平家物語『祇園精舎』品詞分解/現代語訳/解説②
こんにちは!こくご部です。
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今回は平家物語の『祇園精舎』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。
必要に応じて解説なども記しています。
古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥
それでは行ってみましょう!
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目次
遠く異朝をとぶらへば、
遠く | 形容詞 | ク活用の形容詞「遠し」の連体形 |
異朝 | 名詞 | 外国のこと。ここでは特に中国のことを指す。 読みは「いてう」。後に出てくる「本朝(=日本)」と対になる表現である。 |
を | 格助詞 | |
とぶらへ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「とぶらふ」の已然形。 「とぶらふ」は漢字を当てると「訪ふ」となり、「尋ねる(訪ねる)」の意味。 |
ば | 接続助詞 | ★重要文法 接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。 ①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない) ⇒仮定(もし~ならば) ②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている) ⇒ (ⅰ)原因・理由(~なので) (ⅱ)偶然(~したところ) (ⅲ)必然(~するといつも) ここでは偶然で取ると自然か。 |
遠い中国に尋ねると、
秦の趙高、漢の王莽、梁の朱异、唐の禄山、
秦 | 名詞 | 戦国の七雄の一つに数えられた国の名前。読みは「しん」。 『キングダム』で有名な始皇帝のときに中国統一を果たした国である。 |
の | 格助詞 | |
趙高 | 名詞 | 秦代の宦官。読みは「てうかう」。 始皇帝の死後、長子である扶蘇を殺して、次子である胡亥を立てて二代目の皇帝とした。始皇帝の代で丞相の地位にあった李斯を殺し、権力をふった。二代目皇帝の胡亥も殺し、三代目として子嬰を位につけたが、その子嬰に一族とともに殺された。 |
漢 | 名詞 | 高祖(劉邦)が秦を滅ぼして立てた国の名前。 |
の | 格助詞 | |
王莽 | 名詞 | 前漢末に平帝を毒殺して国を奪い、みずから帝位について新を建国した。しかし、在位十五年で、後漢の光武帝に滅ぼされた。 読みは「わうまう」。 |
梁 | 名詞 | 読みは「りやう」。 |
の | 格助詞 | |
朱异 | 名詞 | 梁の武帝に仕え、自分の思うがままに政治を行った。内乱が起きた際に自殺をした人物。 読みは「しうい」。 |
唐 | 名詞 | |
の | 格助詞 | |
禄山 | 名詞 | 玄宗皇帝に仕え、楊貴妃の養子になるほど気に入られ、権力をふるうようになった。 禄山と懇意であった宰相が亡くなり、自分の権威が脅かされるようになったため乱を起こしたが、嫡子によって殺されてしまう。 読みは「ろくさん」。 |
秦の趙高、漢の王莽、梁の朱异、唐の禄山、
これらはみな、旧主先皇の政にも従はず、
これら | 代名詞 | ここでは先に見える秦の趙高、漢の王莽、梁の朱异、唐の禄山のことを指す。 |
は | 係助詞 | |
みな | 名詞 | |
旧主 | 名詞 | 読みは「きうしゆ」。 |
先皇 | 名詞 | 読みは「せんくわう」。「旧主」も「先皇」も似た意味で、先代の君主のことを指す。 |
の | 格助詞 | |
政 | 名詞 | 「まつりごと」と読む。政治のこと。 |
に | 格助詞 | |
も | 係助詞 | |
従は | 動詞 | ハ行四段活用動詞「従ふ」の未然形 |
ず | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の連用形 |
これらはみんな、以前仕えたことのある主君や皇帝の政治にも従わず、
楽しみをきはめ、諫めをも思ひ入れず、
楽しみ | 名詞 | |
を | 格助詞 | |
きはめ | 動詞 | マ行下二段活用動詞「きはむ」の連用形 |
諫め | 名詞 | 「臣下から主に行う忠告」の意。読みは「いさめ」。「諫言(かんげん)」という語も併せて覚えておきたい。 漢文においても臣下から君主に諫言を行うエピソードは頻出。 |
を | 格助詞 | |
も | 係助詞 | |
思ひ入れ | 動詞 | ラ行下二段活用動詞「思ひ入る」の未然形。 「深く心にとどめる」という意味を持つ語。 「思ひ入る」がラ行四段活用動詞として使われる場合は、「深く思いこむ」という意味を持ち、自動詞として使われるため注意が必要。 |
ず | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の連用形 |
楽しみを極め、(人の)忠告をも深く心にとどめず、
天下の乱れんことを悟らずして、
天下 | 名詞 | |
の | 格助詞 | 主格用法 |
乱れ | 動詞 | ラ行下二段活用動詞「乱る」の未然形 |
ん | 助動詞 | 婉曲の助動詞「む」の連体形。 助動詞「む」は多くの意味をもつが、以下のように判別の手掛かりになる「ルール」があるので整理しておきたい。 ※必ず文脈判断を踏まえること。この「ルール」は「この意味になることが多い」程度の認識でいること。 【原則】 助動詞「む」が文末にある場合 ・主語が一人称⇒意志 ・主語が二人称⇒適当/当然/命令 ・主語が三人称⇒推量 助動詞「む」が文中に連体形で出てきた場合 ・「む(連体形)」+「は」、「に」、「には」、体言⇒仮定 ・「む(連体)」+体言⇒婉曲 ※婉曲は助動詞「む」を訳出しなくても文意が通じる場合。 |
こと | 名詞 | |
を | 格助詞 | |
悟ら | 動詞 | ラ行四段活用動詞「悟る」の未然形 |
ず | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の連用形 |
して | 接続助詞 |
天下が乱れるようなことを悟らないで、
民間の愁ふるところを知らざつしかば、
民間 | 名詞 | |
の | 格助詞 | 主格用法 |
愁ふる | 動詞 | ハ行下二段活用動詞「愁ふ」の連体形。 読みは「うれふ」。 |
ところ | 名詞 | |
を | 格助詞 | |
知ら | 動詞 | ラ行四段活用動詞「知る」の未然形 |
ざつ | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の連用形の促音便 |
しか | 助動詞 | 過去の助動詞「き」の已然形。 同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。 |
ば | 接続助詞 |
人民が嘆くところを知らなかったので、
久しからずして、亡じにし者どもなり。
久しから | 形容詞 | シク活用の形容詞「久し」の未然形 |
ず | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の連用形 |
して | 接続助詞 | |
亡じ | 動詞 | サ行変格活用動詞「亡ず」の連用形 |
に | 助動詞 | 完了の助動詞「ぬ」の連用形。 同じ完了の意味で同じ連用形接続の「つ」との違いが聞かれることもあるのでまとめておく。 「ぬ」:自然的な作用を示す場合に用いられる ⇒ ex.「風立ちぬ」 「つ」:人為的、意図的な作用を示す場合に用いられる ⇒ex.「石炭をばはや積み果てつ」 【余談】 先の用例で紹介した「石炭をばはや積み果てつ」は森鴎外『舞姫』からの引用。高校の授業で『舞姫』を扱う学校は多いが、こだわりのある先生であればこの一文字で1時間の授業ができるほどの名文と言える。興味のある人は『舞姫』の中で「つ」と「ぬ」がどのように使い分けられているかチェックしてみてほしい。 |
し | 助動詞 | 過去の助動詞「き」の連体形 |
者ども | 名詞 | 「ども」は接尾語。名詞について、同じ種類のものが複数であることを示す。海賊王を目指す某国民的キャラクターが「野郎ども」と言っていることからも想像しやすいかもしれない。 また、現在の「私ども」のように、謙遜を示す場合に使われることもある。 |
なり | 助動詞 | 断定の助動詞「なり」の終止形 |
長く続かずに滅びてしまった者たちである。
今回はここまで🐸
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