平家物語『祇園精舎』品詞分解/現代語訳/解説④

平家物語『祇園精舎』品詞分解/現代語訳/解説④

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今回は平家物語の『祇園精舎』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。

必要に応じて解説なども記しています。

古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥

それでは行ってみましょう!

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その先祖を尋ぬれば、

そ    代名詞  ここでは「平朝臣清盛公」を指す。
格助詞
先祖名詞
格助詞
尋ぬれ動詞ナ行下二段活用動詞「尋ぬ」の已然形
接続助詞★重要文法
接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。
①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない)
⇒仮定(もし~ならば)
②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている)

(ⅰ)原因・理由(~なので)
(ⅱ)偶然(~したところ)
(ⅲ)必然(~するといつも)

ここでは偶然で取ると自然か。
その先祖を調べると、

桓武天皇第五の皇子、一品式部卿葛原親王九代の後胤、

桓武天皇     名詞    平安時代の礎を築いた人物。平安京を造都したことで有名。
読みは「くわんむてんのう」。
第五名詞
格助詞
皇子名詞
一品式部卿名詞読みは「いつぽんしきぶきやう」。「一品」は親王の位の第一位のこと。
「式部卿」は文官の名簿の管理や朝廷の儀式等を司った式部省の長官のこと。
葛原親王名詞読みは「かづらはらのしんわう」。
式部卿、常陸太守、太宰帥等を任じられ、一品となった人物。歴任した役職の中でも式部卿として名高かった。
九代名詞
格助詞
後胤名詞子孫の意。読みは「こういん」。
桓武天皇の第五皇子、一品式部卿葛原親王、第九代の子孫、
 

讃岐守正盛が孫、刑部卿忠盛朝臣の嫡男なり。

讃岐守    名詞    読みは「さぬきのかみ」。「讃岐」は現在の香川県のこと。
正盛名詞読みは「まさもり」。源義親の乱を収めた人物。海賊や僧兵を討伐する際に活躍した。
格助詞
名詞
刑部卿名詞読みは「ぎやうぶきやう」。罪人を処罰すること等を司った刑部省の長官のこと。
忠盛朝臣名詞読みは「ただもりのあつそん」。白河上皇、後鳥羽上皇に寵愛され、地位を築いていった人物。
海賊を討伐し、西国に平家一門の基礎を築いた。

「朝臣」は平安時代に、五位以上の貴族男子の姓または名の下に付けた敬意を表す語のこと。
格助詞
嫡男名詞読みは「ちゃくなん」。 正妻の生んだ(最初)の男子のこと。
なり助動詞断定の助動詞「なり」の終止形。
助動詞の「なり」は断定の「なり」と伝聞・推定の「なり」の二つが存在するが、前者は体言または連体形に接続、後者は終止形(ラ変型の活用語には連体形)に接続する。
『土佐日記』の冒頭部分、「男もすなる日記といふものを女もしてみむとてするなり」を覚えておけば、接続が導き出せる。
讃岐守正盛の孫で、刑部卿忠盛朝臣の嫡男である。

かの親王の御子、高視の王、無官無位にして失せたまひぬ。

か   代名詞  葛原親王を指す
格助詞
親王名詞
格助詞
御子名詞
高視の王    名詞    読みは「たかみのわう」。
無官名詞
無位名詞
助動詞断定の助動詞「なり」の連用形
して接続助詞
失せ動詞サ行下二段活用動詞「失す」の連用形
たまひ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の連用形。
「たまふ」は四段活用と下二段活用があり、前者が尊敬語、後者が謙譲語であるので注意が必要。
この場合は尊敬の補助動詞であり、「お~なる」、「~なさる」という意。
作者から高視の王への敬意が示される。
助動詞完了の助動詞「ぬ」の終止形。
同じ完了の意味で同じ連用形接続の「つ」との違いが聞かれることもあるのでまとめておく。
「ぬ」:自然的な作用を示す場合に用いられる
⇒ ex.「風立ちぬ」
「つ」:人為的、意図的な作用を示す場合に用いられる
⇒ex.「石炭をばはや積み果てつ」

【余談】
先の用例で紹介した「石炭をばはや積み果てつ」は森鴎外『舞姫』からの引用。高校の授業で『舞姫』を扱う学校は多いが、こだわりのある先生であればこの一文字で1時間の授業ができるほどの名文と言える。興味のある人は『舞姫』の中で「つ」と「ぬ」がどのように使い分けられているかチェックしてみてほしい。
あの葛原親王の御子(である)、高視の王は、無官無位でお亡くなりになった。

その御子、高望の王の時、初めて平の姓を賜つて、

そ      代名詞       高視の王を指す
格助詞
御子名詞
高望の王名詞読みは「たかもちのおう」。
格助詞
名詞
初めて副詞
名詞
格助詞
名詞
格助詞
賜つ動詞ラ行四段活用動詞「賜る」の連用形の促音便。
「受く」「もらふ」の謙譲語、「与える」の尊敬語の意味がある。
ここでは「もらふ」の謙譲語として使われ、作者から天皇への敬意が示される。
接続助詞

その御子(である)、高望の王の時に初めて平の姓を(天皇から)いただいて、

上総介になりたまひしより、たちまちに王氏を出でて人臣に連なる。

上総介    名詞     読みは「かずさのすけ」。
「上総」は現在の千葉県中部のことで、「介」は長官を補佐する役職のこと。
格助詞
なり動詞ラ行四段活用動詞「なる」の連用形
たまひ動詞ハ行四段活用動詞「たまふ」の連用形。
尊敬の補助動詞として使われ、作者から高望の王への敬意が示される。
助動詞過去の助動詞「き」の連体形。
同じ過去でも「き」は直接過去(自身の体験)、「けり」は間接過去(他者の経験)と分けられる場合がある(混同されている場合もある)。その場合は 「き」「けり」で主語が判別できることがあるので、 それぞれニュアンスを押さえよう。
より格助詞
たちまちに副詞
王氏名詞皇族で、臣下としての姓を賜っていない人々のこと。
格助詞
出で動詞ダ行下二段活用動詞「出づ」の連用形
接続助詞
人臣名詞家来、臣下の意
格助詞
連なる動詞ラ行四段活用動詞「連なる」の終止形。
「列に入る、列をなす」、「連れ立つ」といった意味を持つ語。
ここでは前者の意味で使われる。
上総介におなりになってから、すぐに皇族を離れて臣下の列に入る。

今回はここまで🐸

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