【解答解説】大阪大学2018 文学部(古文)
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はじめに
今回は大阪大学 文学部2018年の問題を大問ごとに分け、
四回にわたって解答例及び解説を掲載します。
なお、著作権の関係から、 当ブログ作成の現代語訳と解答解説のみを掲載し、
設問は掲載していませんのでご了承ください。
また、品詞分解は別の機会に譲ろうと思いますのでしばしお待ちください!
それでは行ってみましょう🔥
⇓前回の記事はこちら⇓
【解答解説】大阪大学2018 文学部(現代文①評論)
【解答解説】大阪大学2018 文学部(現代文②小説)
【解答解説】大阪大学2018 文学部(漢文)
現代語訳
はかなながら秋冬も過ごしつ。
心細く思いながら、秋冬も過ごした。
ひとつところには、兄ひとり、叔母とおぼしき人ぞ住む。
同じ所には、兄が一人、叔母と思われる人が住んでいる。
それを親のごと思ひてあれど、
その人を親のように思っているが、
なほ昔を恋ひつつ泣き明かしてあるに、
そうはいってもやはり昔のことを恋しく思いながら泣き明かしていると、
年かへりて、春夏も過ぎぬれば、いまは果てのことすとて、
年が改まって、春夏も過ぎてしまったので、今となっては一周忌のこと(法事)をするということで、
こたびばかりは、かのありし山寺にてぞする。
今回だけは、あの以前の(そこで母が亡くなった)山寺で行う。
ありしことども思ひ出づるに、いとどいみじうあはれに悲し。
過ぎ去ったことなどを思い出すと、いっそうつらく思われてもの悲しい。
導師のはじめにも、「うつたへに秋の山辺をたづねたまふにはあらざりけり。
導師が(法事の)最初にも、「ただ単に秋の山辺を散策なさるのではなかった。
眼とぢたまひしところにて、経の心解かせたまはむ、とにこそありけれ」
(母が)目を閉じられた(亡くなった)場所で、経の本質を理解なさろう、ということであった」
とばかりいふを聞くに、ものおぼえずなりて、のちのことどもはおぼえずなりぬ。
とばかり言うのを聞くと、(私は)意識が朦朧として、後のことなどは分からなくなってしまった。
あるべきことども終はりて帰る。
しかるべきことが終わって帰る。
やがて服ぬぐに、鈍色のものども、扇まで祓などするほどに、
そのまま(喪)服を脱ぐ時に、 鈍色のものなどや扇までお祓いなどをする時に、
藤衣流す涙の川水はきしにもまさるものにぞありける
藤衣(喪服)を流す涙の川の水は岸にもあふれるものであったことよ
とおぼえて、いみじう泣かるれば、人にも言はでやみぬ。
と思われて、(私は)自然とひどく泣いてしまわれるので、他の人にも言わないでそのままになってしまった。
忌日など果てて、例のつれづれなるに、弾くとはなけれど、
命日などが終わって、いつものように手持無沙汰であるので、弾くということはないが、
琴おしのごひてかきならしなどするに、忌なきほどにもなりにけるを、
琴をぬぐって掻き鳴らしなどする時に、喪に服すべき期間が明けてしまったが、
あはれにはかなくても、など思ふほどに、あなたより、
しみじみとして心細くても、などと思うときに、あちら (=叔母の方) から、
いまはとて弾きいづる琴の音を聞けばうちかへしてもなほぞ悲しき
今となってはもう喪が明けたということで弾き出す琴の音を聞くと、昔のことを繰り返して(母のことを思い出して)やはり悲しい
とあるに、ことなることもあらねど、これを思へば、いとど泣きまさりて、
とあるので、特別なこともないが、これを思うと、いっそうひどく泣いて、
なきひとはおとづれもせで琴の緒を絶ちし月日ぞかへりきにける
亡き人(母)は訪ねもしないで、(母が亡くなって喪に伏し、)琴を弾かなくなった月日が帰ってきた(弾かなくなった日から一年経ってしまった)ことよ
かくて、あまたある中にも頼もしきものに思ふ人、
こうして、たくさんいる中でも頼りに思う人(姉)が、
この夏より、遠くものしぬべきことのあるを、
この夏から、 遠くへ行ってしまうことがあるのを、
「服果てて」とありつれば、このごろ出で立ちなむとす。
「喪に服する期間が終わって」とあったので、近いうちに (姉は)出発してしまおうとする。
これを思ふに、心細しと思ふにもおろかなり。
これを思うと、心細いと思うにも言葉では言い尽くすことができない。
3-1現代語訳問題
(1)
・「ごと」が助動詞「ごとし」の語幹であることを見抜く
・傍線部内の指示語が指す内容を押さえる
・主語を押さえる⇒日記文学の地の文:基本的に主語が一人称(「私」)
(2)
・助動詞「る」の意味の識別
・已然形+「ば」の訳出
(3)
・「なむ」の識別
・主語を押さえる⇒地の文であるが、文脈を見極め「姉」であることを見抜く
(1)私は親のように思っているが、
(2)私は自然とひどく泣いてしまうので、
(3)姉は出発しようとする。
3-2書き抜き問題
・何をした「場所」かを押さえて本文から抜き出す
かのありし山寺
3-3現代語訳問題
・設問にある掛詞の意味を押さえた上で訳出する
⇒掛詞はひらがなで記載されていることが多い。通常なら漢字でも書いてもよさそうなものを見つけた場合は漢字に変換し、変換先に複数候補があるかどうか検討する。
母が亡くなってから一年が経過しているが、母が亡くなり喪服を着た時に私が流した涙よりも、今流している涙で川の水は岸からもあふれるほどのものであることよ。
3-4意味説明問題
・設問に「わかりやすく説明しなさい」とある場合、文脈を踏まえた上でどのような状況であるかを解答に盛り込む必要がある
・本文を読み進めていく段階で生じた疑問点があるのであれば、必ずそれを解決する解答にする
例)「弾きいづる」⇒これまでは弾いていなかった⇒それは何故か?
例)どのような状況か?弾きだすに至った経緯は?
今となってはもう喪が明けたといって、喪中のため弾くのをやまていた琴を弾き始めたという意味。
3-5心情説明問題
・前問と同様に、何かを説明するよう指示があった場合は文脈を踏まえた上でどのような状況であるかを解答に盛り込むことを意識する
・心情を説明する場合、その人物をめぐる状況と、それに応じた心の動きを追う
例)Aという出来事があり〇〇は心苦しく感じていた⇒悩みが解消され心が晴れた
「亡くなった母はこの世に戻ってくることはないのに、母が亡くなって喪に伏し、琴を弾かなくなった日から一年経ってしまった」という内容の歌に、母の死を今一度噛みしめ、悲しむ心情。
今回はここまで🐸
次回は【解答解説】大阪大学2018 文学部(漢文)ということで
大問四・漢文の解答解説の記事になります。
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設問等は掲載していません。ご了承ください。
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