【解答解説】九州大学2021(教育・法・経済)漢文/『送徐無党南帰序』
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はじめに
今回は九州大学2021(教育・法・経済)漢文の解答例及び解説を掲載します。
スピード勝負の九州大学!漢文は本文の内容を素早く正確に読み取り、言語化する練習を積んでおきましょう🌪️
九州大学の国語は文学部とその他の学部で題材となる本文が一部同じですが、設問に違いがあります。
⇓文学部の問題はこちら
なお、著作権の関係から、 当ブログ作成の現代語訳と解答解説のみを掲載し、
設問は掲載していませんのでご了承ください。
それでは行ってみましょう🔥
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書き下し文・現代語訳『送徐無党南帰序』
予班固の芸文志・唐の四庫の書目を読み、
私は班固の芸文志(『漢書』)・唐の「四庫の書目(図書目録)」を読み、
其の列する所を見るに、
そこに並んでいるものを見ると、
三代・秦・漢より以来、書を著すの士、
夏・殷・周、秦・漢以降、書を著した人物で、
多き者は百余篇に至り、
多い者では百余篇にのぼり、
少き者は猶三四十篇なり。
少ない者でもやはり三、四十篇である。
其の人勝げて数ふべからず。
その人(書を著した人)は数えきれないほどである(=数えきれないほど多い)。
而れども散亡摩滅し、百に一二も存せず。
しかし、(書かれた書は)散亡摩滅し、百のうち一、二も残っていない。
予窃かに其の人を悲しむ。
私はひそかにその人(書を著した人)のことを悲しく思う。
文章は麗しく、言語は工なるも、
その文章は流麗で、その言語は巧みであるが、
草木の栄華の風に飄り、
草木の花が風の前に翻り、
鳥獣の好音の耳を過るに異なる無き。
鳥獣の心地よい鳴き声が耳を通り過ぎるのと同じである。
其の心と力とを用ふるの労に比ぶれば、
(著者が著作に)その精神と体力を注ぎ込んだ苦労は、
亦た何ぞ衆人の汲汲営営として、而して忽焉として以て死する者に異ならん。
世の人々がせっせと休まずに努めて、しかも突然死んでしまうのと同じである。
遅き有り速き有り雖も、
遅い者、速い者がいるといっても、
而も卒に三者と与に同じく泯滅に帰す。
しかし最終的に草木・鳥獣・衆人の三者とともに同じく滅び失せる。
夫れ言の恃むべからざるや、蓋し此くの如し。
そもそも言葉があてにならないのは、まさしくこのようである。
今の学者、古聖賢の朽ちざるを慕はざる莫きも、
今、物事を学ぶ者の中に、古代の聖人と賢者の朽ちないもの(聖人と賢者が遺した著作)を慕わない者はいないが、
而も一世を勤めて以て心を文字の間に尽くす者は、
しかし生涯をかけて励み、それによって自らの心を文字に注ぎこむ者は、
皆悲しむべきなり。
すべて悲しい存在なのである。
問1 書き下し問題・指示語問題
★書き下し問題はまず句法のポイントを探して検討⇒文脈判断の流れを徹底!
「不可勝数」は「勝げて数ふべからず」と書き下し、「数えきれないほど多い」という意味になる重要句法。国立二次・個別試験で漢文を使用する生徒は必ず押さえておきたい。
なお、「数ふるに勝(た)ふべからず(⇒数えることに対して耐えられないほど数が多い)」とも書き下すこともできる。
そのひとあげてかぞふべからず。
※「現代仮名づかいでもよい」との指示があるので、「そのひとあげてかぞうべからず」でも良い。
★設問となっていなくとも、指示語は「何を指しているのか」をしっかりと押さえておきたい。
ここでは「其人」という指示語になっているため人間を指していることが分かるが、「其人」までに見える人間を指す名詞は「予(私)」「班固」「著書之士」のみ。
このうち、「其の人勝げて数ふべからず」(=数えきれないほど多い)という内容に合致するのは「著書之士」のみ。よって解答は「著書之士」。
問2 読み問題
★返り点のみ打ってあるので、その順番で読んでいき、文脈に応じて必要・適切な助詞などを補ってやればよい。
②「其人不可勝数。而散亡摩滅、百不一二存焉」
⇒「其の人(著書之士)は数えきれないほど多いが、散亡摩滅し~」という文脈。
「百」、「一」、「二」という数字と存在の「存」を見れば、「百のうち一、二も存在しない」という状況をイメージすることができるだろう。
それが難しい人は「ジャンルの同じ漢字(今回で言えば「数字」)が使われている意図」や「その漢字を使った熟語」を思い浮かべると良い。
よって、「ひゃくにいちにもそんせず」「ひゃくにいちにもあらず」などが正答。
※訓読みの「あらず」よりも音読みの「そんせず」と読む例の方が多い。
⑤「夫言之不可恃也、蓋如此」
⇒こちらは頻出の漢字のみであり、確実に得点しておきたい。
「蓋」は「けだシ」と読み、「思うに」「まさに」などの意。
「如此」は「かくのごとし」と読む。「〇〇はこのようである」などの意。
問3 返り点・現代語訳問題
(返り点問題は省略)
設問に「この文章をわかりやすく現代語訳せよ」と記載されているので、「どのような状況であるかを伝えること」を意識して答案を作成したいが、まずは直訳・逐語訳を心がける。
問題の「方其用心与力労」は「そのこころとちからとをもちふるのろうにくらぶれば」と読みが振られているため、読みと漢字をもとに現代語訳を組み立てていく。
すると「その心と力とを使う労力に比べると」という骨組みができるが、これについて「わかりやすく」するために疑問点を投げかけていく。
例えば
・「その」が指す内容は?
・何に心と力を使った?
などが思いつくと思われるが、文脈や本文の内容に応じ、これらの疑問を解消することを意識して補足していく。
上記の疑問点を解消するように組み立てた現代語訳は以下のとおり。
⇒著者が著作に対して精神と体力を注ぎこんだ苦労に比べると
※「書き下し・現代語訳」は以下の訳で「亦~」以降の繋がりを考慮し、「くらぶれば」の「比べる」の訳を無くして記載している。
其の心と力とを用ふるの労に比ぶれば、
(著者が著作に)その精神と体力を注ぎ込んだ苦労は、
亦た何ぞ衆人の汲汲営営として、而して忽焉として以て死する者に異ならん。
世の人々がせっせと休まずに努めて、しかも突然死んでしまうのと同じである。
問4 解釈問題
★傍線部を含んだ一節を現代語訳して状況を把握し、「三者」が何を指しているかを押さえる
まず、傍線部を含んだ一節を現代語訳する。
⇒而も卒に三者と与に同じく泯滅に帰す(しかし最終的に三者とともに同じく滅び失せる)
ここから「三者」には「滅び失せるもの」という性質があることが分かる。
本文中で「滅び失せるもの」の例として挙げられているのは「草木」「鳥獣」「衆人」である。
・草木の栄華の風に飄り
・鳥獣の好音の耳を過る
・衆人の汲汲営営として、而して忽焉として以て死する
選択肢中の名詞を吟味してもよいが、本問はドンピシャで選んでほしい問題でもある。
問5 漢字の読み問題
これらは頻出の漢字であり、確実に得点するのはもちろん、意味や別の読みも併せて押さえておきたい。
なお、「現代仮名づかいでもよい」との指示があるので、cは「ついに」でもOK。
a より
⇒「~より、~から」の意。
b またなんぞ~ン
⇒「どうして~なのか」の意。「~ン」と送っているように、本文では反語の用例で用いられている。
c つひに(ついに)
⇒「結局、とうとう」の意。ちなみに「卒(そつ・しゅっ)ス」は「死ぬ」という意味。
d それ
⇒「そもそも」の意。
問6 文学史問題
世界史履修者ならある程度選択肢が絞り込めたかもしれないが、比較的難易度の高い問題。
参考としてそれぞれの特筆すべき点を記しておく。
『文選』
⇒南北朝時代の南朝・梁の昭明太子蕭統によって編纂された詩文集。なお、「昭明太子蕭統」の読みは「しょうめいたいししょうとう」であり、「あきらめんたいこ」ではない。
『新唐書』
⇒宋の時代、欧陽脩・宗祁らによる。「旧唐書」を改訂・増補したものであり、二十四史のうちのひとつ。
『赤壁賦』
⇒北宋の蘇軾が赤壁とされる場所を遊覧した際に作った、前後2編の賦。その名のとおり、『三国志』の戦と言えば名前がすぐに挙がるであろう「赤壁の戦い」に触れる部分もある。
『出師表』
⇒かの有名な諸葛亮孔明が劉禅(劉備の子)に向けた上奏文。愚帝とされる劉禅に向けて、孔明が受けた亡き父・劉備への恩などを述べている。
『孟子』
⇒戦国時代の思想家であり、性善説を唱えた孟子の現行をまとめた書物。儒教の正典である「四書(『論語』『中庸』『大学』『孟子』。)」の一つに数えられる。
『長恨歌』
⇒唐の時代、白居易による長編の漢詩。日本にも多大な影響を与え、『源氏物語』では『長恨歌』の玄宗皇帝と楊貴妃を引き合いに出し、桐壺帝と桐壺更衣の関係を描いた。
『四書集注』
⇒南宋時代の儒学者・朱熹(しゅき)の著した、上述の「四書」の注釈書。
『西遊記』
⇒明の時代に成立した、中国四大奇書のうちのひとつ。著者は現在のところ不明。『西遊記』が大流行したことから、『東遊記』『南遊記』『北遊記』が書かれている(『四遊記』)。現代にもスピンオフやオマージュ、パロディ作品などが存在するが、いつの時代も考えることは同じなのかもしれない。
『三国志演義』
⇒明代に成立した、後漢末期~三国時代を舞台とする小説。上述の『西遊記』のほか、『水滸伝』、『金瓶梅』と合わせて「四大奇書」と呼ばれている。関羽は神。
今回はここまで🐸
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