【現代語訳】共通テスト2021第二日程(古典①古文)『山路の露』
こんにちは!こくご部です。
定期テスト対策から大学受験の過去問解説まで、「知りたい」に応えるコンテンツを発信します。
はじめに
今回は【現代語訳】共通テスト2021第二日程(古典①古文)『山路の露』と題打って、現代語訳を掲載します。
なお、著作権の関係から、 当ブログ作成の現代語訳のみを掲載し、設問は掲載していませんのでご了承ください。
また、品詞分解や解答解説は別の機会に譲ろうと思いますので、しばしお待ちください!
共通テスト開始から年数が立ち、過去問も充実してきました。
2025年度入試からはいわゆる「実用文」が出題される見込みですが、一朝一夕の付け焼刃では歯が立たないのは当然です。
来年以降の共通テストを受験される予定の方も、早期の対策をおすすめします。
本文・現代語訳
夕霧たちこめて、道いとたどたどしけれども、深き心をしるべにて、
夕霧が立ち込めて、道は非常におぼつかないが、(女君への)深い心を道しるべにして、
急ぎわたり給ふも、かつはあやしく、今はそのかひあるまじきを、と思せども、
急いで向かいなさるにつけても、一方では不思議で、「今となっては(女君の元に向かって行ったとしても)どうにもならないであろうに」、と(男君は)お思いになるが、
ありし世の夢語りをだに語り合はせまほしう、行く先急がるる御心地になむ。
せめて過ぎ去った昔の夢語り(夢のように消え去ってしまうようなはかない話)だけでも互いに語り合いたいと、(男君は)自然と先が急がれるようなお気持ちであった。
浮雲はらふ四方の嵐に、月なごりなうすみのぼりて、千里の外まで思ひやらるる心地するに、
浮雲を払い去るような四方の嵐に、月が影もなく澄んで空に上って、はるか遠くまで思いやられるような気持ちがして、
いとど思し残すことあらじかし。山深くなるままに、道いとしげう、露深ければ、
いっそうもの思いをしつくさないで残すことがないであろうよ。山が深くなるにつれて、道は非常に(草木が)生い茂り、(草木につく)露が深いので、
御随身いとやつしたれどさすがにつきづきしく、御前駆の露はらふ様もをかしく見ゆ。
御随身(貴人が外出する際に付き従う者)は非常に(服装を)目立たないようにみすぼらしくしているが、やはり(男君が女君の元に忍んで向かっているという状況に)似つかわしく、御前駆(貴人などを先導する役目。貴人が濡れてしまわないように、草木に残る露や雨水を払っている。いわゆる「露払い」である。)が露を払う様子も風情があるように見える。
かしこは、山のふもとに、いとささやかなる所なりけり。まづかの童を入れて、案内み給へば、
あそこ(女君の居場所)は、山のふもとで非常にこぢんまりとした場所であった。まずあの童(女君の弟)を中に入れて様子をうかがわせてみると、
「こなたの門だつ方は鎖して侍るめり。竹の垣ほしわたしたる所に、通ふ道の侍るめり。
「こちらの門のような場所は閉じてあるようです。竹垣(注:「垣ほ(垣穂)」=垣根。)を広く設けてあるところに、(そこから)通る道があるようです。
ただ入らせ給へ。人影もし侍らず」と聞こゆれば、
すぐお入りください。人影もございません。」と(童(女君の弟)が男君に)申し上げると、
「しばし音なくてを」とのたまひて、我ひとり入り給ふ。
(男君は)「しばらく、静かにしていてね」と仰って、ご自分だけで(中に)入りなさる。
小柴といふものはかなくしなしたるも、同じことなれど、いとなつかしく、よしある様なり。
小柴というものを形ばかりしつらえてあるのも、(人里から離れた山里では誰も訪れることがないため、どのようなものであったとしても)同じことだが、非常に心が惹かれ、風情がある様子である。
妻戸も開きて、いまだ人の起きたるにや、と見ゆれば、しげりたる前栽のもとよりつたひよりて、
妻戸(両開きの戸)も開いていて、「まだ人が起きているのであろうか」と思われるので、(男君は)茂っている前栽(庭の植え込み)のもとから伝い寄って、
軒近き常磐木の所せくひろごりたる下にたち隠れて見給へば、こなたは仏の御前なるべし。
(家の)軒に近い常盤木(松や杉などの常緑樹)の枝が所狭しと広がっている下に立ち隠れてご覧になると、こちらは仏の御前であるようだ。
名香の香、いとしみ深くかをり出でて、ただこの端つ方に行ふ人あるにや、
仏前でたく香が非常に色濃く香ってきて、ちょうどこの端の方で仏道修行をする人がいるのだろうか、
経の巻き返さるる音もしのびやかになつかしく聞こえて、しめじめとものあはれなるに、
経が巻き返される音も、ひそやかに心が惹かれるように聞こえて、しんみりと趣深く感じたので、
なにとなく、やがて御涙すすむ心地して、つくづくと見給へるに、とばかりありて、行ひはてぬるにや、
何となく、そのまま御涙があふれる思いがして、しんみりとご覧になっていたところ、しばらくして、仏道修行も終わったのであろうか、
「いみじの月の光や」とひとりごちて、簾のつま少し上げつつ、
「とっても美しい月の光だこと」と(女君は)独り言を言って、簾の端を少し上げ、
月の顔をつくづくとながめたるかたはらめ、昔ながらの面影ふと思し出でられて、
月の表情をしんみりと眺めている(女君の)横顔(注:「かたはらめ(傍ら目)」=横顔)は、昔のままの面影がふと思い出されて、
いみじうあはれなるに、見給へば、月は残りなくさし入りたるに、鈍色、香染などにや、
非常に心を打たれ、ご覧になると、月の光が一面に差し込んでいるところに、(出家者が身に着ける衣の色である)鈍色、香染などであろうか、
袖口なつかしう見えて、額髪のゆらゆらと削ぎかけられたるまみのわたり、
袖口が心が惹かれる様子で見えて、額髪がゆらゆらとして削がれた目元のあたりは、
いみじうなまめかしうをかしげにて、かかるしもこそらうたげさまさりて、
非常に美しく優美で、このような様子(であること)が(女君の)かわいらしさを増幅させ、
忍びがたうまもり給へるに、なほ、とばかりながめ入りて、
(男君はそのまま見ているのが)耐えがたく見守っていらっしゃるが、(女君は)やはり、少しばかり(月を)眺めて、
「里わかぬ雲居の月の影のみや見し世の秋にかはらざるらむ」
(女君)里を区別せず照らす、空高く上る月の光だけが、かつて見た秋と見たものと変わっていないようだ(打って変わって私は変わってしまったことよ。)
と、しのびやかにひとりごちて、涙ぐみたる様、いみじうあはれなるに、
とひそやかに独り言(和歌)をつぶやいて、涙ぐんでいる様子は、非常に心を惹かれる様子で、
まめ人も、さのみはしづめ給はずやありけむ、
きまじめな人(男君)も、それ(隠れて見ている)だけでは心を静めることがおできにならなかったのであったろうか、
「ふるさとの月は涙にかきくれてその世ながらの影は見ざりき」
(男君)ふるさとの月は(私の)涙に暗くなり、過ぎ去ったあの頃のままの(月の)光は見えなかった(女君が私の前から去り、とめどなくあふれる涙で月をまともに見ることができなかった)
とて、ふと寄り給へるに、いとおぼえなく、化け物などいふらむものにこそと、
と詠んで、(男君は)ふと(女君に)寄りなさると、(女君は)非常に思いもよらず、「(これは)化け物などと(世間で)言うものであろう」と
むくつけくて、奥ざまに引き入り給ふ袖を引き寄せ給ふままに、せきとめがたき御気色を、
気味悪がり、奥の方へ入ろうとなさる(女君の)袖を(男君が)引き寄せなさるにつけても、こらえ難い(男君の)ご様子に、
さすが、それと見知られ給ふは、いと恥づかしう口惜しくおぼえつつ、
(女君は)「そうはいってもやはり、(これは)男君だ」とお気づきになり、ひどく恥ずかしく口惜しく思われて、
ひたすらむくつけきものならばいかがはせむ、世にあるものとも聞かれ奉りぬるをこそは憂きことに思ひつつ、
「ただ気味が悪いもの(人間ではないもの)であるならばどうしようか、いやどうしようもない(本当に化け物であったならばよかったのに)。(自分が)この世に生きていると(男君)に聞かれ申し上げたことをつらいと思いながら、
いかであらざりけりと聞きなほされ奉らむと、とざまかうざまにあらまされつるを、
『何とかして(女君は)も(この世に)いない(=死んでしまった)と聞き直していただきたい』とあれこれ願っていたが、
のがれがたく見あらはされ奉りぬると、せむかたなくて、涙のみ流れ出でつつ、
逃れ難く(男君に)見つけられ申し上げてしまった」と、どうしようもなくて、涙だけが流れ出て、
我にもあらぬ様、いとあはれなり。
我を忘れた(女君の)様子は、非常にかわいそうである。
今回はここまで🐸
リクエストなどもお待ちしています!
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