大鏡『競べ弓』品詞分解/現代語訳/解説④
目次
はじめに
こんにちは!こくご部です。
定期テスト対策から大学受験の過去問解説まで、「知りたい」に応えるコンテンツを発信します。
今回は大鏡から『競べ弓』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。
必要に応じて解説も記しておきます。
古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥
それでは行ってみましょう!
⇓前回の記事はこちらから
初めの同じやうに、的の破るばかり、同じ所に射させたまひつ。
初め | 名詞 | 道長の「摂政・関白すべきものなら~」というセリフ(前回の記事参照)の続きである。 「初めの」は既に刺さっている、的の中心を射た矢のことを指す。 |
の | 格助詞 | |
同じ | 形容詞 | シク活用の形容詞「同じ」の連体形。 「同じ」などは語尾が「ジ」という音であるが、「ジク活用」は存在しないので注意。 |
やう | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
的 | 名詞 | |
の | 格助詞 | 主格用法 |
破る | 動詞 | ラ行下二段活用動詞「破る」の終止形 |
ばかり | 副助詞 | 程度の副助詞。 限定の用法もあるので合わせて覚えておこう。 |
同じ | 形容詞 | シク活用の形容詞「同じ」の連体形。 「同じ所」は矢の真ん中であり、再び道長が矢の中心に命中させたことを示している。 |
所 | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
射 | 動詞 | ヤ行上一段活用動詞「射る」の未然形 |
させ | 助動詞 | 尊敬の助動詞「さす」の連用形。 ここでは語り手から入道殿(道長)への敬意が示される。 |
たまひ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「たまふ」の連用形。 ここでは尊敬の補助動詞として使われ、語り手から入道殿への敬意が示される。 |
つ | 助動詞 | 完了の助動詞「つ」の終止形 |
初めの矢と同じように、的が割れるほど(勢いよく)同じ所に射なさった。
饗応し、もてはやしきこえさせたまひつる興もさめて、こと苦うなりぬ。
饗応し | 動詞 | サ行変格活用動詞「饗応す」の連用形。 「機嫌をとること、とりいること」、「食事の席を設けて人をもてなすこと」といった意味を持つ。 ここでは前者の意味で使われる。 |
もてはやし | 動詞 | サ行四段活用動詞「もてはやす」の連用形。 ここでは「歓待する、大切に優遇する」の意味で使われる。 |
きこえ | 動詞 | ★重要単語 ヤ行下二段活用動詞「きこゆ」の未然形。 「聞こえる」「評判になる」「分かる」などの一般動詞としての用法と、「言ふ」の謙譲語である「申し上げる」、謙譲の補助動詞である「お~申し上げる」の用法がある。謙譲語としての「聞こゆ」は、直前に動詞があるかどうかで意味を判別する必要がある。 ここでは謙譲の補助動詞として使われ、語り手から入道殿への敬意が示される。 |
させ | 助動詞 | 尊敬の助動詞「さす」の連用形。 ここでは語り手から中の関白殿への敬意が示される。 |
たまひ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「たまふ」の連用形。 ここでは尊敬の補助動詞として使われ、語り手から中の関白殿への敬意が示される。 |
つる | 助動詞 | 完了の助動詞「つ」の連体形 |
興 | 名詞 | |
も | 係助詞 | 強意の係助詞 |
さめ | 動詞 | マ行下二段活用動詞「さむ」の連用形 |
て | 接続助詞 | |
こと | 名詞 | |
苦う | 形容詞 | ク活用の形容詞「苦し」の連用形のウ音便。気まずい、の意で使われる。 「こと苦し」で一語と捉える説もある。 せっかくもてなしたのに、その場の空気は最悪である。 |
なり | 動詞 | ラ行四段活用動詞「なる」の連用形 |
ぬ | 助動詞 | 完了の助動詞「ぬ」の終止形 |
(入道殿の)機嫌をとり、歓待し申し上げた興もさめて、気まずくなってしまった。
父大臣、帥殿に、「何か射る。な射そ、な射そ。」
父大臣 | 名詞 | 藤原道隆のこと。今までの「中の関白殿」と同じ。 |
帥殿 | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
何 | 代名詞 | |
か | 係助詞 | 反語の係助詞 |
射る | 動詞 | ヤ行上一段活用動詞「射る」の連体形。 直前の「か」を受けて係り結びが成立している。 |
な | 副詞 | ★重要文法 終助詞「そ」と呼応し、直後の動詞の内容を禁止する。 「な~そ」でセットであるが、終助詞「そ」単独で禁止を表すこともある。 もはや勝ち目がないことから、伊周(帥殿)に弓を射させないようにしたということである。 |
射 | 動詞 | ヤ行上一段活用動詞「射る」の連用形 |
そ | 終助詞 | 禁止の終助詞 |
な | 副詞 | |
射 | 動詞 | ヤ行上一段活用動詞「射る」の連用形 |
そ | 終助詞 | 禁止の終助詞 |
父大臣は、帥殿に、「どうして(矢をこれ以上)射るのか、いや、射らなくてよい。射るな、射るな。」
と制したまひて、ことさめにけり。
と | 格助詞 | |
制し | 動詞 | サ行変格活用動詞「制す」の連用形。 漢字のとおり、「制止する」の意。 |
たまひ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「たまふ」の連用形。 ここでは尊敬の補助動詞として使われ、語り手から中の関白殿(父大臣)への敬意が示されている。 |
て | 接続助詞 | |
ことさめ | 動詞 | マ行下二段活用動詞「ことさむ」の連用形。 興がさめる、しらける、の意。 |
に | 助動詞 | 完了の助動詞「ぬ」の連用形 |
けり | 助動詞 | 過去の助動詞「けり」の終止形。 同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。 その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。 |
と制止なさって、興がさめてしまったということである。
今回はここまで🐸
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