく語に注目しよう。 ⇒例えば「御」が「覚え」の前にある場合、「御は」貴人に対する敬意を示すために付けられているため、「貴人から愛されている」という状況であり「寵愛」などの訳語を当てる。 この場合は世間や社会を表す「世」が直前にあるため、「評判」などの訳語を当てる。 |
花やかなる | 形容動詞 | ナリ活用の形容動詞「花やかなり」の連体形。 視覚的に鮮やかで美しいことや、時代の潮流に乗り栄えていることを示す。 |
御方々 | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
も | 係助詞 | |
劣ら | 動詞 | ラ行四段活用動詞「劣る」の未然形 |
ず | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の終止形 |
両親がそろっていて、現実に世間の評判が華やかである方々にも劣らず、
何ごとの儀式をも、もてなしたまひけれど、
何ごと | 名詞 | 何ごと。どんなこと(でも)。 |
の | 格助詞 | |
儀式 | 名詞 | |
を | 格助詞 | |
も | 係助詞 | |
もてなし | 動詞 | サ行四段活用動詞「もてなす」の連用形。 現代でも「おもてなし」や「(人を)もてなす」の形で残っているように、「(客を)もてなす」や「応対する」、「物事を執り行う」などの意味がある。 |
たまひ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「給ふ」の連用形。 「給ふ」には四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。 なお、この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なさる」、「~なさる」という意。 |
けれ | 助動詞 | 過去の助動詞「けり」の已然形。 |
ど | 接続助詞 | 逆接の確定条件を示す。 現代でも「待てど暮らせど」などの形で残っている。 |
(宮中の)どんな儀式に対しても(北の方が)とりはからってこられたが、
とりたてて、はかばかしき後ろ見しなければ、
とりたて | 動詞 | タ行下二段活用動詞「とりたつ」の連用形。 「(物を)取り上げる」などの意味があるが、ここでは「(話題として)特別に取り上げる」の意味。 |
て | 接続助詞 | |
はかばかしき | 形容詞 | シク活用の形容詞「はかばかし」の連体形。 ★重要単語 「仕事がはかどる」のように、物事の進捗や進み具合を示す「はか」から成る語。物事が順調に進む様子から、「しっかりしている」や「際立っている」などの意味を持つ。 |
後ろ見 | 名詞 | ★重要単語 「後見(こうけん」とも言う。政治的・経済的に後ろ盾となり、援助する存在。通常、父や兄などの男性がなるが、桐壺更衣にはその「後ろ見」がおらず、権力闘争の時代においては非常に危うい立場に置かれている。 |
し | 副助詞 | 強調の副助詞。特段の訳出は不要。 |
なけれ | 形容詞 | ク活用の形容詞「なし」の已然形 |
ば | 接続助詞 | ★重要文法 接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。 ①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない) ⇒仮定(もし~ならば) ②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている) ⇒ (ⅰ)原因・理由(~なので) (ⅱ)偶然(~したところ) (ⅲ)必然(~するといつも) |
(桐壺更衣には)これといってしっかりした後見人がいないので、
事ある時は、なほよりどころなく心細げなり。
事 | 名詞 | |
ある | 動詞 | ラ行変格活用動詞「あり」の連体形 |
時 | 名詞 | |
は | 係助詞 | |
なほ | 副詞 | ★重要単語 現代にも残っている「依然としてやはり(変わらず)」、「よりいっそう」のほか、「なんといってもやはり」などの意味があり、文脈に応じて適切な訳語を当てる。 |
よりどころ | 名詞 | 頼りとするもの、根拠。 |
なく | 形容詞 | ク活用の形容詞「なし」の連用形 |
心細げなり | 形容動詞 | ナリ活用の形容動詞「心細げなり」の終止形。 「げ」は接尾語で、形容動詞などの用言に付き「~そう」「~らしい」という意味を付け加える。 |
いざとなった時には、やはり頼るところもなく(桐壺更衣は)心細そうである。
今回はここまで🐸
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