【解答解説】青山学院大学2021(文ー日本文学A)古文/『栄花物語』

【解答解説】青山学院大学2021(文ー日本文学A)古文/『栄花物語』

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はじめに

今回は青山学院大学2021(文ー日本文学A)古文の解答例及び解説を掲載します。

青山学院大学の文学部は同じ文学部の中でも学科と受験する方式によって個別試験の問題が変わってきます。

今回は同じ問題を扱う日本文学科A・英文学科Cのうち、日本文学科のみが解答する大問四を扱います

なお、著作権の関係から、 当ブログ作成の現代語訳と解答解説のみを掲載し
設問は掲載していませんのでご了承ください。

また、品詞分解は別の機会に譲ろうと思いますのでしばしお待ちください!

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それでは行ってみましょう🔥


出典について

まずは出典の大鏡について触れておきましょう。

出典

★ジャンル
 
歴史物語。文字通り「歴史」と「物語」を融合させた文学の総称。主に宮中をめぐる歴史を題材としており、かな文により記述されている点において「六国史」などの正史と異なる。

★栄花物語について
 平安時代中期~後期に成立。仮名文で書かれた最初の歴史物語。編年体で記述されている。藤原道長の栄華を賛美することが中心
(⇔藤原氏の摂関政治に対して批判的な立場をとる、紀伝体で書かれた歴史物語『大鏡』)
※『栄花物語』と『大鏡』の違いについての論述問題が九州大学2021(文)で出題されている。押さえておこう。

⇓参考記事(該当は大問6)

【解答解説】九州大学2021(文学部)古文/『大鏡』

★大鏡について
 平安時代後期に成立。「鏡」が歴史の真実を映し出すことから「鏡」と名付けられたという説もある。藤原氏が摂関政治を行い、大いに隆盛をふるった時代に批判的な立場をとる。

★四鏡について
 「鏡物」という平安時代~室町時代の歴史書として、『大鏡』のほかに『今鏡』『水鏡』『増鏡』がある。
四鏡の成立順は大鏡⇒今鏡⇒水鏡⇒増鏡であり、一文字目を取って「大今水増(だいこんみずまし。大根水増し?)」と覚えるのが一般的。なお、成立順は上記の「大今水増」であるが、内容を時代順にすると「水大今増(みずだいこんまし。水菜のような味がする新種の大根:「水大根」の味は悪くない=マシと覚えよう。苦しい)


本文・現代語訳『栄花物語』 巻第十三 ゆふしで

本文 現代語訳『栄花物語』第十三巻 ゆふしで

かかるほどに、東宮、などの御心の催しにかおはしますらむ、

こうしているうちに、東宮(敦明親王)は、どのようなお心が原因になっていらっしゃるのだろうか、

かくて限りなき御身を何とも思されず、昔の御忍び歩きのみ恋しく思されて、

このようにこの上ない御身を何ともお思いにならず、昔のお忍び歩きばかりを恋しくお思いになり、

時々につけての花も紅業も、御心にまかせて御覧ぜしのみ恋しく、

折々につけての花も紅葉も、御心のままにご覧になったことばかりが恋しく、

いかでさやうにてもありにしがなとのみ思しめさるる御心、

なんとかしてそのようにありたいものだとばかりお思いになるお心が、

夜昼、急に思さるるもわりなくて、皇后宮に、

夜も昼も、急にお思いになってしまわれるのもど仕方がなく、皇后宮(娍子)に、

「一生いくばくにはべらぬに、なほかくてはべるこそいといぶせくはべれ。

「一生は大した長さでもありませんのに、やはりこのようにおりますことはとても気がふさいでいる状態でございます。

さるべきにやはべらむ、いにしへの有様に心やすくてこそあらまほしくはべれ」など、

そうなるはずであったことなのでございましょうか、昔のような有様で気楽な身でいたいのです」など、

をりをりに聞こえたまへば、宮は、「いと心憂き御心なり。御物の怪の思はせたてまつるならむ。

折々につけて申し上げなさるので、皇后宮は、「とてもつらい御心である。御物の怪がそのように思わせ申し上げるのだろう。

故院のあるべきさまにし据ゑたてまつらせたまひし御事をも、

故院(故三条院)がそうあるのが当然の状態として東宮に据え申し上げなさった御事を、

いかに思しめして、やがて御跡をも継がず、世の例にもならむと思しめすぞ。

どのようにお思いになって、そのまま皇位をも継ぐことがなく、世間の語り草にもなるであろうとお思いになるのか。

いと心憂きことなり」など、つねには諌め申させたまひて、

とてもつらいことだ」などと、いつも諫め申し上げなさって、

「御物の怪のかく思はせたてまつるぞ」とて、所どころに御祈りをせさせたまふ。

「御物の怪がこのように思わせ申し上げるのだ」と言って、所どころで御祈祷をさせなさる。

思しあまりて、若やかなる殿上人申しあくがらすならむとて、

お思いが余って、年若い殿上人が東宮に申し上げてうわの空にさせるのだろうと言って、

いみじう召し仰せなどせさせたまふ。

年若い殿上人たちを呼び寄せなさってきつくお言いつけなどをなさる。

されど、殿の御前に、さるべき人して、かやうになむとまねび申させたまふ。

けれども、殿の御前(藤原道長)に、適当な人づてで、このようであるとそのまま伝え申し上げさせなさる。

殿の御前、「いとあるまじき御事なり。さは、故院の御継ぎなくてやませたまふべきか。

殿の御前は、「とてもあってはならない御事である。それならば、故院の御後継ぎがないままで終わらせなさるのか。

いみじかりし世の御物の怪なれば、それがさ思はせたてまつるならむ」と

恐ろしかった御物の怪であるので、それがそのように思わせ申し上げるのであろう」と

のたまはせて、 聞き入れさせたまはぬを、「いかで対面せむ」と

おっしゃって、聞き入れなさらないが、「なんとかして対面しよう」と

たびたび聞こえさせたまへば、殿参らせたまへり。

宮が何度も申し上げなさるので、殿は参上なさった。

おぼつかなき世の御物語など聞こえさせたまひて、次に、

東宮ははっきりしない世間のお話などを申し上げなさって、次に、

「なほ身の宿世の悪きにやはべらむ、かくうるはしき有様こそいとむつかしけれ。

「やはりわが身の前世からの因縁がよろしくないのでありましょうか、このように堅苦しい有様はとても面倒である。

いかでおりはべりなむ。おりはべりて、一の院といはれてはべらむ」と

なんとかして東宮の身を退きたいのです。退きまして、一の院(上皇)と呼ばれていたいのです」と

聞こえさせたまへば、「さらにあるまじき御心掟におはします。

申し上げなさるので、「全くあってはならないご意向でいらっしゃる。

故院のよろづに御後見仕うまつるべきよし仰せられしかば、

故院があらゆることにつけても東宮を御後見申し上げよと仰ったので、

みなさ思うたまへながら、えさらぬことの多くはべれば、

すべてそのようにと思い申し上げるものの、避けられないことが多くございますので、

内にも当代いと幼くおはしませば、よろづ暇なくさぶらひてなむ。

宮中にも当代(後一条天皇)が非常に幼くいらっしゃるので、あらゆることにつけても暇がございません。

なかについて、この一品の宮の御ためを思うたまふれば、

とりわけ、この一品の宮(禎子内親王)の御ためを思い申し上げると、

心のどかに世をも思し保たせたまひておはしまさむこそ、

心を落ち着かせて世の中のことをお思いになり、平和をお保ちになっていらっしゃるのが、

頼もしううれしうさぶらふべけれ。ただこれは、異事ならじ、

頼もしくうれしいことにちがいないでしょう。ただこれは、ほかのことではあるまい、

御物の怪の思さするなめり」と申させたまへば、

御物の怪がそのようにお思いにならせるようだ」と申し上げなさると、

「なでふ物の怪にかあらむ、ただもとより遊びの心のみありならひにければ、

「どうして物の怪のせいであろうか、ただ以前から気の向くままに過ごしたいという心だけがあり、それに慣れてしまったので、

かくてあるがいとむつかしうおぼえて、心にまかせてあらむと思ひはべるなり。

こうしているのが非常に面倒に思えて、心の赴くままにありたいと思います。

それになほえあるまじく思されば、本意あり、さるべきさまにとなむ思ふ」と

それに対してやはりあってはならないとお思いになるのなら、かねてからの望み(出家)があり、そうなるはずのようにと思う」と

申させたまへば、「いとふびんなることなり。出家とまで思しめされば、いとことのほかにはべり。

申し上げなさるので、「とても不都合なことである。出家とまでお思いになるのなら、非常に考えても見なかったことでございます。

さらばさるべきさまに仕うまつるべきにこそはさぶらふなれ。

それならばそうなるはずの状態にしてさしあげなければならないようです。

一の院にておはしまさむも、御身はいとめでたきことにおはします。

一の院という状態でいらっしゃるのも、御身は非常にすばらしいことでいらっしゃる。

世にめでたきことは、太上天皇にこそおはしますめれ」など、

非常にすばらしいことは、太上天皇でいらっしゃるようだ」などと、

よく御心のどかに開こえさせたまひて、まかでたまひぬ。

しっかり心を落ち着けて申し上げなさって、退出なさった。


問1 現代語訳問題

解答の方針

問に「『さ』の指示内容がわかるように訳せ」とあるため、まずは指示語「さ」の内容を押さえる。

「さ」
⇒「昔の御忍び歩きのみ恋しく思されて」
 「時々につけての花も紅業も、御心にまかせて御覧ぜし」の部分が該当。

★「さ」以外の箇所を逐語訳する
⇒なんとかしてそのようにありたいものだ

★今回は字数制限があるため、字数制限に合うように「さ」の内容をまとめる。
⇒「昔の御忍び歩き」「御心にまかせて」などから「昔のように」「心の赴くままに」「自由」というキーワードを抽出する。

問1

何とかして昔のように自由な身でいたいものだなあ


問2 意味問題

問2

まずは辞書的な意味で判断し、そこから文脈判断を加えて選択肢を削っていく。

2「いぶせし」:4
⇒「不快である」「憂鬱だ」「気がかりだ」などの意味がある。これらを満たしているのは①または④であるが、「人生は大した長さでもないのにこのような状態でいるのは〇〇だ」という文脈であるので、④が正答。

8「なほ」:3
⇒「なほ」は「やはり」「いっそう」などの意味があるが、これを満たしているのは③しかない。


問3 内容説明問題

解答の方針

「世の例」の内容を説明する問題であるが、選択肢が「〇〇な例」「〇〇した例」などで統一されており、前後の文脈を踏まえて解答を選ぶ必要がある

★傍線部前
「故院のあるべきさまにし据ゑたてまつらせたまひし御事をも」
「やがて御跡をも継がず」
⇒故院の後継とならない

★傍線部後
「いと心憂きことなり』など、つねには諌め申させたまひて」
⇒皇后宮が諫めている

これらを踏まえて解答を吟味していく。

問3:1

1 正答。2と迷うかもしれないが、後半部にマイナスの内容が来ていることがポイント。「解答の方針」に記載したように、「皇后宮が諫めている」ことを踏まえれば、プラスのニュアンスが含まれていてはいけない。

2 「自由な生き方を求めた」が不適。先に述べたように、プラスのニュアンスが含まれているため、ここでの説明としてはふさわしくない。

3 選択肢全体が本文の内容とズレているため不適。

4 同上。

5 「退位させられる」「決断力を示した」がそれぞれ不適。前者は本文の内容とズレており、後者は2と同様にプラスのニュアンスが含まれている。


問4 内容一致問題

問4:5

★まずは品詞分解⇒逐語訳で内容を正確に押さえ、文脈判断で補足していく。

本問では「いみじう召し仰せなどせさせたまふ」について、「誰が誰にどうした」押さえると自然と選択肢が絞れてくる。

キーとなるのは「召し仰す」。皇后宮は「若やかなる殿上人申しあくがらすならむとて(年若い殿上人が東宮に申し上げてうわの空にさせるのだろうと言って)」、「召し」て「仰す」のである。
この時点で「皇后」が「殿上人たちに」となっていない①~③は不適。

残りの④と⑤の比較検討になるが、④は後半が不適。「無責任な噂を流さないように」といった内容は本文に根拠がない。
⑤の後半部は「殿上人が(誘惑の類=退位を)東宮に申し上げている」という図式と矛盾しない。


問5 敬語問題

解答の方針

選択肢を見れば「聞こえ」「させたまふ」と分けてくれているので、「聞こえさす」「たまふ」のパターンではないかと疑う必要がない。
整理しておくと、「聞こえさせたまふ」は

①「聞こえ/させ/たまふ」
⇒「言ふ」の謙譲語「聞こゆ」の未然形+使役・尊敬の助動詞「さす」の連用形+尊敬の補助動詞「たまふ」
②「聞こえさせ/たまふ」
⇒「言ふ」の謙譲語「聞こえさす」の連用形+尊敬の補助動詞「たまふ」

の2パターンが存在する。

しかし本問では「聞こえ」「させたまふ」と分けてくれているため、②のパターンではないことが明らかである。よって、敬意の方向を追っていけば選択肢を削ることができる

※選択肢中、「尊敬」と表記されているがこれは「尊敬語」を意味しているわけではない。このため、「聞こえ」は謙譲語であるため不適とした受験生もいるかもしれないが、それは早計である。
「〇〇から〇〇に対する尊敬」という文章自体に瑕疵はない。

問5:2

「聞こえさせたまふ」は地の文であるため、「語り手から」となっていない1,2以外の選択肢は不適。

 また、ここでは東宮が道長に「聞こえさせたまふ」という文脈であるので、「聞こえさす(申し上げる)」という行為を行っている東宮に対して語り手が敬意を払っている。これに合致するのは2。


問6 内容説明問題

解答の方針

★直訳・逐語訳⇒文脈判断を徹底する!

「うるはし」:整う、立派だ、まじめだ などの意。
これに対して「いとむつかしけれ」と東宮が口にしていることから、「うるはしき有様」は必ずプラスの(とされる)ニュアンスであることが分かる。

問6:4

「うるはし」のきっちりとしたニュアンスが含まれている選択肢は3,4のみ。

3は文脈にそぐわず、4は「東宮というあらたまった地位を下りたい」となるため適切。


問7 内容説明問題

問7:1

「故院よろづに」の「の」は主格の用法であり、故院(三条院)が~となっていない④⑤は不適。

また、道長に対して東宮の後見を命じていることから、その内容を表している①が正答。


問8 内容説明問題

問8:2

直前に東宮が発した「本意」という語がポイント。

道長は「いとふびんなることなり。〇〇(A)とまで思しめさば~」と発言しているが、東宮の言葉を受けてそのように返答しているため、〇〇に入るのは東宮の発言内容と同様のものである。

「本意」が「出家」を意味する場合が多いことは受験生にとっては常識であるが、ここではその知識の上に文脈判断でダメ押しするイメージでよい。


今回はここまで🐸

リクエストなどもお待ちしています!

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設問等は掲載していません。ご了承ください。


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