徒然草『ある人、弓射ることを習ふに』品詞分解/現代語訳/解説②
目次
はじめに
こんにちは!こくご部です。
定期テスト対策から大学受験の過去問解説まで、「知りたい」に応えるコンテンツを発信します。
今回は徒然草から『ある人、弓射ることを習ふに』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。
必要に応じて解説も記しておきます。
古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥
それでは行ってみましょう!
道を学する人、夕べには朝あらむことを思ひ、朝には夕べあらむことを思ひて、
道 | 名詞 | 当時、「道」といえば「仏道修行の道」を指すことがほとんどであったが、「学問の道」を指すこともある。 ここでは仏道のこと。 |
を | 格助詞 | |
学する | 動詞 | サ行変格活用動詞「学す」の連体形 |
人 | 名詞 | |
夕べ | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
は | 係助詞 | |
朝 | 名詞 | 「あした」と読む。文脈に応じて「翌朝」「早朝」と使い分けたい。 ここでは「翌朝」の意。 |
あら | 動詞 | ラ行変格活用動詞「あり」の未然形。 ラ変動詞は「あり」「をり」「はべり」「いまそが(か)り/いますが(か)り」を押さえておこう。 |
む | 助動詞 | 婉曲の助動詞「む」の連体形。 助動詞「む」は多くの意味をもつが、以下のように判別の手掛かりになる「ルール」があるので整理しておきたい。 ※必ず文脈判断を踏まえること。この「ルール」は「この意味になることが多い」程度の認識でいること。 【原則】 助動詞「む」が文末にある場合 ・主語が一人称⇒意志 ・主語が二人称⇒適当/当然/命令 ・主語が三人称⇒推量 助動詞「む」が文中に連体形で出てきた場合 ・「む(連体形)」+「は」、「に」、「には」、体言⇒仮定 ・「む(連体)」+体言⇒婉曲 ※婉曲は助動詞「む」を訳出しなくても文意が通じる場合。 |
こと | 名詞 | |
を | 格助詞 | |
思ひ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「思ふ」の連用形 |
朝 | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
は | 係助詞 | |
夕べ | 名詞 | |
あら | 動詞 | ラ行変格活用動詞「あり」の未然形 |
む | 助動詞 | 婉曲の助動詞「む」の連体形。上記を参照。 |
こと | 名詞 | |
を | 格助詞 | |
思ひ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「思ふ」の連用形 |
て | 接続助詞 | 「明日はテストだけど、まだ時間があるしゲームしてから勉強しよう」「勉強に備えて仮眠してから勉強しよう」と思ったことのある人は少なくないのではないだろうか。 まさに時代を超越した文章である。 |
仏道を修行する人は、夕方には翌日の朝があるようなことを思い、朝には今日の夕方があるようなことを思って、
かさねてねんごろに修せむことを期す。
かさねて | 副詞 | 「もう一度」「再び」などの意。 |
ねんごろに | 形容動詞 | ナリ活用の形容動詞「ねんごろなり」の連用形。 漢字をあてると「懇ろなり」であるとおり、こころをこめて熱心に、親しくする様子を表す語。 「熱心だ」、「親しい」と訳すが、ここでは前者の訳をする。読みも大事なので併せて覚えておこう。 |
修せ | 動詞 | サ行変格活用動詞「修す」の未然形。 「しゅ(す)」と読むことが多い。修行するの意。 同義語に「おこなふ」がある。 |
む | 助動詞 | 婉曲の助動詞「む」に連体形 |
こと | 名詞 | |
を | 格助詞 | |
期す | 動詞 | サ行変格活用動詞「期す」の終止形。 「期(ご)す」と読むことが多い。 ここでは「心積もりをする」の意味で使われる。 |
もう一度熱心に修行するようなことを心積もりする。
いはんや一刹那のうちにおいて、懈怠の心あることを知らむや。
いはんや | 副詞 | 漢文の用法と同じ。 「いはんや○○(において)△△をや」の形で、「ましてや○○は言うまでもない。△△であれば当然だ」という意味になる。 |
一刹那 | 名詞 | 一瞬間のこと。仏教用語で、短い時間のことをいう。 「刹那」は「せつな」と読む。キャラクターの名前にも度々見かける。俺が○○だ。 |
の | 格助詞 | |
うち | 名詞 | |
において | 連語 | 場所、時、場合などを表す語を表す語が後に続き、文を続ける働きをする。 「~に」「~にて」「~で」と訳す。 漢文でいう「於いて」と同じ。 |
懈怠 | 名詞 | 仏教用語で「なまけ、おこたる心」の意。「けだい」と読むことが多い。 「なまける」も「おこたる」も同じ漢字であるが、なかなか含蓄が深いように思われる。 |
の | 格助詞 | |
心 | 名詞 | |
ある | 動詞 | ラ行変格活用動詞「あり」の連体形 |
こと | 名詞 | |
を | 格助詞 | |
知ら | 動詞 | ラ行四段活用動詞「知る」の未然形 |
む | 助動詞 | 推量の助動詞「む」の終止形 |
や | 係助詞 | 反語の係助詞。主張の一部である。 |
ましてや一瞬の間に怠ける心があることを知っているだろうか、いや、知らないだろう。
なんぞ、ただいまの一念において、ただちにすることのはなはだ難き。
なんぞ | 副詞 | 「なんぞ」には以下の二通りの使い方がある。 ①どうして~か。なぜ~か。 ⇒疑問の用法 ②どうして~か、いや、~ない ⇒反語の用法 漢文の「何ぞ」と併せて覚えておくとよい。 なお、文末は連体形で結ぶことも重要である。 |
ただいま | 名詞 | (ほかならぬ)現在、今、の意味を持つ |
の | 格助詞 | |
一念 | 名詞 | 「一刹那」と同様に「一瞬間」のこと。 |
において | 連語 | |
ただちに | 副詞 | |
する | 動詞 | サ行変格活用動詞「す」の連体形 |
こと | 名詞 | |
の | 格助詞 | |
はなはだ | 副詞 | 漢字をあてると「甚だ」。 「たいそう」「ひどく」と訳すとおり、程度を表す語。 打消の語を伴うと、「全く」の意味になるので注意。 |
難き | 形容詞 | ク活用の形容詞「難し」の連体形。 読み方は「かた(き)」。「なんぞ」を受けて連体形となっている。 この一文も主張の一部である。 |
どうして(ほかならぬ)現在の一瞬間に、すぐに実行することがたいそう難しいのか。
今回はここまで🐸
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