【解答解説】共通テスト2022(古典①古文)『増鏡』『とはずがたり』

こんにちは!こくご部です。
定期テスト対策から大学受験の過去問解説まで、「知りたい」に応えるコンテンツを発信します。
はじめに
今回は共通テスト2022(古典①古文)と題打って、古典(古文)の解答例及び解説を掲載します。
なお、著作権の関係から、 当ブログ作成の現代語訳と解答解説のみを掲載し、
設問は掲載していませんのでご了承ください。
また、品詞分解は別の機会に譲ろうと思いますのでしばしお待ちください!
共通テストを受験された方、お疲れ様でした。
大手予備校の分析によると例年通り~やや難化となっていますが、形式に驚くことなく対応できたでしょうか。
一朝一夕の付け焼刃では歯が立たないことがお分かりいただけるかと思います。
来年以降の共通テストを受験される予定の方も、早期の対策をおすすめします。
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本文・現代語訳 〈文章Ⅰ〉『増鏡』
院も我が御方にかへりて、うちやすませ給へれど、まどろまれ給はず。
後深草院もご自室に戻り、ちょっとお休みになっているが、眠ることはおできにならない。
ありつる御面影、心にかかりておぼえ給ふぞいとわりなき。
さきほどの斎宮のお顔が心に忘れられなくお思いになるのは非常に分別がない。
「さしはへて聞こえむも、人聞きよろしかるまじ。いかがはせむ」と思し乱る。
「わざわざ申し上げるようなことも、人聞きが悪いであろう。どうしようか、いや、どうしようもない」とあれこれと悩みなさる。
御はらからといへど、年月よそにて生ひたち給へれば、うとうとしくならひ給へるままに、
御兄妹といっても、長年(互いに)離れ離れで成長しなさっているので、よそよそしくなっておられるので、
つつましき御思ひも薄くやありけむ、なほひたぶるにいぶせくてやみなむは、
遠慮するお気持ちも薄かったのであろうか、やはりひたすらに気が晴れずに終わってしまうようなのは、
あかず口惜しと思す。けしからぬ御本性なりや。
不満で残念なことだとお思いになる。けしからん性格でいらっしゃることよ。
なにがしの大納言の女、御身近く召し使ふ人、かの斎宮にも、
何某の大納言の娘(二条)という、後深草院が近くに置いて召し使いなさる人で、あの斎宮にも
さるべきゆかりありて睦ましく参りなるるを召し寄せて、
相応な縁があって親しくお仕えしている人をお呼び寄せになって、
「なれなれしきまでは思ひ寄らず。ただ少しけ近き程にて、思ふ心の片端を聞こえむ。
「なれなれしいほどまで(になろうと)は思っていない。ただ少し傍で、(私の)気持ちを一部を申し上げよう(と思っている)。
かく折よき事もいと難かるべし」とせちにまめだちてのたまへば、
このような絶好の機会も簡単には得られないだろう」と切実にまじめにおっしゃるので、
いかがたばかりけむ、夢うつつともなく近づき聞こえ給へれば、いと心憂しと思せど、
どのように工夫したのだろうか、夢とも現実ともなく(院が斎宮に)近づき申し上げなさったので、(斎宮は)非常につらいとお思いになるが、
あえかに消えまどひなどはし給はず。
弱々しく消え惑うようなことはなさらない。
本文・現代語訳 〈文章Ⅱ〉『とはずがたり』
斎宮は二十に余り給ふ。ねびととのひたる御さま、神もなごりを慕ひ給ひけるもことわりに、
斎宮は二十余歳でいらっしゃる。成熟しているご様子は、伊勢の神様も名残惜しみお慕いなった(斎宮を退きながらも、帰郷せずにしばらく伊勢にとどまっていた)のも道理であるが、
花といはば、桜にたとへても、よそ目はいかがとあやまたれ、
花で言えば、桜に例えても、傍から見た様子はどうだろうか、桜に違いないと間違えられるほどで、
霞の袖を重ぬるひまもいかにせましと思ひぬべき御ありさまなれば、
美しい桜の花を霞が隠すように、顔を袖で隠すちょっとした間も、「なんとかして斎宮のお顔を拝見したいものだ」と思ってしまうであろうご様子であるので、
ましてくまなき御心の内は、いつしかいかなる御物思ひの種にかと、よそも御心苦しくぞおぼえさせ給ひし。
まして好色な院の御心のうちは、早くもどんな物思いの種であろうかと、他人の私(二条)であっても、心苦しいことと思われます。
御物語ありて、神路の山の御物語など、絶え絶え聞こえ給ひて、
(院と斎宮は)お話しなさり、伊勢神宮に奉仕していた頃の思い出話などをぽつぽつと申し上げなさって、
「今宵はいたう更け侍りぬ。のどかに、明日は嵐の山の禿なる梢どもも御覧じて、御帰りあれ」など申させ給ひて、我が御方へ入らせ給ひて、いつしか
「今夜はすっかり更けてしまいました。ゆっくり、明日は嵐山の落葉した木々の梢などを御覧になって、お帰りください」などと(院は)申し上げなさって、自身のお部屋へお入りになって、早くも、
「いかがすべき、いかがすべき」と仰せあり。思ひつることよと、をかしくてあれば、)
「どうすべきであろうか。どうすべきであろうか」とおっしゃる。思った通りのことだよ〉と面白く思いっていたところ、
「幼くより参りししるしに、このこと申しかなへたらむ、まめやかに心ざしありと思はむ」
「幼い頃から私に仕えてきた証拠に、このことを(斎宮に)申し上げてくれたのなら、(私はあなたを)誠実で誠意があると思おう」
など仰せありて、やがて御使に参る。
などと御命令があって、そのまますぐ院の使いとして斎宮のもとに参上する。
ただおほかたなるやうに、「御対面うれしく。御旅寝すさまじくや」などにて、
ただ普通であるように、「お目にかかれて、うれしく思います。(伊勢からの)旅寝は興ざめなものでしたか」などと書いて、
忍びつつ文あり。氷襲の薄様にや、
密かに院の手紙がある。氷襲の薄様であろうか、
「知られじな今しも見つる面影のやがて心にかかりけりとは」
ご存じではないでしょう。たった今見たあなたの面影が、そのまますぐに心に忘れられなくなっているとは。
更けぬれば、御前なる人もみな寄り臥したる。
夜が更けたので、斎宮の御前にいる人もみな、(壁などに)寄りかかって横になっている。
御主も小几帳引き寄せて、御殿龍りたるなりけり。
斎宮も小さい几帳を引き寄せて、お休みになっているのであった。
近く参りて、事のやう奏すれば、御顔うち赤めて、いと物ものたまはず、
斎宮の近くに参上して、事態をご報告申し上げると、斎宮はお顔をちょっと赤らめて、対して言葉を発しなさらない。
文も見るとしもなくて、うち置き給ひぬ。
(院からの)手紙も読もうとせず、置いてしまわれた。
「何とか申すべき」と申せば、
「(お返事として院に)何と申し上げましょうか」と申し上げると、
「思ひ寄らぬ御言の葉は、何と申すべき方もなくて」とばかりにて、
「思いもよらないお言葉は、(お返事に)申し上げる言葉もなくて」とだけで、
また寝給ひぬるも心やましければ、帰り参りて、このよしを申す。
再びお休みになったのも気に食わないなので、院のところに帰って、この旨を申し上げる。
「ただ、寝たまふらむ所へ導け、導け」と責めさせ給ふもむつかしければ、
「とにかく、寝ていらっしゃる(ような)場所に私を連れていけ、連れていけ」と催促なさるのも煩わしいので、
御供に参らむことはやすくこそ、しるべして参る。
お供として参るようなことは簡単で、案内をして(斎宮の寝屋へ)参上する。
甘の御衣などはことごとしければ、御大口ばかりにて、忍びつつ入らせ給ふ。
甘の御衣(上皇の平服として着用する直衣)などは仰々しいので、ただ大口袴(束帯のときに表袴の下にはく裾口の広い下袴)だけで、人目を避けながらお入りになる。
まづ先に参りて、御障子をやをら開けたれば、ありつるままにて御殿能りたる。
まず(私=二条が)先に参上して、障子をそっと開けたところ、斎宮はさきほどの様子のままお休みになっている。
御前なる人も寝入りぬるにや、音する人もなく、
御前に仕える人も寝入ってしまったのだろうか、音を立てる人もなく、
小さらかに入らせ給ひぬる後、いかなる御事どもかありけむ。
院が体を縮めて小さくしてお入りになった後、どのようなことがあったのであろうか。
問1 解釈問題
★まずは必ず品詞分解をする。最初は辞書的な意味で判断し、そこから文脈判断を加えて選択肢を削っていく。
今年度は語彙・文法のレベルがそこまで高いものではなく、判断に迷った受験生も少なかったように思われる。
「まどろま」:マ行四段活用動詞「まどろむ」の未然形。うとうとするなどの意。
「れ」:可能の助動詞「る」の連用形。打消とともに用いる「る」は可能の意が多い。
「給は」:尊敬の補助動詞「給ふ」の未然形。
「ず」:打消の助動詞「ず」の終止形。
それぞれの意味が反映されていない選択肢を削ると2が残る。よって2が正解。
「ねび」:バ行上二段活用動詞「ねぶ」の連用形。大人びる、成熟する、老いるなどの意。
「ととのひ」:ハ行四段活用動詞「ととのふ」の連用形。
「たる」:完了の助動詞「たり」の連体形。
「ねぶ」「ととのふ」の意味に合致しないものを削ると2のみ残るため、2を選ぶ。
「おほかたなる」:ナリ活用の形容動詞「おほかたなり」の連体形。並一通りだ、などの意。
「やう」:様子。
「おほかたなり」の意味に合致しない選択肢を削ると3のみ残るため、3が正解。
問2 語句・表現問題
1 「兄である院と~っている斎宮」が不適。斎宮ではなく院の思い。後に続く「薄くやありけむ」から「思い」が「薄い」という文脈を押さえる。
2 「斎宮の心中を院が」が不適。作者が院の心中を想像している場面である。
3 「いぶせくて」の「いぶせし」はすっきりしない、晴れ晴れとしないなどの意であり正しい。
4 「意志」が不適。「やみなむ」は「やみ」「な」「む」と品詞分解でき、「な」は完了、「む」は婉曲の用法。
★「む」:直後に体言や体言が省略された助詞(本問では後者)を伴う場合は婉曲の意味を取ることが多い。
5 「院が斎宮の~表している」が不適。
問3 表現説明問題
★「せちに」は切実である、「まめだつ」は真剣な態度である、という意味であり、それを文末において反映しているのは①、③、④。その3つの選択肢を比較検討していく。
1 「二条と斎宮をしたしくさせてでも」が不適。本文に根拠がない。
2 「恋心を手紙で~はばかる言葉」「思慮深さ」が不適。それぞれ本文の内容とズレている。
⇒「なれなれしき~」
3 「誠実さ」が不適。「まめだちて」の訳としてはふさわしいが、本文の内容とズレている。院は誠実さを装っている。
5 「自分と親密~」「傲慢さ」がそれぞれ不適。本文に根拠がない。
問4 空欄補充問題
X・Y:文章Ⅱについての説明
Z:文章Ⅰについての説明
⇒これを満たしていなければその時点で不適。
★基本的にはそれぞれの文章中に、選択肢と合致する表現があるかどうか、ズレていないかどうかをもとに吟味していく。また、本文中の言葉の意図や効果に着目して、客観的にそのように言えるかを検討する。
2 「葛藤が院の中で~深まっていく」が不適。本文の内容とズレている。院の「葛藤」を読み取ることはできない。
3 「斎宮の気持ちを~思いやっているところ」が不適。本文に根拠がなく、本文の内容ともズレている。
4 「斎宮から~返事をもらった」「心躍る~生き生きと伝わってくる」がそれぞれ不適。前者は本文の内容とズレており、後者は本文に根拠がない。
2 「好色な因果~全く通じていないことを」が不適。本文の内容とズレている。「思いつることよ」と思ったのは「ましてくまなき~させ給ひし」。
3 「院が強引な~起こしてしまった」が不適。本文の内容とズレている。
4 「逢瀬の手引きを~慣れている」「斎宮を院のもとに導く」「手だてが~困惑している」がそれぞれ不適。「逢瀬~」は本文に根拠がなく、「斎宮を~」は逆である。正しくは「院を斎宮のもとに導く」。そして「手だてが~」は本文の内容とズレている。
1 「権威主義的~配慮している」が不適。本文の内容とズレている。「つつましき~」がその反例。
2 「三者の関係性~することで」「複雑に絡み合った~整理している」がそれぞれ不適。前者は本文に根拠がなく、後者は本文の内容とズレている。
3 「いつかは~ことになる」「神に仕えた~との密通」がそれぞれ不適。両者とも本文の内容とズレている。特に後者については神に仕えた相手であるから憚られるべきなのではなく、相手が「はらから」であるためである。
今回はここまで🐸
次回は【解答解説】共通テスト2022(古典②漢文)ということで、漢文編です。
リクエストなどもお待ちしています!
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