【解答解説】関西大学2020(学部個別2月4日)古文/『大鏡』
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はじめに
今回は関西大学2020(学部個別2月4日)古文の解答例及び解説を掲載します。
なお、著作権の関係から、 当ブログ作成の現代語訳と解答解説のみを掲載し、
設問は掲載していませんのでご了承ください。
また、品詞分解は別の機会に譲ろうと思いますのでしばしお待ちください!
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それでは行ってみましょう🔥
出典について
まずは出典の大鏡について触れておきましょう。
ジャンル
歴史物語。文字通り「歴史」と「物語」を融合させた文学の総称。主に宮中をめぐる歴史を題材としており、かな文により記述されている点において「六国史」などの正史と異なる。
大鏡について
平安時代後期に成立。「鏡」が歴史の真実を映し出すことから「鏡」と名付けられたという説もある。藤原氏が摂関政治を行い、大いに隆盛をふるった時代に批判的な立場をとる。(⇔藤原氏の栄華を賛美する歴史物語『栄花物語』)
四鏡について
「鏡物」という平安時代~室町時代の歴史書として、『大鏡』のほかに『今鏡』『水鏡』『増鏡』がある。
四鏡の成立順は大鏡⇒今鏡⇒水鏡⇒増鏡であり、一文字目を取って「大今水増(だいこんみずまし。大根水増し?)」と覚えるのが一般的。なお、成立順は上記の「大今水増」であるが、内容を時代順にすると「水大今増(みずだいこんまし。水菜のような味がする新種の大根:「水大根」の味は悪くない=マシと覚えよう。苦しい)
本文・現代語訳『大鏡』
おほかた昔は、前の頭の挙によりて、のちの頭はなることにてはべりしなり。
ふつうは昔は、前任の蔵人の頭の推挙によって、後任の蔵人の頭は任命されることでありました。
されば、殿上に、我なるべしなど思ひたまへりける人は、
そこで、殿上人に「(次の蔵人の頭は)自分だろうなどとお思いになっていた人は、
今宵と聞きて、まゐりたまへるに、いづこもととかにさしあひたまへりけるを、
今夜(蔵人の頭の任命がある)と聞いて、参内なさっていたところ、どこらあたりかで (行成に) ばったりであわれて、
「たれぞ」と問ひたまひければ、御名のりしたまひて、
「どなたでしょうか」とお尋ねになったところ、(行成は)お名乗りになって、
「頭になしたびたれば、まゐりてはべるなり」とあるに、あさましとあきれてこそ、動きもせで立ちたまひたりけれ。
「蔵人の頭にしてくださったので、参内しているのです」と言うので、見苦しいことだとあきれて、動きもしないで(その場に)お立ちになっていらっしゃった。
げに思ひがけぬことなれば、道理なりや。
本当に思いがけないことであるので、(あきれて呆然とその場に立ち尽くしたことは)もっともなことであるよ。
おほかた、この御族の頭あらそひに、かたきをつきたまへば、
ふつうは、この(伊尹の)ご一族は蔵人の頭(に誰が任命されるか)の争いで敵をお作りなったので、
これもいかがおはすべからむ。みな人しろしめしたることなれど、
この人(行成)もどのようでいらっしゃるだろうか。全ての人がご存じであることであるが、
朝成の中納言と一条摂政とおなじおりの殿上人にて、品のほどこそ一条殿とひとしからねど、
朝成の中納言と一条摂政とは同じ頃、殿上人でありで、身分こそ一条殿にかなわないものの、
身のざえ、人おぼえやむごとなき人なりければ、頭になるべき次第いたりたるに、
才能や世間の評判はともにすぐれた人であったので、蔵人の頭になるはずの順序が到来し、
又この一条殿、さらなり、道理の人にておはしけるを、この朝成の君申したまひけるやう、
またこの一条殿は、言うまでもなく、(蔵人の頭になることが)当然であるような人でいらっしゃったので、この朝成の君が申し上げになったことには、
「殿はならせたまはずとも、人わろく思ひ申すべきにあらず。のちのちにも御心にまかせさせたまへり。
「殿は(蔵人の頭に)おなりにならなくても、世間の人も良くないようにはお思い申し上げないでしょう。後々にも(あなたのお)心のまま(にできる方)でいらっしゃる。
おのれは、このたびまかりはづれなば、いみじう辛かるべきことにてなむはべるべきを、このたび、申させたまはではべりなむや」
わたしは、この度(蔵人の頭の任命から)もれてしまいましたならば、非常につらいであろうことでありましょうから、この度は、蔵人の頭になると申し上げなさらないでいただけませんか」
と申したまひければ、「ここにも、さ思ふことなり。さらば申さじ」とのたまふを、
と申し上げなさったところ、「わたしも、そう思っていることです。それならば蔵人の頭になると申し上げないでおきましょう」とおっしゃったので、
いとうれしと思はれけるに、いかにおぼしなりにけることにか、
非常に嬉しいとお思いになったが、(伊尹は)どのようにお思いになるようになってしまったことなのか、
やがて問ひごともなく、なりたまひにければ、「かくはかりたまふべしやは」と、
そのまま(朝成への)問いかけもなく、(蔵人の頭に)おなりになってしまったので、「このような謀があっていいものか」と、
いみじう心やましと思ひ申されけるに、御仲よからぬやうにて過ぎたまふほどに、
(朝成は)非常に忌々しくお思い申し上げなさったので、二人の御仲が良くないままお過ごしになるうちに、
この一条院殿のつかまつり人とかやのために、なめきことしたうびたりけるを、
この一条院殿にお仕えしているとかいう者に、失礼なことを(朝成が)しなさったので、
(伊尹)「本意なしなどばかりは思ふとも、いかに、ことにふれて、われなどをば、かくなめげにもてなすぞ」と、
「(蔵人の頭になれなかったのが)残念だ程度のことは思っても、どうしたことか、折に触れて、わたしたちに、このように失礼に振る舞うのか」と、
むつかりたまふと聞きて、「あやまたぬよしも申さむ」とて、まゐられたりけるに、
(朝成は、伊尹が)腹を立てなさっていると聞いて、「過失はないという事情も申し上げよう」と言って、(伊尹のもとへ)参上なさったが、
はやうの人は、われより高き所にまうでては、「こなたへ」となきかぎりは、うへにものぼらで、しもに立てることになむありけるを、
昔の人は、自分よりも身分が高い(方の)ところへ参上する際、「こちらへ(どうぞ)」と声をかけられないかぎり、部屋にも上がらないで、外に立つことになっていたが、
これは六七月のいとあつくたへがたきころ、かくと申させて、今や今やと、中門に立ちて待つほどに、
これは六、七月の非常に暑く、(日差しが)耐えられない頃で、これこれだと(供の者に)申し上げさせて、今か今かと、中門に立って待つうちに、
西日もさしかかりて、あつくたへがたしとはおろかなり。心地もそこなはれぬべきに、
西日もさしかかって、暑くて耐えられない様は、言葉では言い尽くせない。気分も悪くなってしまうので、
「はやう、この殿は、われをあぶりころさむとおぼすにこそありけれ。益なくもまゐりにけるかな」と思ふに、
「もともと、この殿(伊尹)は、私(朝成)をあぶり殺そうとお思いになっているのだ。無駄に参上してしまったものだなあ」と思うと、
すべて悪心おこるとは、おろかなり。
悪い心が湧き立つ様は、言葉では全く言い尽くせない。
夜になるほどに、さてあるべきならねば、笏をおさへて立ちければ、はたらと折れけるは、いかばかりの心をおこされにけるにか。
夜になるころ、そのまま待っていてもいられないので、菊を握りしめて立ち去ろうとしたところ、音を立てて折れたのは、どれほどの怒りが心に湧き上がってのことだったのだろうか。
さて家に帰りて、「この族、ながく絶たむ。もし男子も女子もありとも、はかばかしくてはあらせじ。あはれといふ人もあらば、それをも恨みむ」
そうして(朝成は)家に帰って、「この一族を、永久に絶ってやる。もし男子や女子がいたとしても、しっかりとは(無事には)いさせまい。かわいそうだという人もいるならば、その者も恨んでやる」
などちかひてうせたまひにければ、代々の御悪霊とこそはなりたまひたれ。
などと誓ってお亡くなりになったので、(伊尹の)代々にとっての悪霊となってしまわれた。
されば、まして、この殿近くおはしませば、いとおそろし。
そのため、ましてこの殿(行成)は(伊尹に)近い存在でいらっしゃるので、(朝成の呪いが)非常に恐ろしい。
殿の御夢に、南殿の御うしろ、かならず人のまゐるに通る所よな、
道長の御夢に、紫宸殿の正殿の北庇に、必ず(殿上)人が参上するために通るところだな、
そこに人の立ちたるを、たれぞとみれど、顔は戸のかみにかくれたれば、よくもみえず。
そこに人が立っているので、誰であろうかと見るが、顔は戸の上部に隠れているので、よくは見えない。
あやしくて、「たそたそ」と、あまたたび問はれて、「朝成にはべり」といらふるに、夢のうちにもいとおそろしけれど、念じて、
不思議に思って、「誰でしょうか、誰でしょうか」と何度もお尋ねになり、「朝成でございます」と答えるので、夢の中でも非常に恐ろしいが、我慢して、
「などかくては立ちたまひたるぞ」と問ひたまひければ、「頭の弁のまゐらるるを待ちはべるなり」
「どうしてこうやってお立ちになっているのか」とお尋ねになったところ、「頭の弁(行成)が参上なさるのを待っているのです」
といふとみたまひて、おどろきて、「今日は公事ある日なれば、とくまゐらるらむ。不便なるわざかな」とて、
と言うとご覧になって、目を覚まして、「今日は公事のある日なので、(行成は)すぐに参上なさるだろう。不都合なことだ」と言って、
「夢にみえたまへることあり。けふは、御やまひ申しなどもして、ものいみかたくして、なにかまゐりたまふ。こまかにはみづから」とかきて
「夢に見えなさったことがある。今日は、ご病気だと申し上げるなどして、物忌みを厳重にして、参上しなさってはいけない。詳細は直接」と書いて、
いそぎたてまつりたまへど、ちがひて、いととくまゐりたまひにけり。
急いで差し上げなさったが、行き違いになって、(行成は)非常に早く参上なさってしまった。
まもりのこはくやおはしけむ、れいのやうにはあらで、北の陣より藤壺・後涼殿のはさまより通りて、殿上にまゐりたまへるに、
(行成は神仏の)加護が厳重でいらっしゃったのだろうか、いつものようではなくて、朔平門から藤壷・後涼殿の間を通って、殿上の間に参上なさったので、
(道長)「こはいかに。御消息たてまつりつるは、御覧ぜざりつるか。かかる夢をなむみはべりつるは」。
(道長は)「これはどうしたことか。お手紙を差し上げたのは、ご覧にならなかったのか。このような夢を見たのです」。
手をはたとうちて、いかにぞとこまかにも問ひ申させたまはず、又ふたつものものたまはでいでたまひにけり。
(行成は))手を音を立てて打ち、どのようかと詳細にもお尋ね申し上げなさらず、またふたつの言葉もおっさはらないで退出なさってしまった。
さて御いのりなどして、しばしはうちへもまゐりたまはざりけり。このもののけの家は、三条よりは北、西洞院よりは西なり。
そうして (行成は)ご祈祷などを行い、しばらくは宮中へも参上なさらなかった。この(朝成の)物の怪の家は、三条通よりは北、西洞院通よりは西にある。
今に一条殿の御族あからさまにもいらぬところなり。
今でも一条殿のご一族はほんのちょっとでも立入らないところである。
問1
a 「自分だと聞いていた」「その人が~おっしゃったので」「趣深く感じら~だけだった」「筋の通った」が不適。
c 「蔵人の頭の殿へ」「その人は」「行成は」が不適。
d 「自分だと聞いていた」「蔵人の頭の殿へ」が不適。
e 「どうかわたしを~申し上げた」「不可解なもの」が不適。
問2
a 「同じ年に生まれた」「伊尹よりも」が不適。
b 「官職こそ」が不適。
c 「官職こそ」「身長も高く」が不適。
d 「同じ年に生まれた」「身長も高く」「容貌」が不適。
問3
a 「のちのちにはっきりすること」「何をいわれるか~いかないのです」「あなたが名乗り出てください」が不適。
b 「あなたが~いわないでしょう」「推挙」「推挙して」「では~しましょう」が不適。
d 「だれも~いわない」「あなたが名乗り出てください」が不適。
e 「あなたが~いわないでしょう」「今回はわたしを推挙して」が不適。
問4
a 「伊尹は「これでは~なる」」「心やましく思われ」が不適。
b 「伊尹は朝成の申し出を」「やむを得ない事情で」「「これは何か~ちがいない」」「二人は~ながら」が不適。
d 「伊尹は朝成の申し出を」「「これではだまされたのと同じだ」」「伊尹は~ないまま」が不適。
e 「「どんな計りごとがあったのか」」「いぶかしく」が不適。
問5
a 「疑問に思っておられる」が不適。
b 「人から~はたらかれたところ」「しなくてはならない」「疑問に思っておられる」「自分が受けたこと」が不適。
c 「わたしが~ないのに」「疑問に思っておられる」「伊尹が自ら~ということを」が不適。
d 「人から~はたらかれたところ」「言いがかりをつけるのだ」が不適。
問6
b 「朝成の心をくみ取ったのか」「自然と」が不適。
c 「伊尹にあぶり殺されそうになったので」「立ちあがってしまわれた」が不適。
d 「無益な行動を嘆いた」「悪い心が~わからず」「折ってしまわれた」が不適。
e 「無分別な行動を嘆いた」「笏をたよりに~だろうか」が不適。
問7
a 「その形相が」「今日の参内の予定を教えよ」が不適。
b 「その形相は」「行成を不憫に思い」が不適。
c 「朝成を不憫に思い」「どうして参内しないのか」が不適。
d 「その形相は」「病をおしてでも~するように」が不適。
問8
a 「読み間違って」「あまり早いので~だった」「悪霊のことに恐れおののいて」が不適。
b 「あまり早いので~だった」「悪霊のことに恐れおののいて」が不適。
c 「読み間違って」「悪霊のことに恐れおののいて」が不適。
e 「門番は~からである」が不適。
問9
かわいそうだという人もいたら、その人も恨んでやる。
今回はここまで🐸
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