平家物語『祇園精舎』品詞分解/現代語訳/解説③

平家物語『祇園精舎』品詞分解/現代語訳/解説③

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今回は平家物語の『祇園精舎』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説なども記しています。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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近く本朝をうかがふに、

近く    形容詞  ク活用の形容詞「近し」の連体形
先に見えた「遠く」、この後見える「ま近く」に対応する
本朝名詞本国,、つまり日本のこと。読みは「ほんてう」。
先に見えた「異朝(=外国/中国)」と対になる表現。
格助詞
うかがふ動詞ハ行四段活用動詞「うかがふ」の連体形。
ここでは「調べる、尋ね求める」の意味で使われる。
接続助詞
近い本国を調べると、

承平の将門、天慶の純友、康和の義親、平治の信頼、

承平     名詞    読みは「しようへい」。元号の一つ。
格助詞
将門名詞平将門のこと。読みは「まさかど」。
九三五年に関東で乱を起こすも、五年後に負けて亡くなった人物。
天慶名詞読みは「てんぎやう」。元号の一つ。
格助詞
純友名詞藤原純友のこと。読みは「すみとも」。
九三九年に現在の愛媛県のあたりで乱を起こすも、二年後に降伏した人物。
将門が東国で、純友が西国で、ほぼ同時期に欄を起こしたため、この二つの乱は承平・天慶の乱と呼ばれる。
康和名詞読みは「かうわ」。元号の一つ。
格助詞
義親名詞源義親のこと。
対馬守に就任するも乱暴な行いをし、隠岐に流される。乱暴な行いを反省することなく、出雲に渡り悪行を重ねたため、朝廷から派遣された使いによって討たれた。
平治名詞読みは「へいぢ」。元号の一つ。
格助詞
信頼名詞藤原信頼のこと。読みは「のぶより/しんらい」。
一一五九年に源義朝と乱を起こすも、平清盛に負けた。
承平の将門、天慶の純友、康和の義親、平治の信頼、
 

これらはおごれる心も猛きことも、

これら    代名詞    ここでは先の「承平の将門、天慶の純友、康和の義親、平治の信頼」を指す
係助詞
おごれ動詞ラ行四段活用動詞「おごる」の已然形。
「得意がる、思い上がる」といった意味を持つ語。
助動詞存続の助動詞「り」の連体形。
接続を覚えるための語呂合わせは「サ未四已(さみしい)りっちゃん」派か「サ未四已りかちゃん」派かで分かれる。
教室に「り」で始まる子がいるとその日はイジられる可能性が高い。
名詞
係助詞
猛き形容詞ク活用の形容詞「猛し」の連体形。
ここでは「勢いが盛んだ」の意味で使われる。
こと名詞
係助詞
これらは思い上がっている心も勢いが盛んであることも、

みなとりどりにこそありしかども、

みな   名詞  
とりどりに形容動詞ナリ活用の形容動詞「とりどりなり」の連用形。
「思い思いだ、いろいろだ、さまざまだ」といった意味を持つ語。
こそ係助詞強意の係助詞。
「こそ」は通常、文末を已然形にするが、接続助詞により文章が続いている。このように、係り結びの「結び」が消滅することを「結びの流れ」という。

〈結びの流れが起きるパターン〉
〇接続助詞により文章が続く場合
⇒係助詞も接続助詞も、関わる語を特定の活用形にする力(接続)を持っている。(係助詞は文末を連体形または已然形に、接続助詞は上の語を特定の形に変える。)
⇒これらが同時に存在する時、接続助詞の接続が優先され、係助詞による係り結びが生じない。
〇係助詞の後、長文が挿入されている場合
⇒係助詞の後に文章が挿入されていれば必ず結びの流れが起きるというわけではないことを押さえておきたい。
あり動詞ラ行変格活用動詞「あり」が補助動詞として使われている。
ここでは「あり」本来の意味である「存在する」という意味ではなく、「~の状態である」という意味で使われていることに注意する。
しか助動詞過去の助動詞「き」の已然形。
同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。
ども    接続助詞    逆接の接続助詞。已然形接続ということも押さえておきたい。
みなさまざまであったが、

ま近くは、六波羅の入道前太政大臣平朝臣清盛公と申しし人のありさま、

ま近く      形容詞       ク活用の形容詞「近し」の連用形。「ま」は接頭語。
先に見える「遠く」「近く」と対応する表現。
係助詞
六波羅の入道名詞読みは「ろくはらのにふだう」。「六波羅」は、現在の京都市東山区、賀茂川の東岸一帯、五条より南、七条より北のあたりをさす。平安時代に平家一門の邸宅があった場所。

「入道」は仏道に入って修行すること、またその人のことを意味する語。
前太政大臣助動詞読みは「さきのだいじやうだいじん」。「前」はここでは「以前の」という意味で使われる。

「太政大臣」は政治において最終決定権を持った、最高位の長官のこと。
平朝臣清盛公名詞読みは「たひらのあつそんきよもりこう」。「朝臣」は平安時代に、五位以上の貴族男子の姓または名の下に付けた敬意を表す語のこと。

平清盛は、一一六七年に太政大臣となるも、同じ年にその役職を辞めて、翌年に出家をした。

「公」は、大臣などの貴人の姓名に付けて敬意を表す語。
格助詞
申し動詞サ行四段活用動詞「申す」の連用形。
「言ふ」の謙譲語として使われ、作者から平朝臣清盛公への敬意が示される。
助動詞過去の助動詞「き」の連体形
名詞
格助詞
ありさま名詞

最も近いものは、六波羅の入道、以前の太政大臣である平朝臣清盛公と申した人のありさまを、

伝へ承るこそ、心も言葉も及ばれね。

伝へ承る    動詞     ハ行下二段活用動詞「伝ふ」の連用形+ラ行四段活用動詞「承る」の連体形。
「承る」は、「受く」の謙譲語、「聞く」の謙譲語、「承諾する」等の謙譲語の意味がある。
ここでは「受く」の謙譲語として使われ、作者から平朝臣清盛公への敬意が示される。
こそ係助詞強意の係助詞
名詞
係助詞
言葉名詞「詞」と表記する場合もある。
係助詞
及ば動詞バ行四段活用動詞「及ぶ」の未然形
助動詞可能の助動詞「る」の未然形。
助動詞「る」・「らる」は受身、尊敬、自発、可能の四つの意味をもつ。主な意味の見分け方は次のとおり。原則⇒文脈判断の順番で自然な訳を組み立てたい。

①受身 ⇒「~に」(受身の対象)+「る」(「らる」)
②尊敬 ⇒尊敬語+「る」(「らる」)
③自発 ⇒知覚動詞(「思ふ」「しのぶ」「ながむ」等)+「る」(「らる」)
④可能 ⇒「る」(「らる」)+打消・反語

また、助動詞「る」「らる」は接続する動詞の活用の種類によって使い分けられるため、併せて覚えておきたい。
四段活用動詞、ナ行変格活用動詞、ラ行変格活用動詞の未然形は「る」が使われる。その他の動詞の未然形には「らる」が使われる。
「四段な(ナ変)ら(ラ変)る」と覚えるのも手。
助動詞打消の助動詞「ず」の已然形。
係助詞「こそ」を受けて、係り結びが成立している。
伝え受け継ぐことは、想像もできず言葉で表すこともできない。

今回はここまで🐸

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