伊勢物語『東下り』品詞分解/現代語訳/解説③
目次
- 1. はじめに
- 2. なほ行き行きて、武蔵の国と下総の国とのなかにいと大きなる川あり。
- 3. それをすみだ川といふ。その川のほとりに群れゐて、思ひやれば、
- 4. かぎりなく遠くも来にけるかな、とわびあへるに、渡し守、「はや船に乗れ、日も暮れぬ。」と言ふに、
- 5. 乗りて渡らむとするに、皆人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。
- 6. さるをりしも、白き鳥の、はしと脚赤き、鴫の大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ。
- 7. 京には見えぬ鳥なれば、皆人見知らず。
- 8. 渡し守に問ひければ、「これなむ都鳥。」と言ふを聞きて、
- 9. 名にし負はばいざこと問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
- 10. とよめりければ、船こぞりて泣きにけり。
はじめに
こんにちは!こくご部です。
定期テスト対策から大学受験の過去問解説まで、「知りたい」に応えるコンテンツを発信します。
今回は伊勢物語から『東下り』について、できるだけ短い固まりで本文⇒品詞分解⇒現代語訳の順で見ていきます。
必要に応じて解説も記しておきます。
古文が苦手な人や食わず嫌いな人もいるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう🔥
それでは行ってみましょう!
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なほ行き行きて、武蔵の国と下総の国とのなかにいと大きなる川あり。
なほ | 副詞 | ★重要単語 現代にも残っている「依然としてやはり(変わらず)」、「よりいっそう」のほか、「なんといってもやはり」などの意味があり、文脈に応じて適切な訳語を当てる。 |
行き行き | 動詞 | カ行四段活用動詞「行き行く」の連用形。 どんどん進んで行く、という意味となる。 同じ語を繰り返し用いることによって、程度を強める用法。 |
て | 接続助詞 | |
武蔵の国 | 名詞 | 現在の東京都、埼玉県、神奈川県の一部のこと。読みは「むさし」。 |
と | 格助詞 | |
下総の国 | 名詞 | 現在の千葉県北部と茨城県南西部のこと。読みは「しも(つ)ふさ」。 |
と | 格助詞 | |
の | 格助詞 | |
なか | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
いと | 副詞 | 「たいそう」、「非常に」という訳を当て、程度が甚だしいことを示す。「めっちゃ」と脳内変換してもOK。 |
大きなる | 形容動詞 | ナリ活用の形容動詞「大きなり」の連体形 |
川 | 名詞 | |
あり | 動詞 | ラ行変格活用動詞「あり」の終止形。 ラ変動詞は「あり」「をり」「はべり」「いまそが(か)り/いますが(か)り」を押さえておこう。 |
変わらずどんどん進んで行って、武蔵の国と下総の国との中にたいそう大きな川がある(ところに着いた)。
それをすみだ川といふ。その川のほとりに群れゐて、思ひやれば、
それ | 代名詞 | |
を | 格助詞 | |
すみだ川 | 名詞 | 東京都東部を流れる川のこと |
と | 格助詞 | |
いふ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「いふ」の終止形 |
そ | 代名詞 | |
の | 格助詞 | |
川 | 名詞 | ここでは直前の「すみだ川」を指す |
の | 格助詞 | |
ほとり | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
群れゐ | 動詞 | ラ行下二段活用動詞「群る」の連用形+ワ行上一段活用動詞「ゐる」の連用形。 上一段動詞は基本的には10語のみと数に限りがあるため、頭文字を取って「ひいきにみゐる」で確実に暗記しておくこと。 複合動詞として一語と見てもよい。 |
て | 接続助詞 | |
思ひやれ | 動詞 | ラ行四段活用動詞「思ひやる」の已然形。 「やる」を漢字で書くと「遣る」であるとおり、思いを遣わせる、思いをはせるというのが基本的な意味である。 「想像する」「思いをはせる」等と訳をする。 ここでは、思いをはせる、の意味で使われる。一行が旅に出てから起きたさまざな事柄や都に対しての思いをはせているのである。 |
ば | 接続助詞 | ★重要文法 接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。 ①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない) ⇒仮定(もし~ならば) ②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている) ⇒ (ⅰ)原因・理由(~なので) (ⅱ)偶然(~したところ) (ⅲ)必然(~するといつも) ここでは偶然と解釈するのが自然か。 |
それをすみだ川という。その川のほとりに(一行は)集まって座って、思いをはせると、
かぎりなく遠くも来にけるかな、とわびあへるに、渡し守、「はや船に乗れ、日も暮れぬ。」と言ふに、
かぎりなく | 形容詞 | ク活用の形容詞「かぎりなし」の連用形 |
遠く | 動詞 | ク活用の形容詞「遠し」の連用形 |
も | 係助詞 | |
来 | 動詞 | カ行変格活用動詞「来(く)」の連用形 |
に | 助動詞 | 完了の助動詞「ぬ」の連用形。 |
ける | 助動詞 | 詠嘆の助動詞「けり」の連体形。 今まで気付かなかったことに、はじめて気付いてハッとする驚きや感動を表す。 |
かな | 終助詞 | 詠嘆の終助詞 |
と | 格助詞 | |
わびあへ | 動詞 | バ行上二段活用動詞「わぶ」の連用形+補助動詞「あふ」の已然形。 「わぶ」は思うようにならず落胆して嘆くというのがもとの意味である。 ここでは、気落ちする、嘆く、という意味で使われる。 また、補助動詞の「あふ」は現代語でも「慰めあう」などで用いるように、「互いに(みんなで)~する」という意味を持つ。 |
る | 助動詞 | 存続の助動詞「り」の連体形。 接続を覚えるための語呂合わせは「サ未四已(さみしい)りっちゃん」派か「サ未四已りかちゃん」派かで分かれる。 教室に「り」で始まる子がいるとその日はイジられる可能性が高い。 |
に | 接続助詞 | 「に」は下記の八つのパターンがあるため、判別できるようになっておきたい。 ①格助詞「に」 ⇒体言+「に」 ②格助詞「に」 ⇒連体形+(体言)+「に」 連体形と「に」の間に体言(「とき」「ところ」)を補うことができる ③接続助詞「に」⇒連体形+「に」 ④断定の助動詞「なり」の連用形 ⇒連体形または体言+「に」 「に」の下に「あり」「さぶらふ」「はべり」などがつくことが多い。 ⑤完了の助動詞「ぬ」の連用形 ⇒連用形+「に」 ⑥ナリ活用の形容動詞の連用形活用語尾 ⑦ナ行変格活用動詞の連用形活用語尾 ⑧副詞の一部 この場合は、「る」が連体形であり、「る」と「に」の間に体言を補うことができないため、③と判断する。 |
渡し守 | 名詞 | 渡し船の船頭のこと。読みは「わたしもり」。 |
はや | 副詞 | 命令や勧誘、願望の表現が伴っている場合、「すみやかに、一刻も早く」という意味で使われる。 また、「早くも、もう、すでに」という意味や、詠嘆の助動詞「けり」を伴って「もともと、元来」という意味も持つ。 |
船 | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
乗れ | 動詞 | ラ行四段活用動詞「乗る」の命令形 |
日 | 名詞 | |
も | 係助詞 | |
暮れ | 動詞 | ラ行下二段活用動詞「暮る」の連用形 |
ぬ | 助動詞 | 強意/完了の助動詞「ぬ」の終止形 ここでは「完了」で解釈すると「日が暮れてしまった(から早く乗れ)」になり、「強意」で解釈すると「日が暮れてしまう(から早く乗れ)」になる。 |
と | 格助詞 | |
言ふ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「言ふ」の連体形 |
に | 接続助詞 | 上記を参照。 この場合は(四段活用動詞のため、見た目では判断しにくいが)「言ふ」が連体形であり、「言ふ」と「に」の間に体言を補うことができないため、③と判断する。 |
この上なく遠くに来てしまったなぁ、と互いに嘆き合っていると、船頭が「すみやかに船に乗れ。日も暮れた(暮れてしまう)。」と言うので、
乗りて渡らむとするに、皆人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。
乗り | 動詞 | ラ行四段活用動詞「乗る」の連用形 |
て | 接続助詞 | |
渡ら | 動詞 | ラ行四段活用動詞「渡る」の未然形 |
む | 助動詞 | 意志の助動詞「む」の終止形。 助動詞「む」は多くの意味をもつが、以下のように判別の手掛かりになる「ルール」があるので整理しておきたい。 ※必ず文脈判断を踏まえること。この「ルール」は「この意味になることが多い」程度の認識でいること。 【原則】 助動詞「む」が文末にある場合 ・主語が一人称⇒意志 ・主語が二人称⇒適当/当然/命令 ・主語が三人称⇒推量 助動詞「む」が文中に連体形で出てきた場合 ・「む(連体形)」+「は」、「に」、「には」、体言⇒仮定 ・「む(連体)」+体言⇒婉曲 ※婉曲は助動詞「む」を訳出しなくても文意が通じる場合。 |
と | 格助詞 | |
する | 動詞 | サ行変格活用動詞「す」の連体形 |
に | 接続助詞 | |
皆人 | 名詞 | |
ものわびしく | 形容詞 | シク活用の形容詞「わびし」の連用形。バ行上二段活用動詞「わぶ」が形容詞化した語。前述の「わびあへ」を参照されたい。 また、「もの」は接頭語。なんとなく~。 以降の語と結びつき、漠然とした様態を示す語を作る。 |
て | 接続助詞 | |
京 | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
思ふ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「思ふ」の連体形 |
人 | 名詞 | |
なき | 形容詞 | ク活用の形容詞「なし」の連体形 |
に | 助動詞 | 断定の助動詞「なり」の連用形。 助動詞の「なり」は断定の「なり」と伝聞・推定の「なり」の二つが存在するが、前者は体言または連体形に接続、後者は終止形(ラ変型の活用語には連体形)に接続する。 『土佐日記』の冒頭部分、「男もすなる日記といふものを女もしてみむとてするなり」を覚えておけば、接続が導き出せる。 |
しも | 副助詞 | 副助詞「し」+係助詞「も」がついた語。意味としては「強調」であるため、判別した後は無視してもよい。 |
あら | 動詞 | ラ行変格活用動詞「あり」の未然形 |
ず | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の終止形 |
(船に)乗って(川を)渡ろうとするが、そこにいた人はみな、なんとなく辛くて、京に(恋しく)思う人がいないわけでもない。
さるをりしも、白き鳥の、はしと脚赤き、鴫の大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ。
さる | 連体詞 | そのような、そんな。 |
をり | 名詞 | 漢字をあてると「折」。 |
しも | 副助詞 | 強調の副助詞 |
白き | 形容詞 | ク活用の形容詞「白し」の連体形 |
鳥 | 名詞 | |
の | 格助詞 | 同格の用法 |
はし | 名詞 | くちばしのこと。漢字をあてると「嘴/喙」。 |
と | 格助詞 | 並列用法。A and B。 |
脚 | 名詞 | |
と | 格助詞 | 同上 |
赤き | 形容詞 | ク活用の形容詞「赤し」の連体形 |
鴫 | 名詞 | 読みは「しぎ」。水辺にすむシギ科の渡り鳥のこと。 古文で植物や鳥などが出てきた際には必ず画像を検索したり国語便覧・資料集を確認したりしてほしい。そこからあなたの世界が広がっていく。 |
の | 格助詞 | |
大きさ | 名詞 | |
なる | 助動詞 | 断定の助動詞「なり」の連体形。 後に「鳥」という体言が補える。 |
水 | 名詞 | |
の | 格助詞 | |
上 | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
遊び | 動詞 | バ行四段活用動詞「遊ぶ」の連用形 |
つつ | 接続助詞 | なかなか機会はないであろうが、「つつ」の接続を答える必要がある際は「歩きつつ」「~をしつつ」などの用例を考えてみると連用形接続が導き出せる。 文法事項を丸覚えすることも一定必要だが、例文などから一般法則を導く練習(パターンプラクティスの考え方。第二言語習得に際し有効とされている)もしておくとよい。 ここでは「反復・継続」で解釈するのが自然か。 |
魚 | 名詞 | |
を | 格助詞 | |
食ふ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「食ふ」の終止形 |
ちょうどそのとき、白い鳥で、くちばしと脚が赤く、鴫の大きさである鳥が、水の上で遊んでは魚を食べる。
京には見えぬ鳥なれば、皆人見知らず。
京 | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
は | 係助詞 | |
見え | 動詞 | ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」の未然形。 「見える」「思われる」「見られる」「結婚する」など様々な意味があるが、「見ゆ」の「ゆ」は上代(ほぼ奈良時代まで)の助動詞であり、受身・自発・可能の意味がある。 「受身・自発・可能」という字面を見ると「る」と同じでは?と思った人がいるかもしれないが、その直感は正しい。「る」の発達に伴って「ゆ」が少しずつ姿を消していった。 なお、「ゆ」には尊敬の意味はない。 |
ぬ | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の連体形 |
鳥 | 名詞 | |
なれ | 助動詞 | 断定の助動詞「なり」の已然形 |
ば | 接続助詞 | ★重要文法 接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。 ①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない) ⇒仮定(もし~ならば) ②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている) ⇒ (ⅰ)原因・理由(~なので) (ⅱ)偶然(~したところ) (ⅲ)必然(~するといつも) ここでは原因・理由で解釈するのが自然か。 |
皆人 | 名詞 | |
見知ら | 動詞 | マ行上一段活用動詞「見る」の連用形+ラ行四段活用動詞「知る」の未然形。複合動詞として一語と見てもよい。 |
ず | 助動詞 | 打消の助動詞「ず」の終止形 |
京では見ることができない鳥なので、一行は見知らなかった。
渡し守に問ひければ、「これなむ都鳥。」と言ふを聞きて、
渡し守 | 名詞 | |
に | 格助詞 | |
問ひ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「問ふ」の連用形 |
けれ | 助動詞 | 過去の助動詞「けり」の已然形 |
ば | 接続助詞 | ★重要文法 接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。 ①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない) ⇒仮定(もし~ならば) ②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている) ⇒ (ⅰ)原因・理由(~なので) (ⅱ)偶然(~したところ) (ⅲ)必然(~するといつも) ここでは偶然で解釈するのが自然か。 |
これ | 代名詞 | 完了の助動詞「り」の連体形。 ここでは、後に「歌」といった語を補うとよい。 |
なむ | 係助詞 | 強意の係助詞。 「なむ」には以下の4パターンあるので、それぞれ識別できるように押さえておきたい。(「⇒」以下は見分ける際のポイント) ①他への願望の終助詞「なむ」 ⇒「なむ」の上は未然形 ②助動詞「ぬ」の未然形「な」+助動詞「む」 ⇒「なむ」の上は連用形 ③係助詞「なむ」 ⇒結びの流れや省略が発生していない場合、文末は連体形 ④ナ変動詞の一部(未然形)+「な」+助動詞「む」 ⇒「な」の上に「死」や「去(往)」がある この場合は③であるが、結びは省略されている。ここの「なむ」を現代語訳せずとも文意が通じることから、強意の用法であると推測し③であると判断する。 |
都鳥 | 名詞 | ゆりかもめを指すとされている。 |
と | 格助詞 | |
言ふ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「言ふ」の連体形 |
を | 格助詞 | |
聞き | 動詞 | カ行四段活用動詞「聞く」の連用形 |
て | 接続助詞 |
船頭に尋ねたところ、「これは都鳥だ。」と言うのを聞いて、
名にし負はばいざこと問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
名 | 名詞 | 「名にし負はば」から始まる歌と言えば、百人一首に収録されている三条右大臣の「名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな」も押さえておきたい。 |
に | 格助詞 | |
し | 副助詞 | 強意の副助詞 |
負は | 動詞 | ハ行四段活用動詞「負ふ」の未然形 |
ば | 接続助詞 | ★重要文法 接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。 ①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない) ⇒仮定(もし~ならば) ②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている) ⇒ (ⅰ)原因・理由(~なので) (ⅱ)偶然(~したところ) (ⅲ)必然(~するといつも) ここでは未然形+「ば」なので「仮定」の意味である。 |
いざ | 感動詞 | さあ。 |
こと問は | 動詞 | ハ行四段活用動詞「こと問ふ」の未然形。 「ものを言う」、「尋ねる」、「訪れる」といった意味を持つが、ここでは「尋ねる」の意味で使われる。 |
む | 助動詞 | 意志の助動詞「む」の終止形。 三句切れであり、ここが意味の切れ目となっている。 |
都鳥 | 名詞 | |
わ | 代名詞 | |
が | 格助詞 | 主格用法 |
思ふ | 動詞 | ハ行四段活用動詞「思ふ」の連体形 |
人 | 名詞 | |
は | 係助詞 | |
あり | 動詞 | ラ行変格活用動詞「あり」の終止形 |
や | 係助詞 | 疑問の係助詞 |
なし | 形容詞 | ク活用の形容詞「なし」の終止形 |
や | 係助詞 | 疑問の係助詞 |
と | 格助詞 |
都という名を持っているのならば(都のことに詳しいはずであろう)、さあ尋ねよう。都鳥、私が(恋しいと)思う人は健在かどうかと。
とよめりければ、船こぞりて泣きにけり。
と | 格助詞 | |
よめ | 動詞 | マ行四段活用動詞「よむ」の已然形 |
り | 助動詞 | 完了の助動詞「り」の連用形 |
けれ | 助動詞 | 過去の助動詞「けり」の已然形 |
ば | 接続助詞 | ★重要文法 接続助詞の「ば」は以下の2パターンを整理しておきたい。 ①未然形+「ば」 ( 未だ然らず、つまりまだ出来事が起きていない) ⇒仮定(もし~ならば) ②已然形+「ば」 (已に然り、もうその状態になっている) ⇒ (ⅰ)原因・理由(~なので) (ⅱ)偶然(~したところ) (ⅲ)必然(~するといつも) ここでは原因・理由で解釈するのが自然か。 |
船 | 名詞 | |
こぞり | 動詞 | ラ行四段活用動詞「こぞり」の連用形。 「こぞりて」で連語として、一人残らず、すべて、といった意味を表す。 「もろびと こぞりて」の「こぞり」である。 |
て | 接続助詞 | |
泣き | 動詞 | カ行四段活用動詞「泣く」の連用形。 都に残してきた恋しい人を思い泣く「男」と、その「男」に同情・共感する一行である。 |
に | 助動詞 | 完了の助動詞「ぬ」の連用形 |
けり | 助動詞 | 過去の助動詞「けり」の終止形 |
と(男が)詠んだので、船(の中の人)は一人残らず泣いてしまった。
今回はここまで🐸
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