【解答解説】京都産業大学2021公募推薦(11月20日)・国語大問1(現代文)
こんにちは!こくご部です。
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はじめに
今回は京都産業大学2021公募推薦・国語大問1(現代文)の解答例及び解説を掲載します。
関西ではお馴染み・産近甲龍の一角で、全国的にも根強い人気を持つ京都産業大学。憧れをもつ受験生も少なくありません🔥
志望している人は早期の対策をおすすめします🐸
なお、著作権の関係から、 当ブログ作成の解答解説のみを掲載し、設問は掲載していませんのでご了承ください。
それでは行ってみましょう🔥
問1 理由説明問題
波線部について理由を説明する問題。
★傍線(波線)部中に指示語を発見したら、まずは指示されている内容を押さえる
※本問の選択肢を確認すると全て「この議論」とそのまま引用されているため、本問では確認を怠っても正解に辿りつくことができるかもしれないが、基本的には必ず指示内容は確認しておくこと。
波線部を確認すると「たいした哲学的深みはないかもしれない(後略)」とあり、筆者は「この議論」について否定的な評価を下している。
その理由を説明している選択肢を選ぶ問題であるが、ここでは「〇〇だから深みはない」という因果関係をつかみたい。
また、本問では波線部から少し離れた位置に大きなヒント(直接的な解答と言ってもよい)になっている一文がある。
4段落の最終文、「この問題が『哲学的に深く」はないと言ったのは、そのためです」について、ここでも指示語を丁寧に追っていけば因果関係をつかむことができよう。
1 この選択肢を選んだ受験生も少なくないかもしれない。一見すると本文の内容と矛盾がないように思われるため、一旦保留して他の選択肢と比較することが賢明。
ここでも比較的早く削ることができる選択肢に触れてから、吟味していく。
2 「直観的におかしい~わかるから」が不適。本文に根拠がない。
3 こちらも1と同様に、一見すると本文の内容と矛盾していないように思われるため、比較検討して選択肢を削っていくこととする。
4 「人生の意味等の~答えをもたらさないから」が不適。本文に根拠がない。
ここから、残った1と3で比較検討を行っていく。
1と3を比べた際に、1は「言葉の表す概念だけで組み立てられるから」、3は「容易に解決できるから」という箇所が文章の根幹を成していることが分かる。
言い換えれば、「言葉の表す概念だけで組み立てられるから深みがない」のか、「容易に解決できるから深みがない」のか、ということである。
このことを鑑みれば、「深みがないこと」に対する直接的な原因を示しているのは3と言える。
また、確かに2段落で
①「ここにあるのは議論だけ」
②「しかも議論を成り立たせているのは(中略)概念のあいだに成り立つと考えられる関係」
③「それゆえ、この議論は、それ自体としてはつまらない」
とあるが、①・②と③の間に選択肢3の「言葉の表す概念を明らかにしていけば容易に解決できるから」という内容を挿入したとしても矛盾はない。
【余談】
「京都産業大学の現代文は傍線(波線)ごとに問題を解いていきなさい」という指導をされている先生方が多いため(決して誤りではないし、記事作成者もそのように指導している)、波線部と同じ段落の内容で選択肢を検討した結果、1を選んだという受験生も少なくなかったのではないかと推察する。
問2 熟語問題
京都産業大学と言えば・・・とまでは言わないが、産近甲龍の公募推薦では頻出の問題。
本文中の言葉と「同じ構成」の二字熟語を選ばせる問題だが、「熟語の構成」と言われてピンとこない人はここで改めて整理しておいてほしい。
※以下に挙げたもの以外にも様々な「熟語の基本構造」があるが、大学受験レベルであれば以下のものを判別できれば十分と言える。
―――――――――――――――――――――――
①似た意味の漢字(類義)で構成されたもの(例:飲食)
(本問では「隔離」が該当する)
②対立する意味の漢字(対義)で構成されたもの(例:左右)
(本問では「是非」が該当する)
③上の語と下の語が主語・述語の関係になっているもの(例:公営、有利)
※上の語が主語・下の語が述語のパターン、上の語が述語・下の語が主語のパターンがある
(本問では「天与」が該当する)
④上の語が下の語を修飾するもの(例:安眠、恋人)
※用言を修飾するパターン、体言を修飾するパターンがある
(本問では「納期」が該当する)
⑤下の語が上の語の「目的語」に当たるもの(例:読書)
(本問では「違法」が該当する)
⑥否定語が含まれるもの(例:不足)
―――――――――――――――――――――――
これらは無理に覚えようとしなくとも(もちろん覚えられるのであれば覚えても良い)、「これは主語+述語のパターンだな」「これは類義語のパターンだな」と熟語を見てから説明できれば十分。
解答はa:5,c:1,d:2。
問3 理由説明問題
解説と銘打っている手前、堂々と書くのは憚られるが、記事作成者は本問をあまり良い問題とは言えないと考えている。
その理由は選択肢を吟味する際に触れたい。
本問は波線部について理由を説明する問題である。
波線部は問1と同様に直前の主張に対してマイナスの評価を下しており、その理由として適切なものを選ぶようになっているが、その判断が厳しい。
順を追って見ていく。
まずは何に対して筆者が「明らかにばかげています」としているのかを押さえる。
これは他のどのような問題とも同じアプローチであり、ここでは直前の「ひとは何かを意識的に覚えようとしても、そうすることは決してできない」という主張があたる。
しかし何故「明らかにばかげてい」るのかに対する直接的な言及は本文中には見当たらず、解答者の「経験」などから判断する以外に根拠が乏しいため、「経験」などを用いて選択肢を絞り込むことが必要になる。
(イメージがつかめない人のために状況を整理すると、「何かを覚えようとしても絶対に覚えられない」ということはあり得ない、ということは「英単語や漢字を意識的に記憶した」という解答者自身の経験から否定できるが、本文から類推すれば分かるということである。)
ここで選択肢を確認すると、
件の主張である「ひとは何かを意識的に覚えようとしても、そうすることは決してできない」に対して、
「覚えようとして、実際には覚えられる」(選択肢1,2)からその主張は「ばかげてい」るのか、
「覚えようとして、実際には覚えられない」(選択肢3,4)からその主張は「ばかげてい」るのか
と分けることができ、選択肢3、4は不適であることが分かる。
残る選択肢1、2について見ていくと、
「そのことは論理的に一貫していないところがある」(選択肢1)
「そのことは論理的に矛盾したところは全くない」(選択肢2)
となっているが、悲しいことに「そのこと」が何を指すのか曖昧になってしまっているという問題が発生している。
「そのこと」が選択肢中の「実際に覚えられることがある」を指すのであれば2が正答になり、「そのこと」が「ひとは何かを意識的に覚えようとしても、そうすることは決してできない」という主張を指していれば1が正答になると考えられる。
実際に記事作成者が生徒に本問を出題したところ見事に解答が半数に割れ、興味本位でネット上の「解答速報」を参照しても解答がバラついていた。
ちなみに赤本では「2」が正答とされていることから、「そのこと」は選択肢中の直前の内容を受けているようであるが、必ずそのように指すとは言い切れないように思う。
よって、本稿では「正答」を記載しないこととする。
【余談】
そもそも現代文においては「解答者の主観・常識、経験」を排して臨むべきであり、「本文テクストから客観的に読み取ることができるもの」で勝負する必要がある。
本問では「まず誰でも気がつくのは」「同じような議論はできそうにない」としているものの、このような選択肢の切り方はあくまで推測の域を脱しないと言える。
問4 語彙問題
四字熟語「自家撞着」の意味を答えさせる問題。
この問題を必ず解けるようにするのが望ましいというよりは、大学受験レベルの評論文を読み進めるにあたって必要な語彙力を適切に身に付けていることが重要であると言える。
特に産近甲龍レベルを超えてくると、選択肢を見て文脈判断ができないように工夫して選択肢がつくられているため、辞書的な意味を押さえておきたい。
英単語を覚えていない状態で英文を読むことができないのと同様に、適切な語彙力を有していないと正確な読解は成り立たない。
「日本語だから」と舐めてかかってはいけない。
問5 理由説明問題
波線部について理由を説明する問題。
波線部直後に「ためらいがなぜ残るのかといえば」とあることから、悩まずに正答を選べた受験生も多かったのではないだろうか。
「釈然としない漢字をもつから(「釈」は問6の解答になっている)」とあるように、これと矛盾しない選択肢を選びたい。
また、続く第4段落に「忘れるということが意識的になされることでない~」とあることも着目すべきポイントである。
1 全体的に本文に根拠がないため不適。
2 本文中には同趣旨の文言はあるが、波線部に対する理由ではないため不適。京都産業大学の現代文はほぼ毎年「本文中にある言葉を用いた、それらしい選択肢」が用意されているため、「本文中に書いてあるから」という理由だけで飛びつかないようにしてほしい。
マーク試験で忘れてはいけないのは「何を問われていて、それに対する解答としてふさわしいものを選ぶ」ということである。
3 1と同様に全体的に本文に根拠がないため不適。
4 正答。上記の2つのポイントを押さえており、矛盾が無い。
問6 空欄補充問題
前後の文脈から判断し、適切な漢字を補って熟語をつくる問題。
ここでは「ためらいが残」る理由を説明している箇所であるため、「疑いや迷いが解けてすっきりしたさま」を示す1の「釈」が正答。
問4と同様に、「この問題ができたからOK」ではなく、「この問題に対して自信を持って答えることができなかった」という受験生は、現代文単語やキーワードを扱った参考書を直前期まで行うことが望ましい。
語彙力は力と言っても過言ではない。
その際留意してほしいのは「語の意味が分かる」だけでなく、「自分でその語について説明できるかどうか」である。
幼少期から多くの語に触れてきた受験生との差を少しでも埋めるために、意識的に取り組んでほしい。
問7 理由説明問題
波線部中の「立派に」について、その表現が使われている理由を示す問題。
選択肢を見る前に、まずは筆者がどのような評価を下しているかを「プラス」「マイナス」「どちらともいえない」などの観点から押さえておきたい。
本問では明らかに「プラス」の評価をしていることを読み取ることができるが、こういったアプローチは国公立二次の記述問題でも有用であるため、国公立大学志望の生徒は心に留めておいてほしい。
また、その表現に使われている語の「辞書的な意味」を元に、筆者がその表現に込めた意図やニュアンスを客観的に読み取ることも重要である。
本来の意味からかけ離れたものや、客観的に読み取ることが難しいようなものは不適切であると言って良い。
ただし、「筆者の造語」や「本文中で筆者が定義した語」などについては上記の例外となる場合があるため注意が必要である。
本問では全ての選択肢が「プラス」の評価をした文章になっているため、この時点で選択肢を削ることはできないが、「立派」の意味から考えると3が正解。
どのような意味をもっているかを言語化しづらい時は、その語を使った例文を作ってみてほしい。
今回の「立派」では、
①「立派な大人に成長した」
②「それはもはや立派な犯罪である」
などの文章を作ることができ、今回は②の例から「不足のない、十分な」という意味を導き出すことができる。
念のため他の選択肢に触れておくが、1、2、4の選択肢はそれぞれ本文に根拠がないため不適である。
問8 内容説明問題
波線部を説明するものとして適切な選択肢を選ぶ問題。
第5段落から新たに「第一の部類」、「第二の部類」という語でこれまでの論を一定整理しているため、本文を読み進めながら確認しておきたい。
―――――――――――――――――――――――
・「第一の部類」:自然、不作為、無意識、過程の一部に含まれない
・「第二の部類」:努力、作為、意図的、練習が必要、過程の一部に含まれる
―――――――――――――――――――――――
「第一の部類」と「第二の部類」がそれぞれ対立する概念として整理されているため、具体例として本文中に見えるものがどちらに分類されているか間違えないようにしてほしい。
本問では「第二の部類」の具体例として「ショパンのワルツを弾くという出来事」が取り上げられており、波線部について内容を説明している、つまり「分かりやすく言い換えている」ものを選べばよい。
1 選択肢全体が本文の内容とズレている。楽譜を見るかどうかの話はしていない。
2 1と同様に、選択肢全体が本文の内容とズレている。創造性についての話はしていない。
3 先の2つと同様に、選択肢全体が本文の内容とズレている。「聞こえるようにする」のと「弾く」のは別の話であり、「聞こえるようにする」からは「本物ではない」というニュアンスも受け取れる。
また、本文波線部には「どんなにつっかえながらであっても」とあるが、選択肢中にはそれに対応する箇所がなく、「ひとつも間違えることなく正確に音にする必要がある」とある。
この選択肢を選んだ受験生もいるかもしれないが、本選択肢の表現からは「正確性のみが要件である」と読み取れるため、適切とはいえない。
4 上記3の解説後段に着目すると、4は「まずはたとえゆっくりとでも」「楽譜の音符を順番に引いてみる」と本文と矛盾している要素は見当たらない。
よってこれが正答。
問9 内容一致問題
波線部の内容を説明する問題。
先の問8と同様に、対立する「第一の部類」と「第二の部類」を整理しておけば正答にたどり着ける。
選択肢が少し冗長で分かりにくいように感じた受験生もいるかもしれないが、8段落の内容をまとめている選択肢を選べば良い。
具体的には「つぎのように考えてみたらどうでしょうか」というマーカーの役割を果たしている一文の後である。
本文の繰り返しになるため詳細は割愛するが、正答は4。他の選択肢は特に後段が本文の内容とズレていることが読み取れる。
問10 構成問題
本文の段落構成についての問題。
共通テストと毛色が少し似ているが、それぞれの段落がどのような役割を果たしているかを一つずつ追っていけば問題なく解答できる。
本文を見て各段落の頭に段落番号が振ってあれば、最終問題で本文の構成問題が出題されることを覚悟しておいた方がよい。
各空欄の前後の情報を整理すると、それぞれ以下の役割を持っているとされている。
Ⅹ:問題の明確化
Y:必要な概念の整理
Z:問題の解決
まず「Ⅹ:問題の明確化」を行っている段落について検討すると、
4段落冒頭では
「ふだんの生活で~何の問題も感じません。だが、ひとによっては~」
「これはもう、立派に~問題の渦中にいる」
と問題を焦点化しており、Ⅹは4段落(解答番号は3)であると判断できる。
次に「Y:必要な概念の整理」について検討すると、問8での解説でも触れたように、5段落では新たに「第一の部類」、「第二の部類」という語でこれまでの論を整理している。
よってYは5段落(解答番号は4)であると判断できる。
最後に「Z:問題の解決」について検討すると、8段落では「第一の部類」、「第二の部類」に対する反論に対して考え方を提示して「解決」しており、Zは8段落(解答番号は7)であると判断できる。
※それぞれ解答する番号と段落番号がズレていることに注意。
本問で面食らってしまった受験生も、繰り返しになるが「それぞれの段落がどのような役割を果たしているか」を落ち着いて検討していけば良いと心に留めておいてほしい。
今回はここまで🐸
リクエストなどもお待ちしています!
※著作権の関係から、当ブログ作成の解答解説等のみを掲載し、設問等は掲載していません。ご了承ください。
〇本記事の内容については十分に検討・検証を行っておりますが、その完全性及び正確性等について保証するものではありません。
〇本記事は予告なしに編集・削除を行うこと可能性がございます。
〇また、本記事の記載内容によって被った損害・損失については一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。
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